Goodbye letter from Lehman Brothers

「ちょっと待てよ。投資銀行って本当に今でも必要なのか。」

突然沸き上がったこの疑念は、情報と、安価な取引費用さえ確保できれば無用の長物と化す金融サービス/商品の一大ジャンルが崩壊する、そのいわば氷山の一角なのではないかと思える。

金融デリバティブやリスクを証券化することは他の人もそれを買えるようにするということで合理性はあるのだが、大きな企業が人件費に大枚をはたいてその事業に取り組むのは、本来の価値より高く売れる商品を作り出すためだ。規制はあるものの、リスク情報の案内は省略され、買い手/ユーザーに完全な情報や安価な取引費用を提供することよりも、商品を売ることに焦点が当てられている。一方で情報はむしろ隠され、管理費から取引費用まで、取引に関する利害の衝突はそこら中にある。

このような手作りの市場は、取引費用が高額で、これら一連の事項をまとめて管理していた時代には合理性があったものの、今は、よくよく考えてみると、理にかなっているとは言えなくなってきている。

このことは学術系の出版社にも言える。出版社は教授たちの論文を学術誌に掲載する際に金をとり、読み手側である教育機関や図書館からも購読費用をとる。教授たちが望んでいるのは、論文が可能な限り広く読まれることだ。インターネット以前の時代であれば、上記のような出版の形には合理性があり、高額な費用(物理系学術誌1誌だけで1万ドルを超える購読費)を支払う価値もあった。図書館に物理的に印刷物を届けることが、自分の論文を各教育機関に確実に配布する唯一の方法だったからだ。しかしインターネットが普及した今、もはやその流れは合理的とは言えなくなっている。現状では著作権つきの文献を閲覧するには購読が必要なため、学術的な著作物の大部分が発展途上国や学会外の読者層にとっては暗闇の中となってしまっている。

かつては非常に重要であった産業やサービスには、今日の我々の、低価格で、デジタルでつながった世界という現実に面と向かうことができていないものが多くあるように思える。

金融サービスの分野においても、消えて無くなるものはまだまだたくさんあると僕は予想している。僕自身最安の為替レートを求めて取引銀行を次から次へと替えていく中で、なぜ外国為替のようなものが、利害の衝突を減らし、情報を増やして行われないのか、まるで想像がつかない。どの銀行も法外なレート/スプレッド/取引費用を請求してくるけれど、僕にはそれを回避する意志と能力がふんだんにある。正直なところ、銀行が行う業務の大半は銀行抜きで行えるように再構築することが可能だと確信している。

僕が思い描けるのは、Web2.0の金融サービス版のような利用者の金を保管するPayPal的なサービスや、多くの国際的なプロバイダがありとあらゆる金融取引を提供している図だ。これは競争を促進させて質の向上、価格の低下へと繋がり、各々独立した形で、あなたが適切な判断を下す手伝いをしてくれるアナリストや情報提供サービスからなる業界が形成されるだろう。ちょうど消費者系インターネットサービスの多くがオープンスタンダードや規格などのまわりに集まっているようにこれらを全て統合できれば、コストをごっそり削減し、また、助言をしてくれる連中が一方ではあなたの取引から利益を得る-という歪んだ利害関係も排除できるのではないだろうか。

もちろん規制やサギ対策は必要になるだろう。でも技術を理解していない、給料をもらいすぎている重役連中を役人組織に監督させておくよりも、もっと効果的な方法がきっとあるはずだ。

銀行に勤務している友人たちには先に謝っておきたい。銀行がなくなるとは思わないけれど、競争から身を守るために伝統的な概念や政府による規制に頼るのではなく、技術の変化に積極的に適応し、自らの存在意義、また人々がどのように銀行を必要としているのかをもう一度自問自答すべきだと僕は思う。我々がごく最近目の当たりにしたように、物事は瞬く間に変化しうるのだから。

僕は銀行家でも経済学者でもないので見当違いかもしれないけれど、素人なりの考えをまとめてみた。

2 Comments

JOIさんが思い描く,金融総合サービスは,金融システムを設計するものにとって,ある意味ゴールですが,こういう複合サービスでの自己責任の線引きが非常に難しいのも事実です.
こういう場に
>適切な判断を下す手伝いをしてくれるアナリストや情報提供サービスからなる
>業界が形成されるだろう。
という中立的なアドバイザリーサービスが確立されることを願ってやみません.

金融危機。
どうなるんでしょう・・・

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