チェスター・バーナード著『経営者の役割』を読んで
伊藤穰一
1998 年10 月4 日
今『経営者の役割』を読み終えたところだ。難解な文体で、バーナードが結論にた
どりつくまでの過程を正確には思い出せない。本自体は読み進むにつれ面白くな
り、著者の論点は経営者としての私自身の経験とも重なる点が多かった。もしかす
ると、彼の結論の多くが自明でまわりくどく思えたのはこのせいかもしれない。
協力、調整、組織、決定、経営機能、責任、倫理というように築かれていくピラミ
ッド型の組織のモデルはよくわかるが、私の頭の中では知識以前にあたりまえのこ
とだった。
彼の責任と倫理の区別、また、公式、非公式に関わらず、組織は利益が倫理と相反
する個人を抱えるものであるという概念はわかりやすいが、それほどかたく考えな
くても、よく知られ、理解されている概念だと思う。
経済価値の異なる要素が組織内で実利的に変換、交換され、実利効果は交換の機能
であるという考え方は面白く、価値交換の考察にはわかりやすい方法だ。また、資
金と資産は組織の経済の一面しか反映しないという考え方は真実で、私が考え続け
ていたコンテクストと文化の価値の議論に通ずるものがある。
恐らくこれ以上書く前に國領先生と話した方がいいだろう。バーナードは私にとっ
て当然と思えることばかりを書いている。とはいえ、もしも私が一緒に仕事をする
経営者がみなバーナードを読んで彼の考え方にそった行動をとっていれば、仕事は
もっと楽になるだろう。
1999 年2 月15 日
もうすこし早く書きとめておくべきだったが、組織について考えたあと、バーナー
ドが組織について重要なことを論じていたことに気づいた。組織が市場の延長だと
考える経済学者は多いが、バーナードは、取引を効率的にする以外の組織の存在理
由を数多く挙げている。もう一度バーナードに戻ったほうがいいかもしれない。特
に、フランシス・フクヤマ氏の信頼についての著述を読んだいま、バーナードを再
考する価値があるだろう。

Translated by Yuki Watanabe

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