今週は、地球・惑星科学の第一人者である松井孝典先生をお迎えしました。松井教授は、内閣府宇宙政策委員会の委員長代理を務めるほか、千葉工業大学の学長や、惑星探査研究センターや地球学研究センターの所長を務めていらっしゃいます。
これまで、宇宙に関するさまざまなプロジェクトを精力的に推し進めてきた松井先生に惑星探査に関する研究内容や現在推し進めているプロジェクトなどについて伺いました。
さらに、千葉工業大学で新しく研究所を立ち上げる伊藤穰一が、学長である松井教授と教育論についても激論を交わしました。
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今週のポッドキャスト配信について
Podcast Transcript
伊藤穰一: 千葉工大はいつからなんですか?
松井孝典: 私の時は東大は、63が定年だったんです。63で辞めるときに、まぁ早稲田とか慶応とかさそういうとこへ行って普通のいわゆる東大やめた人が行くコースを辿るのかなと思ってた頃に、「松井さん、早稲田とか慶応でないとダメなの」と。「千葉工大ってあるんだけどそこに来る気ない」っていう話だったわけよ。うん、私は千葉工大は知らなかったわけ、そのとき「別に僕は、名前でね行く気はないんですよ」って。別にさあ東大名誉教授がさあどこへ行こうと関係ないじゃん。「名前でアレする気はないよ。条件次第でね」って言ったらさ。研究所を作ってくれるっていうわけよ。で、私の弟子連中ね10人ぐらい、私が好きなようにやってくれて。最初は松井研究所でいいっていうわけよ。こんな面白い話ないじゃん。それでね、千葉工大行くと決めた。みんな好き勝手やってるっていう。私なんか、東大時代の方が型にはまってたよね。やることも、大体オーソドックスなことをやってる感じだったけど。千葉工大で行ってからだよ。もう何か型破りを始めのは。だってそれこそ何でもいいって言うけどさ、何でもいいって、松井研究所っていうわけにいかないじゃない。かだから何にしようかと思って、結局はね。その頃アストロバイオロジーっていうのをやってたからさ。アストロバイオロジー研究所にしようと思ったけど、工学部だからね。千葉工大は理学部ないからさ。全然マッチしないわけよ。すると、ゴールはアストロバイオロジーだけど手段としては惑星探査ってんでね惑星探査研究センターにしたわけ。それまで私は実は一切惑星探査なんてかかってなかったの。だってさ、機器を開発しなきゃしょうがないんだよ。理念をいくら言っても。その機器開発をじゃあやってやろうと。だからカメラにしても何にしても最先端のものをウチが作りますよと。言う格好でこの惑星探査研究センター立ち上げてね。当時は、アストロバイオロジーをやろうと思ってたんだけど。そうするとまどろこしでしょう。その火星探査なんて10年かかるわけで。例えばそんなのやってられないから。どうしようかなと思って。しかもさ千葉工大のお金でできるような小回りの効くやつの方がいいじゃない。それで実は小天体、特に地球周りのいろんなことをやれば、お金もかからないし惑星探査に匹敵するアイディアさえあればいろいろできる訳でしょう。っていうんでね小天体をターゲットにして地球回りだったら流星ですよ。流星っていうのは彗星の破片だから、アレを集めりゃ、彗星が何なのかっていう議論ができるわけです。するとお金がかからない訳よ。それははやぶさにつながっていくんだけれど。うちははやぶさに関わってるけどさ、自前でやるやつを全部やってるわけ。たとえば宇宙からね流星の観測をすると。そのカメラをISSに載せる。それも日本のじゃないよNASAのモジュールに載せてんだよ。NASAが載っけたいって言うからいいよって言うので組んで、始めるとかして。そもそもの転機がそれなんだよ。それでアメリカから打ち上げるでしょ。カメラを。最初爆発したんだよファルコンナインが。だから日本ではえらいニュースになったわけ。初めてだからね。そんな爆発なんて。目の前で爆発するんだから。その後、2回目も爆発。で、3回目にようやく上がったわけ。で、それがさすごい宣伝になったわけ。千葉工大の。だいたいみんな誰もさ千葉工大が宇宙やってるのって知らないんだから。いつの間にかさ僕は宇宙の最先端を千葉工大がやってるっていうのが、しかもNHKのニュースでニュースセンター9時のキャスターが、いや恥ずかしいことながら千葉工大がこういう最先端な宇宙の研究やってたなんて知りませんでした。とかって言わせるぐらいのことをやったもんだから、ものすごいインパクトあったわけ。
松井孝典: 惑星探査研究センターそのものが軌道に乗っちゃったわけ。もう私がいなくたって自律的に進んでいくんですよ。私はもうちょっと別の分野ってことで今新しい研究センター立ち上げて。またやろうとしているわけ。最近はもうねもっぱらトルコで発掘ですから。1万2000年前のね、トルコに遺跡があるわけ。これが人類最古の遺跡なの。石柱でできた神殿がそのギョペクリ・テぺっていう名前の遺跡なんだけど。私はあんまり神殿遺跡は興味なくて。居住遺跡ね。人が住んでてその人たちが住んでいるはずだから居住遺跡を見つけてどういう生活してたのかを調べると。それは農耕してるだろうと確実にね。農耕してたら、この起源が今1万年前ってのは教科書だけど、1万2000年前にさかのぼるわけ。私の文明論は地球システムの中に人間圏を作って生きるという生き方が文明なんだと言っていて。これから人間圏学をやらなきゃいけないと。要するに人間圏というのはどういうものであって。どういうふうに成立し、発展してきたかって言わなきゃいけないってことを言ってて。人間圏学というのを提唱してるわけ。で、今は1万2千年前の発掘をトルコでやると。一番古い集合住宅的なものってのは、チャタルヒュユクっていうね。やっぱりその付近にあってさ。これはね2000人規模で人が2000年住んだって言われてるわけ。集合住宅って言ってもこんな15センチぐらいの厚さの壁の中に区切られた中に人が住んでんだけど。面白いのは人の出入りみんなに上からするの。そういうチャタル・ヒュユクも調べようと思ってるんだけど。従来の考古学者が目につけないところね。これに私は目をつけて。そこには非常にきれいなごみ捨て場があるわけ。9千年前から7千年前の。綺麗に島状に年縞が残ってね。それを調べることによって毎年どういう生活をし、どういう人口でどういうふうに推移したかってわかるだろうと。で、それを、先日うちのチームが行って。全部はぎ取って、いま保管してあるんですよ。だからその人間圏学をやろうっていうのがね。ひとつの私の今チャレンジしてるとこね。遺跡の調査なんてこれ惑星探査ですよと。まさにリモートセンシングで取ってビッグデータでそれをどう解析するか。ただその惑星でやることを遺跡でやるだけですよと。それはもうAIを使ってたとえば楔形文字だってさAI使って解読するとかね。何かそういうことをやらなきゃ人間の今の解読する能力のある人たちだけにはとても読み切れない膨大なデータがあるわけね。だからビッグデータなわけでね。それをどう変えるかっていうのも含めて実は今その人間圏学の中に組み込んでいるわけ。リモートでやる。それからロボットで分析するがそのデータを全部一元管理してビッグデータとして考古学者に提供するとかね。そういう具体的にやらないとさやっぱりなかなかね理念だけど今まで30年やってきたんだけど人間圏なんてなかなか浸透しないからさこの具体的なところで世の中にこう見せてやろうと思ってんだけどね。
伊藤穰一: いいですね。それは、いつ頃結果が出る予定なんですか?
松井孝典: いやそれはやっぱり今、許可が下りたけど始めるのは来年からでしょ。来年とりあえず実はまず地中レーダーっていうのを使って、今埋もれている遺跡。この遺跡の発掘を日本が初めてやるので、居住遺跡で実際にどういうことを、例えばライフスタイルね。ゴミ箱をあさってさ、いろんなものを取り出せばどういう生活してるかわかるわけ。で、これねやっぱりすごいんだよ。そういう分析能力はね人類すごい発展してるわけ。どんなものを食べてるかとかさその種類は全部さ環境DNA的に分析できるんだよね。そういうチームは日本にいるし。まったく新しい世界がここ5年ぐらいで見えてくるだろうと思ってるんだけどね。そもそも人間圏っていう共同体ね。点的に発生するのか。要するに1つの集落として生まれるのか。それとも。ネットワークとして生まれるのか。それが発展して面的になってゆくわけであって。それが全部追えると思ってるわけ。トルコのアナトリア高原で。そういう発想ってないからね。そういうことをやりながらその人間圏学を作り、新しい概念を提唱していこうと今戦略は練っている。
伊藤穰一: もう実は11月1日から始まってて、何やってもいいって言われて。どうしようかってまだ半分悩んでるところなんですけども。なんかアドバイスありますか?
松井孝典: アドバイスっていうか僕は好きなようにやったらとしか言いようないね。あと私のやりたいこととマッチすりゃ一緒にやればいいし。
伊藤穰一: そうですよね。あの僕の変革センターの名前もすごく難しくて。変革センターの名前もちょっとで結構難しいんだけれども。でもね、何かいい言葉が見つからなくて。
松井孝典: 私もね変革センター?っていう感じだったけどね。だけど話を聞いててさ、じゃあ何がいい言葉なのかなっていうのは。なかなか難しいね。
伊藤穰一: そうなんですよ。結構、後から出てくるプロジェクトもたくさんあるから、あんまり細かい話にしたくないし。ただ、あんまり何か中途半端な言葉だと。みんな使ってる言葉もね…。
松井孝典: 英語で何というの?
伊藤穰一: 英語はCenter for Radical Transformationって言ってるんだけどね。で、結局…
松井孝典: ラディカル入れたいね。
伊藤穰一: ラディカルは入ってる。だから変革の核がラディカルとちょっとつながっていて。っていうのは日本って結構その大企業もそうなんだけども、デジタルトランスフォーメーションって言葉使うんだけどもやっていることを見てるとただ何かデジタルの後付けみたいな感じで、本心を変えようとしてなかったりするのが多いので、そういうのと一緒にされたくなかったのがあったんだよね。それで僕のPhDの論文が変革論っていうのがタイトルだったんですよ。英語はPractice of Changeっていうんです。だから実践とそのあとはその経済学・法律・技術・文化とか全部そこを混ぜてやってるのを僕も実践してきたし、それの勉強してきたので。それをやりたいんだけども。ただそこに学問がそこにはないデザインが一番近いんだけども。デザインっていうのはどっちかっていうとその設計するところで。
松井孝典: 日本語のイメージが悪いんだよ。デザインっていう日本語のイメージが。だから、それを変えるね言葉を見つけないでいけないよね。
伊藤穰一: そうなんですよね
松井孝典: 私もしょうがないから、今、すべていろんなとこで「技術革新を持たない文明は滅びる」という言い方しかしてないんだけどね。そうねやっぱり「技術革新」。これも手垢がついたような言葉だから。本当は使いたくないんだけどさ。なかなかね新しい言葉を創造するって難しいね。
伊藤穰一: 難しいですよね。
松井孝典: でも、それが勝負だと思うよ。
伊藤穰一: そうですよね。
松井孝典: それが、だからあの見つかれば名は体を表すっていうからさ。
伊藤穰一: そうですよね。見つかったら名前変えていいんですか?
松井孝典: 早い方がいいだろうね。
伊藤穰一: 早い方がいいですよね。ただ、メディアラボも、今みんな慣れちゃったからいいんだけれども、あれができたときみんな何この名前って思ったから。
松井孝典: 私も分かんなかったよ。そのころほらさそういう進化論も持ってなかったから。でも考えりゃさ、社会なんてメディアだからね。メディアが環境だからね。
伊藤穰一: だからでも変革センターも慣れるのかなとか思いながら。でも違う言葉見つけたら早く変えたほうがいいかなっていうのは。悩んでるんですけどね。
松井孝典: 英語の方がわかりやすいけどね。
伊藤穰一: そうですよね。英語の名称を使うっていうのもアリですよね。でもそういう意味で細かいプロジェクトは結構たくさん集まってるんだけども。それの全体の文脈と世の中にどうやって説明するかっていうのはもうちょっとポリッシュしていかないといけない。
松井孝典: 細かく分かれてるから、全体像が見えにくいよ。だから、なにかコアのプロジェクトを一個立ち上げるんだよね。
伊藤穰一: そうですね。たぶん来年、そのデジタル庁とか今、国のいろいろやってるので。その国とデジタルと社会の関係のフォーラムみたいなカンファレンスが5月か6月にするので。それがたぶん1つの真ん中に入ると思うんですね。で、それはなんとなく今の日本社会がちゃんと失敗しないでやんなきゃいけないことなのでそれは多分真ん中に入ってきますよね。そこにいろんなプライバシーだとかセキュリティーとかそこにひっついてくると思うんで。そこに多分みんないろんな人と話してて思うのはやっぱりさっきから出てるデザイナーがいないんだよね。だからデザイン、あとアーキテクチャだよね。だから今、国がデジタル田園都市構想とか言ってるけれども。何かみんなテンプレートを作りたがるんだけども。そうじゃないと思うんですよね。そこにいる市民たちがどうやって話し合って、その話し合いによってどうやってアークテクチャが出てきてでそのアーキテクチャの中をどうやって技術で埋め込んでいくかっていうプロセスのデザインをしなきゃないのに、なんかこう固まったものをトップダウンで作ろうとしてるところがあって。
松井孝典: うんいやわかるけど、それは日本の国民のレベルを考えたらなかなか難しい。は自らが集まって何かを生み出すっていうそういう市民がどのぐらいいるのかっていう。
伊藤穰一: ただ、それ一部はプロセスでもあると思うんですよね。だからそのディスカッションのやり方とか、だから民主主義みたいな結構大きいアイディアなんですけども。でもそこで千葉工大ってつながってくるかなと思うのは僕がたぶん今いろんなディスカッションの中で何が足りないかっていうとその技術的な視点持ってる人たちがそのシステムを考えるときに大体いないんですよね。偉い人の中にもいないし、市民のとこにもいないので。そういう技術的な思考力を持った人たちを配置しなきゃいけないと思うんですね。そこで千葉工大みたいな学校のアウトプットが、それこそ市町村のいろんなとこに繋がっていくんじゃないかなというふうに思っていて。
松井孝典: 少なくとも千葉県の中の地域連携みたいのはやってるから、その仕組みは使えるよね。
伊藤穰一: だから千葉で実験するって手もありますよね。何か変革センターって名前はちょっといろいろこれからも考えてみたいと思うんですけども。メディアラボのときにAntidisciplinaryっていう言葉を使ったんだけれども
松井孝典: あれは日本語に訳すとね、わかんない。
伊藤穰一: 難しいよね。でもそれがあんまり分かってる言葉だとみんな一生懸命考えないですら聞き流しちゃうのも英語でもね結構みんなちょっと悪い反応するんだけども。悪い反応したから説明するチャンスがあるとは思っていて。僕がよくみんなに説明してる分野っていうのは、例えば化学とかたくさんあって。それ大きい白い紙の中に黒い円があるみたいな感じで。で、一つの学問ってジャーナルがあってそして言葉が言語があって学位が出せて学部があったりするので。そういうこれ宇宙と同じで、大きい宇宙の中でその惑星があるところだけが分野だとすると、その空白のところのリサーチだとか、イノベーションってほとんど起きてなくて。国の予算も結局、その博士論文が取れるとこにしか流れないので。そうすると空白のところどうやって研究するかっていうのがメディアラボの一つのテーマででAntidisciplinaryっていうのはその学問について反対してるんではなくて。空白のところをどうやってサーチするかっていうことなんです。学問っていうのはなんでみんな学問のところで研究しているかっていうとそこに面白いものが必ずしもあるからじゃなくて、そこにお金が流れているかであって。だからそういう意味でメディアラボは変わった100社ぐらいの企業から結構自由なお金もらえたから。伝統じゃないところを研究できたので。それも結構ジョークで創業者のネグロポンテがよく言ってたんだけど、英語でnone of the above、日本語で「その他」。だからその他の分野でMITの博士を発行できる、すごい異質な研究所だったわけで。そういう意味で言うと、ちょっと説明しづらいかもしれないけども、いろんな大学でいろんな学問あるけども、その他って実はほとんどなんだけども。そこできちっとリゴラスなことをする。でそれもちゃんと理論と理念も含めて応用もちゃんとやるっていうのがまず大きなテーマ。でも、それだとじゃ中身何なのっていう話になるので。そうすると結局そもそも論の話、じゃ日本社会とか今の地球でどういうものが一番重要なのかっていう話になるとやっぱりこのデジタルの変革だとか環境に関する変革、理解と変革だとか。あとは多分医療だとか、生態系の方なところでそこの中でじゃ何が一番ズレていて、で何をこうどういう文脈でつなげると、一番社会的にインパクトがあるかっていうのを、今考えていこうと思っていて。で、そうすると今人工知能の未来だとか。あとはその国のデジタル改革だとか。あとはその環境問題を理解して、それを社会的なプロセスにどうやって変えていくかっていうプロジェクトが出てくるんですけども。ただプロジェクトだけ見ると、何か何でもやってるように見えてるんだけども。その例えば法律学、経済学、デザイン、技術をこう混ぜて、それをちゃんと形にして応用に変えるプロセスが、これが建築だったりデザインだったり、一応学問としてあるものなので。ただ建築とかデザインの学問で学んだものはもうちょっとサイエンスに引っ張り込むとか、今例えば環境なんかでも結構、経済学者が真ん中で動いてるんだけども。ただ経済学って結構リミットがあって、んで経済学の数学もかなりリニアなところがたくさんあって。やっぱりモダンな人工知能だとかモダンの例えば進化論とかをあんまり経済学者で使わないんで。だから普通の学問の学者が使わない技術的なツールも、そこで実験したいなっていうのがコンセプトなんです。って、やっぱり、わかりづらいかな、それじゃあ…
松井孝典: 私はわかりますよ。っていうか私自身がそうやってきたから。既存の学問じゃないところを、開拓して、学問にしてきたわけです。だから非常によくわかるんだけど。そうでない分野にいる人にとってはわかりにくいでしょう。ということですよね。
伊藤穰一: ただ思うのは最初から全員を説得する必要はなくて、結果が出て、その結果を出すのにどうやったの。っていうふうに聞かれたときに、ちゃんと説明ができればいいかなと思うので。で、松井さんじゃないけど、わかる人は中にはいると思うんで。まずわかる人たちから始めていくっていうのが。あと学生もいると思うんですけどね。あと、さっきの話で言葉が重要っていうので。やっぱり言葉が足りないですよね、説明するために。その日本語も英語も含めて、いい言葉も作っていかなきゃいけないなと思ってます。
松井孝典: で、僕はね。大学の評価っていうのは基本的に歴史っていうのが非常に重要なんだよ。で世界の名門ってやっぱり歴史のあるところ。そうですねなんで歴史のあるとが重要かっていうと、知の蓄積があるから。で、そのだからそれを乗り越えようと思ったらおんなじとこで勝負してたって絶対ダメなんだよ。すると今ね、伊藤さんがやってるような分野、まったくこれまでの知の蓄積の中に関わってないようなところでいかにその成果を出すかっていうのがさ。こういう新興勢力にとってそれがこれからブランド化して生き残っていくかって意味では重要なんだよ。僕はそこのところを期待してる。
伊藤穰一: MITが面白かったのはMITって法学部もないし医学部がないのね。でもメディアラボで法律も持ってきたし、医学も持ってきたし、そこで結構成果が出せたんだよね。で、今、松井さんが言ったようにすごい工学のところでは歴史があるし、建築も歴史があるけれども。歴史がないところは逆に歴史があるとこができないようなことができちゃうから、だからその歴史と無知のところのバランスで、もちろん失敗もあるんだけども。今までできないことができると思うんで。そういう意味でいうと千葉工大も歴史はあるしそれで強いところもあるし、だけどまったくやってない美学だとか文化だとか、法律とか経済を、引っ張り込んで混ぜることによって他の大学でできないことができるんじゃないかなっていうのが直感なんです。
松井孝典: いや、まさにその通り。多分ね、伝統的にはさ、日本の工業大学、単科大学としては一番古いんだよ。うちの大学はね。そういう意味ではそれなりの貢献はしてるわけ。だけどやっぱりさ、もともと日本の大学ってね、いわゆるエリートの帝国大学だよね。っていうところが知の集積とかそういうことをやるようなところで。今、日本の私立大学っていうのはだいたいさやっぱり専門学校がもともとにあって実務教育ですよ。その格差が今も何て言うのか日本の大学制度にあってね。それが問題だと思うんだけど。これを僕は抜本的に改めるためには、結局その歴史性は乗り越えられないからね。おっしゃっているような全く違う試みをやって新たな知を生み出すと。で、その知恵を社会に還元してくっていうプロセスを通じないと千葉工大みたいなね。うんこれまでわりと中堅だった大学が少しブランド化していくってことはできないと思ってる。
伊藤穰一: そのやっぱりメインのところをちゃんと守るエリートの大学と、やっぱりちょっと端っこで。結構人工知能を見ててもやっぱりすごくとんがったのって、案外エッジの大学で実験したりして。MITでさえ、結構コンサバティブになってたりするんですよね。だからそういう役割っていうのもあるんじゃないかなと思うんですよね。
松井孝典: いや、まさにそこのところを私なんか一番期待してるけどね。だからもうエッジの効いたような、何かを次々とやってもらいたいと。でそのやっぱりそういう具体的なプロジェクトをね、さっき実験とおっしゃったけどさ、やってもらうのが一番わかりやすいと。そうですね何をやろうとしてるのかって言うのがね。
伊藤穰一: わかりました。じゃあ今から20日までにちょっとそれを具体的に書きあげて発表したいと思いますよろしくお願いします。
松井孝典: よろしくお願いします。