2008年4月 Archives

Twitter


今年1月、僕のいるデジタルガレージがTwitterに投資し、Twitterとの協力により同サービスの日本版を立ち上げる計画を発表した。そのサービスの運用が先日始まった。

現時点ではまだ、本家Twitterの一部という形だが、UIが日本語なった。今回の日本版での特記すべき点の1つは、広告入りでサービスインした点だ。例えば、早くも広告を出してくれているトヨタは、自身、Twitterのアカウントをもっていて、そこで自動車業界の動向などについて紹介している。同社の広告が直接、利用者をトヨタのTwitterアカウントに誘導し、ユーザーは以後、そのアカウントをフォローできる。一方のトヨタ側は、誰が自社のファンであるかを容易に把握することができ、ファンが自社についてどのような話をしているかをフォローしていくことができる。

Twitterは当初から日本国内で人気があり、初めの頃はTwitterのWebサイトに対するトラフィックの30%近くを占めていたと思う。後に北米のユーザーベースが延びたことで13%程度になったものの、Twitterlocalによると、今でも東京が最もTwitter人気の高い都市だそうだ

Twitterが日本でここまで人気なのは興味深いことだ。立ち上がったばかりの頃は日本語ではちゃんと動作しないくらいだった(日本語での投稿を正しく日本語表示させるには、文末に半角スペースを入れる必要があった)。それに、僕の知る限り、日本の携帯電話のSMS機能ではTwitterで正しくメッセージが送れない。それにも関わらず、日本ではごくごく当初から受け入れられていたんだ。僕の仮説の1つは次の通りだ。日本のサービスの多くは会員制だったり機能過多のポータルサイトだったりして、便利な公開APIを採用したシンプルなサービスが、米国ほど一般的ではないのかもしれない。そのため、詰め込みすぎの多くの国内サービスにある種嫌気がさしている開発者やユーザーが魅力を感じるのではなかろうか。

今回の日本語版の立ち上げにより、国内のユーザーがさらに増えてくれれば幸いだ。
Twitterとデジタルガレージ両方の担当チームにおめでとうと言いたい。なかなかいいよ、これは。

追記:Twitter Blogへの投稿

マネックス証券の松本 大氏がGDPに関する興味深いスライドをまた一つ送ってくれた。ITによって1人当たりGDPの格差が緩和されつつあるという仮説を裏づけるものだ。

Oki
松本:
19世紀の産業革命以前、世界のGDPシェアは各国の人口に比例していました。

ところがここ150年、資本主義や共産主義といったイデオロギーの勃興と技術発展の差が、GDPシェアに大きな影響を及ぼしてきたのです。

そして最近では、情報テクノロジーにより急速に技術が伝播し、またイデオロギー間の混合も見られ、GDPシェアが産業革命以前の状態に戻りつつあるのです。

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日本の大いなる成功例の一つである新生銀行は、旧い伝統を持つ日本の会社が、適切な経営と手法をもってして、いかに生まれ変わることができるかを表す好例とされている。ここでいう『手法』には、僕の尊敬するJay Dvivediによる『シンプル化に向けた大幅な改革』を含んでいる。Jayは自身のITに対するアプローチ、すなわち、多くはインターネットを利用し、一部マーケットにあるものを使用し、複雑なものは細分化していくという方法を用いた手法を提唱している。僕もJayの先見に与るべく何人かの友人を彼のところに行かせたりしているんだけど、それは従来の手法とあまりに異なるため、その手法が実際に機能するということを理解、確信するには会議室でのミーティングだけでは足りないことが多い。

我々はこれまでこれらのアイデアを共有する方法をいろいろと話し合ってきた。Virginia A. FullerとDavid UptonによるレビューがHarvard Business Review誌に掲載された。もちろんこれはこれで素晴らしいことなんだけど、残念なことに、それはHBRを読める読者にしか届かない。

そこで我々が思いついたのが、Creative Commonsライセンスの下で手法を公表し、大学機関がそれらの手法を元に公開の教育ソフトを開発するように協力するというアイデアだ。Jayと僕とで新生銀行の社長であるThierry Porte(ティエリー・ポルテ)氏に会いに行った。彼はこのアイデアを気に入り、事を進めるように言ってくれた(YouTubeに投稿した、Thierry Porteと僕が話している動画)。今週、Indian Institute of Technology Kanpurが、新生銀行の協力の下で新生銀行の手法に基づく教育ソフトを開発してCreative Commonsライセンス下で公開すると発表した

現在、他の大学にも働きかけているところだ。

企業にビジネスプラクティスや手法を教育ソフトの形で共有させるというこのアイデアは、万人にとって得るものが多いと考えている。すなわち、企業はその分野における専門家としての立場を確立できることになり、外部の人々はその手法を評価したり改善したりして貢献することが許され、ユニバーサルな改善・更新が常時迅速になされることになる。また直接的なフィードバック、およびそれを受けた素早い対応も可能になる。ビジネススクールや学術的な鍛錬の場は今後も存続されるものと思うけど、単なるケース分析よりも、教育ソフトの開発を協力して進めた方が、インターネット的な、「大まかなコンセンサス/運営の不文律」的な自然なやりとりは生じやすくなるはずだ。

以下は正式発表されたばかりの内容だ。

Creative Commonsが新体制および新たな出資内容を発表

2008年4月1日、米国カリフォルニア州サンフランシスコ

一般の方々が合法的に共有し、使用できる創作物の範囲拡大を目的とする非営利団体「Creative Commons」は本日、体制の変更、およびWilliam and Flora Hewlett Foundationから活動資金400万ドルの出資を受けたことを発表した。同団体の創始者であるスタンフォード大学法学部教授のLawrence Lessigは「本日の2つの発表はいずれも、Creative Commonsが発足段階を脱し、デジタル時代における創作・教育・研究のための重要な支持基盤に発展したことを反映したものです」と語った。Creative Commonsは昨年12月に創設5周年を祝っている。

Lessigは自らの学術的な焦点が著作権問題から政治腐敗へと移行したこと表明をしており、米国政府の立法部門の透明性向上を目指す運動「Change Congress」を最近発足させている。Lessigはそちらの活動に集中するためにCreative CommonsのCEOを辞任し、起業家・投資家でありfree cultureの提唱者であるJoi Itoが後任となる。Lessigは理事の一員としてCreative Commonsに残る。

「焦点は移行したものの、私のCreative Commonsおよびfree cultureという大義に対する支持は変わりません」とLessigは語った。「Change Congressでこれからやっていくことは色々な意味でCreative Commonsの活動を補足するものなのです。どちらのプロジェクトも人々に力を与えて、より適切なシステムを構築できるようにしようと目指すものです。Creative Commonsのリーダーシップを、類い稀な情熱と資質をもつJoi Itoに引き継ぐことができるのは何よりもの喜びです。」

「Larryの管理下にて、Creative Commonsははじめの着想段階から、80を超える国の組織や人々に関わる技術的・社会的・法的環境の不可欠な一要素へと成長しました」とItoは語った。「それに伴い、組織の規模・複雑度が増してきています。私はさらに関わりを深め、この素晴らしい一団の舵取りをできることを喜ばしく思っています。Hewlett Foundationは当初から我々を強固に支援してくれています。将来的にも彼らの援助が得られるということは、我々にとって何よりもありがたいことなのです。」

創設時から理事を務めてきたデューク大学法学部教授のJames BoyleがItoに代わり理事長に就任し、Itoは理事として続投する。「JamesはCreative Commonsの創設時から尽力し続けてきてくれました」とLessigは語った。「彼は、我々の科学研究部門であるScience Commonsと、教育部門ccLearnの設立を指揮してくれました。Creative Commonsの理事長を務めるのに彼以上にふさわしい人物はいないでしょう。」

BoyleはCreative Commonsの未来について楽観的だ。「MITのオープンコースウェア、Public Library of Science、素敵な音楽、多数の写真やブログ、無料公開の教本など、我々のライセンス下に入っている数々の素晴らしいものを目にすれば、我々がLarryのリーダーシップのもとで実際に、世界中の何百万という人々がクリエイターやユーザーとして参加する万国共通の『創造的な共有の場』を形成する一助となったことが実感できるでしょう。私の仕事は当団体の理事会に名を連ねる傑出した人々の能力を活かし、このミッションを継続・発展させていくことです。(某Larry Lessigなる者もこれに含まれます。当面はどこにもいかないと約束してくれました)」

Hewlett Foundationからの出資は、5年間に渡ってCreative Commonsの活動全般を援助するための250万ドルと、公開教育リソースに焦点を当てたCreative Commonsの一部門であるccLearnを支援するための150万ドルからなる。「William and Flora Hewlett Foundationは情報の開放、とりわけ教育リソースの無料での開放を強く支持し続けてきました」とHewlett Foundationの公開教育リソース・イニシアチブの部長であるCatherine Casserlyは語った。「Creative Commonsのライセンスは、Creative Commonsにおける取り組みが拠って立つ開放のインフラの非常に重要な部分です。」Hewlett Foundationからの出資は、Omidyar Network、Google、Mozilla、Red Hat、およびCreative Commonsの理事会からの支持も見込んだ5年間に渡る出資プランの根幹を成すものであった。

Creative Commonsはまた、上級幹部の人事異動二件を発表した。Diane Petersが相談役として就任する。PetersはMozilla Corporationの出身で、Software Freedom Law Centerの理事を務めており、かつてはOpen Source Development LabsおよびLinux Foundationの相談役も務めている。様々な案件について、非営利団体・開発コミュニティ・ハイテク企業への助言や提携に関する豊富な実績をもっている。

Cravath, Swaine & Moore LLPから昨年Creative Commonsに加わった副会長兼相談役のVirginia Rutledgeが、副会長兼特別相談役として新しい責務を負うことになる。Rutledgeは新たな役割として開発および渉外に焦点を当てつつ、今後も特殊な法的プロジェクトの指揮も執り続けていく。


Creative Commonsについて

Creative Commonsは2001年に創設され、私有・公有を問わず、知的および芸術的創作物の創造的な再使用を推進している非営利団体です。Creative Commonsは著作権フリーのライセンスにより、「無断転載禁止」を旨とする従来の著作権を基盤にしつつ、任意による「限定的な使用許可」を可能にする柔軟な権利保護および使用許可事項を、作家・芸術家・科学者・教育者に選択肢として提供しています。Creative CommonsはCenter for the Public Domain、Omidyar Network、ロックフェラー財団、John D. and Catherine T. MacArthur Foundation、およびWilliam and Flora Hewlett Foundationを含む多数の組織、および一般の方々の寛大なる支援によって創設され、運営されています。Creative Commonsに関する詳細は http://creativecommons.org でご確認いただけます。


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Creative Commonsクリエイティブディレクター
Eメール: eric(アットマーク)creativecommons(ドット)org


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