脳神経系の多様性を指す「ニューロダイバーシティ」の機運を国内でも高めたいと、4月24日に「脳の多様性がひらく子ども・子育て・社会の可能性」と題したイベントが開催されました。
イベントには伊藤穰一の他、レッジョ・エミリア教育で知られる「まちの保育園」の松本理寿輝氏と、遊びをベースとした発達支援「フロアタイム」の教育機関である ICDL のジェフ・ガンゼル氏の3人が登壇。ニューロダイバーシティ当事者や、親御さん、そして指導者の方々などが参加し大盛況のまま幕を閉じました。
今週のポッドキャストはそのイベントの模様をお届けいたします。
【編集ノート】
編集ノートには毎回番組で登場した難解な用語や固有名詞などの意味や内容をまとめています。また、ETHアドレスの取得方法やNFTの確認方法についても、まとめています。ぜひご参照ください。
番組では、リスナーの皆様からお便りを募集しています。番組に対する意見はもちろん、伊藤穰一への質問があればぜひ投函ください。先日からイーサリアムのアドレス記載欄も設けました。
特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFT会員証をプレゼントしています。
番組にご出演いただいた方々と聞いている方々を結ぶプラットフォームとして、ジョブマーケットを作ってみました。今、実は仕事を探している、なんてあなた!ぜひこちらを確認してみてください。ぴったりの仕事がみつかるかもしれませんよ。
【コミュニティ醸成実験について】
これまで番組で小出しにお伝えしてきたコミュニティ醸成実験。ようやくその中身をお伝えできるようになりました。番組という枠を飛び出して、リスナーの方々同士が交流できる場となっています。詳しくは、下記リンクをご覧ください。
https://community.henkaku.org/ja
この実験に参加をご希望の方は下記リンクから参加メンバーの登録をお願いします。メンバーのダイバーシティを考慮しながら、徐々にメンバーを拡大していく予定です。参加時期がきましたら、スタッフから個別に連絡をさせていただきます。興味のある方、まずは登録だけでもしてみてはいかがでしょうか。
https://airtable.com/shrbDbYUBoFgkg0tY
https://recruit.garage.co.jp/fintech/
今週のポッドキャスト配信について
Podcast Transcript
伊藤穰一: MITのメディアラボの所長をやってたときにdiversity、多様性ってがすごく重要だなと。で、もちろん競争力とかパフォーマンスとためにも重要だし、社会的なフェアネスも重要で。その中でNeurodiversityっていうのはすごくMITにとって重要な言葉だったのは、これは表に出てる数字ではないんですけども、あるMental Healthの先生と話してたらMITの学生ってだいたい6割7割は自閉症と言われていて。でそういう自閉症の学生がすごくComfortableに勉強できる環境を作っていて、そして僕もやっぱり自分の教え子たちもかなりSpectrumで、で僕の父親もそうだったのでなんとなくわかってたんですけども。そういう特徴がある子たちがやっぱりすごくちゃんと勉強したり働けるってすごい輝くんですよね。で、これは個人的な仮説なんですけども、たぶん天才はほとんど全員自閉症だと思うんですね。ただほとんどの自閉症の人は必ずしも天才ではない。だから天才的な人達をアンロックせることも重要だけども、でもやっぱり発達にいろいろ大変な人も、ちゃんとフェアネスとして社会に出ていかなきゃいけない。でそういう意味ではMITみたいな場所も必要だし、でも社会的にいろんな人がインクルージョンしなきゃいけないので。だから、MITみたいな環境もそうだし、あとは普通の環境の中にも誰でも参加できるベネフィットがあると。で、例えばMITってノーベル賞学者98人出てるんですよね。で、日本は歴史で29人しかいないと。日本には14年ぶりに戻ってきたんだけども、やっぱりかなりノーマル、普通の人達、お利口さんさんを作ろうとしてる社会で。で、これはノーベル賞学者を作るのにもいい戦略ではないし、あと社会的なフェアネスの観点からもあんまり良くないので。このNeurodiversityっていうのはすごく重要な社会的なアンロックなような気がしています。最近、かなり日本でも動き出していて、アメリカもneurodiversityのムーブメントが始まったのは最近なんですよね。そして自閉症のサポートもちゃんと通るようになって、学校も適応してるのが最近で。
伊藤穰一: アメリカにいたときにはすごくいろんなサポートがあるので、いろんなセラピー見たんだけれども。ただ今までの従来型の教育のシステムで僕が気になってたことも、やっぱ自閉症のこのセラピーにも同じような問題があって。で、いろいろ探してる中でFloortimeっていうセラピーを見つけて。でそれは本当にメディアラボでやってたような、遊びを中心とした新しい学びのやり方とすごくシンクロしてたので。とってもFloortimeに興味を持ったので、それで今日は来ていただいたJeffさんにその話をしてもらうのと。あとうちの娘が日本に戻ってきて日学校を探してたら自分の娘が行ける学校が何かぴったりのがなさそうで。それで、まちの保育を見つけて、一番レッジオ・エミリアが近いなっていうのでそれで理寿輝さんと出会って。そして理寿輝さんと一緒にこのムーブメントを立ち上げたいなっていうのをこの夢を今日キックオフしたいと思います。よろしくお願いします。
松本理寿輝: みなさん、こんにちは。先程今Joiさんからお話いただいたまちの保育という保育園を運営している松本理寿輝といいます。よろしくお願いします。
松本理寿輝: 代々木公園の中で認定こども園っていう、幼稚園と保育をミックスしたスタイルの学校を運営しているものです。日々は子どもたちとそしてコミュニティーと一緒に、子どもの関係を考えたりこの社会は考えたりしてるという立場です。僕が何者なのかっていう話をちょっとはじめに触れさせていただこうと思うんですけど、その街ぐるみっていうことですね町の保育っていうふうにつけてるのには二つの意味がありまして。一つはその子どもたちの学びのために社会や世界とコネクトしていきたいっていうことが1つ。でもうひとつはある意味、小学校とか保育園とか幼稚園っていうのは街をつくっていく。そのコミュニティーの拠点になっていくんじゃないかなってそういうアイデアを持っている学校です。そのためにその学校とか園にですねカフェがあったりとかコミュニティーコーディネーターっていう職種があるんですけども園がこういろいろこういろんな人たちをコネクトしてネットワークしていくっていうようなことをやっています。
松本理寿輝: レッジオ・エミリアってのはイタリアの幼児教育のアプローチなんですけども、世界34カ国と今ネットワークを築いてますが、その日本の代表組織としてこういま私たちは研究してるとところです。レッジオを少し今日これだけ話しててすごい時間かかちゃうのでシンプルに話そうとすると、3つポイントがあるというふうに思ってるんですね。1つは、こどものこと考えるには子どもが何者なのかどういう存在なのかってことを考えなければいけない。そういう点ではそれぞれ固有のですね、インテリジェンスを丁寧に育んでいくってのがレッジオStyleのまず始めのところにあります。そして学校の関係が非常に美しいんですよね。クリエーティブでそしてアーティスティックなんですけども、それも何かアートプログラムではなくていわゆる知識を構築していく一つのアプローチとして考えてるってとこがレッジォ・エミリアの特徴ではないかなと思います。人は美しいと感じるものを認知するっていうことがある。そういったことがあるんじゃないかなと思います。そして、もうひとつのポイントはコミュニティーですね。コミュニティーに二つの視点があってそのひとつはまさにに子どもがいろいろなこう価値観とか考えとか生き方に出会っていくっていうためにコミュニティーがある。でもうひとつはそのある意味民主的な場としてその町がですね、子どもの権利を考えて行動していこうというような形でこう繋がってる。そういうようなところが特徴と言えるんじゃないかなと思います。
松本理寿輝: ニューロダイバーシティというのは、その個人のもちろんウェルビーイングにもつながりますし。あるいは先ほどJoiさんも話がありましたけど、社会とか世界を前進させる大事な理念じゃないかなというの思っているというところがあります。保育園で子どもたちと過ごしてると、日々感じることがあるんですよね。例えばあの子、心が温かくなる色ってどんな色っていう日や子どもに聞いてみると私なんかこういわゆる暖色系の暖かい色ってどんな色って言ったんです。暖色系をイメージするんですけど子どもの中にはその海の色が暖かいんだとかね、あるいは褐色系が暖かいんだとかね。何かそういうようなお話をする子がいるんですよね。本当に素晴らしいなと思うんです本当に一人一人普通の人っていないんですよね。その見方考え方はそれぞれ個性があるしそしてそれぞれの大事なその見方考え方やその何てか持っているインテリジェンスを大事にしていきたいというところがベースにあります。
松本理寿輝: 色にちょっとつなげたいと思って紹介しますが。私たちは色の三原色であらゆる色が構成されることは知識としては知ってるわけですけども。実際にその色を作ってくださいって言われるとなかなか難しいわけですよね。でもこの子はすごく色に対しての関心が強い子で、色とっても仲良しな子で。例えばそのスポイトなんかで色をこう丁寧に合わせながらですね、色を表現、再現していくんですね。ものの見事に短時間でこれだけの色を再現してみせる。それだけですね、言葉を操るようにこの子は色を操ることができるんですいや羨ましいなとかすごいなと思うんですけどね。たぶん。きっと私が見ている世界とは違う見方をこの子は知ってるんじゃないかなと思うんです。
松本理寿輝: ある意味ですね。誰しもがある程度は特異な能力で異能性を持ってるってことは、私たちは園にいながら、確信してるところでもあります。Atypical intelligenceと言ってもいいかもしれませんけども非定型のインテリジェンスを一人一人が持ち備えてると言う人もいます。これはもう言うまでもないと思いますけども、まさにこれまでの教育や社会っていうのは均質化を求めてきましたが、今私たちが目指してる社会っていうのは、まさにこの創造性を拡大していくってことだと思いまして。その中でDiversityっていうのはとても大事な概念になってくる。そのことはもうここにいる皆さんには言うまでもないかなと思います。では具体的にそれをどのように推進していくかってことでまさにJoiさんとですねなく最近かなり熱心にいろいろ議論してるんですけども、その中で2つのアプローチがあるんじゃないかなっていう風に思っています。ひとつは学びの環境づくりですね。Neurodiversityを進めていくための学びの環境を進めていけば作っていけるといいなというのを持ってます。
松本理寿輝: もうひとつはムーブメントですね。やっぱり社会が受け入れて、どんどん理解進めていかないとなかなかこの動きっていうのは本当に社会全体のものにならないというふうに思います。なのでそのために本人もそうですし、親とかセラピストのつながりコミュニティってことを充実さしていくってのも一つありますし。またはJoiさんはweb3のコンテクストで最近よくお話されてますがJOINだと思うんですね。社会のあらゆる見方とか考え方とかいろんな仕事をしてる人達を巻き込んでいって、ネットワークワークしていくっていうことがとても大事だというふうに思っています。そんな風に皆さんから参加していただいてこのムーブメントが盛り上がっていくとこの国全体の動きにもつながっていくようなところなんかも可能性としてはあるんじゃないかなという風に思ったりしています。この学びの環境づくりとかムーブメントを盛り上げていきたいので、ぜひ今日をスタートとして皆さんにもたくさん関わっていただきたいなというふうに思ってます。
Jeffrey Guenzel: みなさまようこそおいでくださいましたそして本当に今のプレゼンテーション、素晴らしいプレゼンテーションでございました。私の本日はプレゼンの目的ですけれども、なぜ我々が発達学習に対してとこのようなアプローチをとっているのかということについてのお話をしたいと思います。
Jeffrey Guenzel: 私たちが取り組む子どもたちというのが表面で見えている以上のものがあるんですね。私たちが理解したいのはその行動の内側で何が起きているのかっていうことなんです。
Jeffrey Guenzel: 手をパタパタするということは、ひょっとしたら自分の心配を落ち着かせる。あるいはその本格的な緊張を抑えるための自分に光が照明があたっているとときに自閉症の人だと非常にそれを負担に感じるということがあります。それは脳の調整の機能がゆえにそういうふうになっているんです。ということで、この何がこう体の中で起きているのかということを理解しようというところに注目をするのがDIRのフロアタイムです。
Jeffrey Guenzel: まずはDIRというのは何なのか?そしてFloortimeは何なのかということのご説明から始めたいと思います。DIRというのは理論的な枠組みでございます。この枠組みというのはもう30年以上前からある枠組みでStanley Greenspan先生が開発したものです。これは人が発達どう発達するのかということを理解するということです。特に社会的感情的な発達です。
Jeffrey Guenzel: すなわち人がどういう風に発達するのかを理解するというのがDIRです。それに対してフロアタイムというのは今言ったような理解考え方を実践するということになります。どうやって子どもたちの発達成長を助けることができるのか?特に個々人の多様性があって、そしてより複雑あるいは一般的な子供に比べてより目立つ特徴があった場合にはどうするのかということです。
Jeffrey Guenzel: 根本的には一人一人皆違うということを私たちはわかっています。そして自閉症スペクトラム症の子どもたち、そしてニューロダイバーシティ的な多様性、個々の脳・神経の多様性を考えると、まさにもっとさらに多くの差異違いがあるということがわかります。そして最後にフロアタイムというのは、本人の発達をサポートする小分けパスを作ることにあるんです。なので教えるということだけではないですし、子どもが一定のことを学ぶということだけではなくて、本人のコアキャパシティーを発達させるコミュニケーション取ることができるような発達をするということです。
Jeffrey Guenzel: 考えたり理論的に思考したり問題を解決したりというコアキャパシティーです。情報はインターネットで何についてでも手に入れることができます。一般的な人でも難しいのはどうやってその情報をつうじて思考したり合理的に考えること何がいいのかどういう情報は有益なのか、有害なのか何が偏っているのか、偏ってないのか。そういったものをどうやって整理していくのかをコアキャパシティーがあれば整理していくことができます。思考や理論的な思考です。そうすると情報を得るのは簡単です。その情報を持って何かをすることができますけれどもコアキャパシティー、思考したり理論的に考えるということのコアキャパシティーをうまく使うことができていなければ、たくさん情報を得るということは何の役にも立ちません。なのでフロアタイムでやってることというのはコアキャパシティーに関わることで、その裏にある脳科学についても後ほど触れたいと思います。
Jeffrey Guenzel: まず1つ目がaffect、情動というものです。私たちがその情報や感情をどういうふうに処理をするのかというものです。affect=情動という感情的なプロセスというのは測定するのは少し難しい。そしてまた理解するのもしばしば難しいけれども、この情動を前にすると非常にパワフルになります。というのは情動という脳への入り口。これは脳とつながることができるからです。
メディテーションをすることによって体全体がつながることになります。よりその脳の皮質下にあるものを通じて感じようとしているんです。先ほど色の話、再現力があるという子どもの話がありました。あの男の子はあの子どもは考えではなく皮質下にある感覚、感情を通じて色を認識していたのではないでしょうか。
皮質下のレベルでメディテーションのレベルで物事を感じているという時、というのは脳とのつながり方というのが全然違うものになります。より深いコアのものになります。こういったキャパシティーを身につけるとこれは脳の中で物理的にボトムアップで脳の下から上に繋がるということ。それができると脳の上の部分すなわち大脳皮質において何をやらなければいけないかというのを私へ指示する。そして情報の処理というのもより適切にできるようになっていくんです。これに関しての研究もありますし、またフロワータイムに関しての研究を見てもプロセスの前と後での効果ってのが分かります。
Jeffrey Guenzel: 私がよく言ってるのは我々がやってることが必ずしも教えるということではないかもしれない。スキルを教えるということではないかもしれない。しかしながらキャパシティを作るんだと言っています。世界の多くと広範囲にインタラクションするためのものです。でこれがニューロダイバーシティへそしてニューロダイバーシティとのムーブメントとも関連性があります。
Jeffrey Guenzel: 先程のプレゼンすると出てきた色が得意な男の子のケースですけれどもこの子を見て行動を見るともうちょっとこの行動を変えなくてはいけないと考える人が多いかもしれません。しかしながら、いかにその色が処理され色が作られているというところを見るとおそらく外の世界の他の人とは全く違うものだと思います。これを発達させたい成長させたいと思うわけです。さきほどJoiさんのお話からにありましたけれどもすべての自閉症の子どもが天才というわけではない。しかしながら天才のうちの自閉症の人はどれぐらいいるのかということを考えるとやはりそういった機会を提供していくということが重要になってくるわけです。
Jeffrey Guenzel: 自閉症というのは神経発達障害です。定義上は、そして実際に医学書ですとか診断マニュアルなどを見ますと自閉症は神経発達障害であると書いてあります。過去15年間の間、人々は行動障害であり、これを変えていかなくちゃいけないという見方が広まっているわけです。ですから行動に焦点を当てることによって我々としてどのようにその個人が成長できるようにサポートしたらいいのかというところで間違いが生まれてしまう。
Jeffrey Guenzel: 神経が違うとその脳のワイヤリングの扱い方が違うということです。その影響として行動が影響を受けているということです。ですからFloorTimeにおいてがこの神経学の文脈での違いを理解し、発達段階、発達プロセスをどう助けるのかということを考えていきます。
Jeffrey Guenzel: フロアタイムを見ると子供たち楽しそうです。遊びです。遊んでるだけだよねと言われますけれども、子どもたちの頭の中を覗いてみると、考えることも抽象的な考え方ができるようになっている。複雑な考え方ができるようになる。そしてそういったことが人生の成功につながるということになります。でそれをフロアタイムといった観点から実現するということを考えますと、子どもが関心があるというところにフォーカスするということです。我々は言った通りのことをやれということではなく、ルールはあるよと子どもたちも従うべきルールがある。しかしながら個々の違い、個人差を重視し、そして自分のやり方で成長を促すということをやっています。
Jeffrey Guenzel: フロアタイムでは教えるってこととはちょっと違います。どちらかというともっとつながる関わりを通じてつながるということにあります。これがその子どもの発育上、発達上とても重要なんです。そして情報を学ぶそしてスキルを身につける非常に重要なことだと思います。これは1人の人間としての発達を促すということなんです。グリーンスパン博士がかつて言っていました。それぞれの子どもに素晴らしく子どもになるチャンスがあるんだと。可能性があるんだと。それを開花させるためにすばらしい世界を作るのが私たちの仕事なんだと言うふうにおっしゃっていました。こういった素晴らしい世界を私もつくりたいと思います。そして子どもの可能性を開花させたいと言う方もいます。Neurodiversityというプロセスが日本でも始まっていくということで本当にそれが発展していけばというふうに願っております。ありがとうございました。