Joi Ito's Podcast - 変革への道

テクノロジーに精通しているだけでなく、サブカルチャーやネットカルチャーにも詳しい伊藤穰一。 かつて、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究所メディア・ラボの所長も務めた伊藤穰一がさまざまな人物を巻き込み、「これからのニッポン」を考え、どう変革していくべきなのかを議論する新しいポッドキャストがスタートします。 番組には、伊藤穰一のネットワークを通じて、世界中から様々なゲストが出演。 また、解説者として、メディア美学者である武邑光裕氏が登場し、デジタル社会の大局的な指針を伊藤穰一と共に掘り下げていきます。 議題となるテーマは毎回その時に注目されている話題や、伊藤穰一が気になっているテーマをピックアップ。 伊藤穰一の頭の中をそっくり丸ごとお届けしていきます。是非、お楽しみください。

昨年、取引総額が4.7兆円を突破し、一大ブームと化しているNFTアートの世界。このブームがひと段落した後、求められているアートのカタチとは一体何なのでしょうか?今週は、メディアアーティストの藤幡正樹さんをお迎えして、NFTアートの未来についてトークを展開しました。

藤幡さんは昨年、自身初となるNFTコレクション「Brave New Commons」を発表。1000件を超える購入申し込みがあり、大盛況のうちに販売を終えています。

【藤幡正樹さんプロフィール】 メディア・アーティスト。1956年東京生まれ。80年代は主にCGを扱った作品の制作、90年代はインターネットやGPSなどの先端テクノロジーに取り組む。96年には《Global Interior Project #2》でアルス・エレクトロニカのゴールデン・ニカを受賞。インタラクティヴな書物をテーマにした《Beyond Pages》は1995年以降世界数十ヶ所で展示された。1992年の《生け捕られた速度》から2012年の《Voices of Aliveness》へと続く「Field-Works」シリーズでは動画にGPSによる位置情報を付加することで仮想空間と現実空間をつなぎ、記録と記憶の新しい可能性を多数の作品群へと展開。2016年には、70年代から現在までの主要作品をARで見ることのできるアーカイヴ本『anarchive #6 Masaki Fujihata』をフランスで出版。2018年の香港での《BeHere Hong Kong》に続いて、残された写真を参照しつつ、その時代の人々の営みをARを用いて現在に再現するプロジェクトの最新版《BeHere / 1942》では、1942年に起きた日系人強制収容をテーマに取り組んでいる。

編集ノート編集ノートには用語や固有名詞などの意味や内容をまとめています。また、ETHアドレスの取得方法やNFTの確認方法についても、まとめています。ぜひご参照ください。

JOI ITO 変革への道 - Opinion Box】 番組では、リスナーの皆様からお便りを募集しています。番組に対する意見はもちろん、伊藤穰一への質問があれば、こちらからぜひ投函ください。先日からイーサリアムのアドレス記載欄も設けました。特に番組に貢献したリスナーには番組オリジナルのNFTをプレゼントしています。

コミュニティ醸成実験について】 これまで番組で小出しにお伝えしてきたコミュニティ醸成実験。ようやくその中身をお伝えできるようになりました。番組という枠を飛び出して、リスナーの方々同士が交流できる場となっています。詳しくは、こちらのリンクをご覧ください。

この実験に参加をご希望の方はこちらのリンクから参加メンバーの登録をお願いします。メンバーのダイバーシティを考慮しながら、徐々にメンバーを拡大していく予定です。参加時期がきましたら、スタッフから個別に連絡をさせていただきます。興味のある方、まずは登録だけでもしてみてはいかがでしょうか。

Podcast Transcript

伊藤穰一: こんにちは、伊藤穰一です。今日のゲストはメディアアーティストの藤幡正樹さんです。実は数週間前、藤幡さんのYouTubeのショーに出てすごい面白い話だったので、ぜひ僕がインタビューするような形でちょっともう一回話をしたいなっていうのと、NFTの世界だと2週間経つともう1年経ったような感じなので、また新しい話題がいっぱいあると思うんですけども。そこに入っていく前に藤幡さんのこのメディアアーティストっていう定義を少し教えてほしいんですけども。

藤幡正樹: 謎ですよね。普通にメディアアートっていうとテクノロジーアートの最先端みたいな感じで考えられると思うんですけれども。普通アートのジャンルっていうのはメディウムとテクノロジーでカテゴライズしますよね。彫刻とか絵画とかそれから絵画の中に入っても版画とか日本画とかそれぞれ結局使ってる道具が違う。メディウムが違う。媒体が違う。っていうのでカテゴリーされていると。で、メディウムがアートの対象になってるってこれメタですよね。明らかに。で、だから僕はメディアアートっていうのはメディアそのものを作るアートのジャンルだっていうふうに解釈してるんですね。それどこからくるかっていうとマクルーハンがいいと思うんだけども、Medium is Messageっていう意味で、Mediumが変わるとメッセージの内容も変わる可能性があると。だからMediumそのものがメッセージだと。どのMediumを使うかっていうことが表現者にとっても重要なメッセージになると言うことで、それは実際ね歴代の大統領が当選するときに使ってるメディアが違うから。新聞が出てきてなる人とラジオが出てきてなる人。今はTwitter大統領の時代だから。そういう意味で、だからメディアの設計が違うとメッセージが変わってくってことに非常に興味を持っていて。そこに来たってことですね。

伊藤穰一: で例えばNFTに対してそれを当てはめると、この僕の勝手な解釈ってNFTらしさを表現するアートで今までのアートはただNFTに張り付けるだけじゃないっていう方向に行くんですよね?そうですね。

藤幡正樹: だからNFTとアートがくっついたっていうのを去年話題になって僕も見ていてこれかなりある種異様な風景であるし、それからデジタルは唯一性がないから販売できないっていう性を追ってたと思うんだけども。「おお、そういう技術が出てきたか」というところで非常に驚いた。でその上で、じゃあこのNFTって技術を使って、もうちょっとその本質が少し見えるようなことってできるんじゃないか。それは二つあって、その売り方の問題と作品の価値をどう定義するかみたいなことになってくるわけですよね。だから、Brave New Commonsっていうプロジェクトを3331でやったときに、もうこれコンテンツじゃないんですよね。中で売られてる内容がどうのこうのではなくて、しかも、その物語とそれからそのテクノロジーをどう使うかでむしろ唯一性っていうのが一個じゃなくてもいいわけですよね。エディションが切れるってこと言われて。で、そうすると複数の人が持っていながらそれがユニークであるってことは言えるはずで。なぜかっていうと、デジタルデータそのものが複製が可能なので、オリジナルと複製っていう概念がないわけですよ。本質的に。コピーしないと見られないんだから、ともかく。だからそうすると経験がオリジナルになるわけで、見た時が経験になるわけだから。実はデジタルアートっていうのは非常にPerformativeなものなんですよね。こうモノ側ではなくて経験の側に価値があるっていうことになってくるから。で、そういうことを、もともと考えていたんだけど、まず一番最初にこの展覧会の話をもらったときに、もう即座に80年代のMacintoshで描いた画像にしようと思ったんですよ。モノが捨てられないたちなので、残ってたフロッピーを読んでいって、そこから読み出したデータを売りました。それで三十点ほど選んだんですけど、そのうちの半分以上は何何かの絵何が書いてあるか、大体分かるようなものだったり、それなりに面白いと自分でも思うんですけど。全部、基本的に未発表なんですけど。で、その後に値段をつけていくときにどうしようかなと思って。これものすごく悩んだんですけど、ともかく一番無意味なものを高くしようと思ったんですよ。それでによるっていうでしかもタイトルが「tmp」。明らかにセーブしたときに本気じゃない。で、それから一文最後に自慰行為っていう。なんで自慰行為って。しかも文字をタイプしたのではなくてあれドットを1個ずつ塗りつぶして作ってんだけど、まあ、アートって自慰行為みたいなもんなんで。んで「すげえな。出てきちゃったな」と思って。それもやっぱりファイルネームが「tmp」なんですよ。だからなんだけどこの二つがタイトルが「tmp」だから100万円にしたの。

伊藤穰一: そういうちょっとクスクスっていう反応をしている藤幡さんが僕すごい好きなんです。そこからやっぱりイノベーションが生まれてくるような気がしますね。

藤幡正樹: だから意味があればあるものほどそっちにシフトしてしまうから意味がないものほど今回のプロジェクトがはっきりするってことですよね。つまり大勢の人が集まって値段を下げるっていうことが中身の問題ではなくてその行為の方が重要性を増してくるので。すごい大成功。

伊藤穰一: なるほど。実は僕も買いました。

藤幡正樹: 笑。

伊藤穰一: それでちょっとどこが今までのそのNFTと違うかっていう、ちょっとメカニクスを説明してもらっていいですか。Brave New Commonsの。

藤幡正樹: そうですよね。僕がやったのは、まず先に僕なりの価格を設定して。僕はこれだけの価値があるんじゃないかっていう設定だと思ってください。で、それを参加者の数で割っていくようにしたわけですよね。で、例えばひとつ一番高い作品100万円するんだけど、その100万円の作品を1人が買うと100万円。で、ずっと期間中誰もほかに買う人がいなければ、その人は100万円で買うんですけど。そういう価値があると思ったから。で、2人目の人が来ると50万円ずつで買う事になるんですね。で、そうやってだんだん分割されていって。で、どこで落ち着くかっていうところが興味あるわけですよ。つまり、どれぐらい欲しいと思う人がいるかと。で、つまり優れた作品であるってことは、欲しい人が多いはずなんですよね。だから、いい作品が多くの人が参加すると。で、ところが参加者によって価格は下がると。で、僕の考えでは価値は100万円のままなんだと思うんですよ。もしかしたら、これを唯一1人しか買えないようにしたらそれ以上の価格になったかもしれないけれども、ただその価格と価値の関係が何か。これまで自分たちが知ってるような関係性ではない形で組まれていくっていうのがだいたい想定してたんだけど、思った以上に面白かったですね。

伊藤穰一: そう。僕3番を買ったんですけど、それが今4人で、8万2千5百円で。1番は、861人だから、1人が1161円。すごく思うと微妙なのは、結局、じゃあ、これが終わって、そうすると僕が持ってるやつは人気がなかったっていうのはひとつの考え方だし、でも僕が持ってるやつの方がレアっていう考え方もあるし。だからすごくコレクターの立場からするとすごく複雑で、それで、ただ沢山あった方が。NFT業界だとひとつのファッションになるから、それでみんな持ってる人たちのコミュニティになるので、やっぱり800人のコミュニティよりも4人のコミュニティの方がちょっと寂しいなみたいなもあるし。だからいろんな視点でこの価値っていうのが、今決まってきてるのを何かすごく感じますよね。やってると。

藤幡正樹: そうなんです。だから確かによく考えてみると僕たち普段、街に行ってデパートとか行って買い物するときに必ず値段が付いてるんだけど。これに対して非常に疑いを持つようになりますねこういうことすると。誰が価格決めてんだっていうことですよね。

伊藤穰一: でも、アーティストからすると、もう入ってくるお金は決まってるわけだから。そのま、でもその後の転売の何パーセントかロイヤリティーが入るわけだよね。もし僕がまた売ってどんどん値段が上がってきたりするとそうなるかもね。うんだからそういう意味ではアーティストだ今までのメディアアートより稼げる可能性もなくはないよね。

藤幡正樹: そうですね。稼ぐことは目標じゃないけどね。

伊藤穰一: そうですよね。僕もいろんなNFTを見てて、(思うことは)二つあって。一つはただ単にjpgをNFTに張り付けて儲けようとしてるアーティストって、ちょっとつまんないなと思いながら、でもこの人たちは今までビジネスモデルがなかったのに、これでお金が入るのはそれはそれで素晴らしいことだから。あんまりけなしてもダメだよね、みたいな感じで。だから本当は藤幡さんみたいなメディアアーティストがいろんなNFTの今まで想像できなかったこと考えるのがひとつのアーティストの立場だし、ただ他のメディアアーティストじゃない人も別にNFTを使ってただJPEG貼りつけてオークションしても別にいいよね。っていう。メディアアーティストとしてのクリエーターさんの責任と一般アーティストとして新しいビジネスモデルに参加するのとまた二つこうなんか立場があるんじゃないかなと思ったんですけどね。

藤幡正樹: だから今あるようなNFTのアート作品のマーケットっていうのはそのマーケットの設計者の中にいるわけじゃないですか。言ってみればその孫悟空みたいな。お釈迦さんの手のひらの上に手のひら誰が作ってるんだよっていう話ですよね。だからやっぱりOpenSeaならOpenSeaの設計がやっぱり、ああいう投機的な環境を生んだと思うんですよ。で、やっぱり自分の作品を作り手の側からすると、大切にしてほしいっていうのが常識だと思うので。理解してくれてる人に買ってほしいと言うことなんだと思うので。ちょっと今のこの投機的な現象っていうのはやっぱり時間が経てば消滅してしまうと思うんですよね。消滅してしまうからこそ余計に過熱してるんだと思うんです。そういう意味ではよ俺もやってもうちょっと儲けようかなみたいな気持ちがないわけじゃないけど、もうちょっと遅いじゃないですかね。

伊藤穰一: そういう意味でいうと、今サイトもそうだし、アーティストもそうなんだけども。転売したときに価値が上がるじゃないですか。価値ってお金が入る。そうするとサイトの設計とどことは言わないけれども、こないだ僕あるミュージシャンのNFTを買ったら、すごい嬉しくて。もうずっと取っておこうと思ったのに、一番最初のオプションが「オークションに出して転売する」ってさ。でそれはプラットフォームからすると転売させる方が儲かるから、それがデフォルトなんだけどもファンからすると転売するために買ってるわけじゃないじゃないですか。だから、こう長く持つインセンティブをもうちょっと持たせるっていうのとか。あとはやっぱりだからこないだ藤幡さんとも話してたけども。Beepleのいくらだけあれ60億だっけな。

藤幡正樹: 75億円かな。円換算で。

伊藤穰一: それに関する去年の3月のクリスティーズのオークションであれでなんとなくこうフィーバーに火がついちゃって、何かオークションで高く売るのが何かNFTアートの目的みたいなフレームになっちゃってるのも、少しこのボタンの…。でもボタンの掛け違えじゃないのか。あれがなかったらアーティストの目が覚めななかったのかもしれないけども。ちょっとそこがスタート地点っていうのが少しその設定しちゃってるところあるよね。

藤幡正樹: もちろんありますね。それは誰でも驚きますよね。あの金額で売れる絵画って現代作家で作れるはずがないですからね。

伊藤穰一: いろんなアートの定義ってあると思うんですけど、結局技術者とかは技術を作るしそれを磨き磨いたり解像度を上げたりいろんな康子のチューニングはするけれどもアーティストって、そもそも使い方で技術使ったりひっくり返したり裏返したりするから。技術って発展していくのであってその技術者だけだと今まであったことをどんどん良くするっていう方向が合理化が多いのででそういう意味でいうとアーティストとアートとテクノロジーのメディアアートとかもそこに入ると思うんですけど。この関係性ってすごく重要だと思うんですよね。だからね、何か、ここのタイミングで藤幡さんに、ちょっとひねって今のNFTではできるけどやってないことを何か創造してほしいんですけども。もうここで何かあんまり秘密を明かしてほしくないんだけどやっぱりとどのあたりに期待してます?NFTの今、なんとなく方向性としては。

藤幡正樹: 直近の自分のプロジェクトに関してはやっぱり1つのコミュニティーになってると思うんですよもちろんBrave New Commonsってタイトル付けてたのにはそういう意図があって。最初に100万円払うやつは、勇気いるよなっていうBraveなんだけど。ブレイブニューワールドはすばらしき新世界でもう完全にデストピアですけど、これもデストピアかもしれないし。そうそういう勇気が面白いなと思ったんだけど、結果的に今参加者数だけ点数だけで言うとね1000点近くなってなってきて。同じように面白がってくれてる人はこれだけいるっていうのはものすごいことなんで。で、これ終わって、「はい、作品を渡しました」で何か終わりにしたくないなと思っていて。で、もちろん転売する人もいるかもしれないし自分でずっとキープしておきたい人もいるだろうし。で、そうするとせっかくやった、このプロジェクトの価値を落とさないようにしてくためにはどうしたらいいかっていうのが今度はこのコミュニティーの課題になると思うんですよ。それでね。ちょっとこれはまあまだ本当にアイデアの段階で後で使うか使わないか考えてもいいですけど、やっぱり高いお金を払ってる人と千幾らの払ってる人でモチベーションとかも違うと思うので。僕ね、これポイントをつけたらいいかなと思ってんんですよ。うんだから高いお金払ってる人が高いポイントを持っていてでそのポイントをこのコミュニティの中で使えるようにするっていう。そうすると、何か違う立場の人達だけど同じように振る舞えるじゃないかなと。そうすると、このアイディアポイントをどういう形に出すかっていうのがまだわかんないんだけど。そうするとNFTアートとNFTとそういうパーティシペーションの関係っていうのを考えると、面白いですね。ポイントは既にあるじゃん。スーパーマーケット行っても5ポイントがついて、全部ためると3千円何かくれるみたいな。すごくわかりやすいけれども。で、それを他のものと商品としか絡んでないわけだけど。今回の場合には自分が参加したものと絡んでくるので、もうちょっとその参加の度合いが深いはずですよね。ちょっとそういった思考実験してるとこです。

伊藤穰一: だから今やっぱりデジタルトークン通貨は技術的にはすごくポイントに入れてすごく面白いんだけど、何かいろんな規制があって、お金と交換すると結構面倒くさかったり、コミュニティートークンだったりできたり。そのへんはいろいろ実験のしがいがあると思いますし、藤幡さんもあれだよね。Discordでコミュニティーを僕もやってお互いに参加したりしてますけど。あれあれまたすごい何か雰囲気だよね元々ゲームのためにできてるからちょっと騒がしいけど何かハマると何か今までちょっとないテイストですよね。

藤幡正樹: ちょっとさっきのメディアアートの話に繋げて話したいと思いますけども、やっぱりEメールが出てきたときにショックだった。普通にそれでEメールのアカウントが普通の人取れなかったんですよ。どっかアカデミックのInstitutionに入るとか。テック系の企業と連絡があるとかでその次出てきたのはソーシャルメディアなんですよね。でこれはだから「いいね」を使ったコミュニケーション。それで僕はあのオープンな感じがすごく好きじゃなくて。あまりにもあけっぴろげな。それでいまだにTwitterのアカウントを持ってないんですけど。「Discordいいですよ」って前から言われてたんだけど、今回始めて始めてみて、結構そのへんがちょっとゆるいところと、引き締めるところがあって。使い方でその辺がこう微妙な甘えが調節できるところもいいなと思って。僕はもう一人でハッスルしてますけど。

伊藤穰一: いやあの、見てて楽しいです。だからこの辺も藤幡さんと多分一般アーティストの違いは何かというと、藤幡さんってガンガン自分でとりあえずやっちゃう何か藤幡さんが自分でDiscordの試しションセッティングしたり何か全部やってて。で、実は僕もまったく同じことを何か1週間前ぐらいやってて。で、すごくやっぱりそこでハマっていく人と、ああちょっと忙しいから面倒くさいやっていう人の、この違いっておっきいよね。でもあんまりいないんだよね実はアーティストで自分でDiscord設定するしたいようなアーティストなんかいないよねそれが元ですごく大切なような気がするんだけど。

藤幡正樹: それはアートの業界をどう考えるかだと思いますけど。もうちょっと嫌味なことを言うと、やっぱりその最終的には公共機関と仲良くなるんですよ。アーティストってやっぱり作ったものが社会的に認められて価値があると認められて、美術館・博物館に入るというのがある意味アーティストのこうデスティネーションだからで。そのためには結局そのその作品を収蔵するかしないかっていう判断をすることのできる人と、ある種密接な関係といってはいいですけどもそうするとどうしてもちょっとこう権威的な匂いがしてくるんで。だいたいそういう方向に向かっていったアーティストはね、どんどん黙っちゃうんですよ。喋らなくなっちゃうの。すごい保守化していて。でどういうことがもうひとつあるかっていうと自分のIDの問題があってアイデンティティこれどこから来てるんですか。伊藤さん聞いてみたいけど、アイデンティティは一つだで作家のアイデンティティーは一生を通して、一つだっていうところがありますね。例えばマグリットを見てても、マグリットは途中で絵を描くのやめたりしないんですよ。最後まで一貫したコンセプトで、一生同じ絵描いて。僕あれはできない自分に。絶対もっといろんな面白いこと彼は思いついてたはずなんだけど、やらないんですよ。これモダン近代が作ったアイデンティティを中心に据えた近代社会のロールモデルの中にアーティストが象徴的な存在としてあるから、ああなってると思う。そういうところがちょっと僕は納得いかなくて、好きなことを思いついたらどんどんやればいいじゃん。でその辺にちょっと美術の側の硬直さというのを僕は感じますけどね。

伊藤穰一: NFTの話に引き戻すと、若いアーティストに対してメッセージはありますか?このへんいじった方がいいんじゃないの。とかこの辺をいじるなみたいな。とありますか?

藤幡正樹: 少しずつわかってきたんだけど。やっぱり例えば仮想通貨にしても、いくつもの仮想通貨がありますよね。1700ぐらいあるって言ったかな。で、それはみんな違う考え方を持って、自分なりの通貨を作って広めようと思ってるわけですよね。で要するに一つに絞られないような多様性もビッグバンみたいなもんでのいろんなアイデアが今出てきてる時だから、NFTっていうものも僕、絶対単純にあの絵の後ろ側に張り付けて得るだけのものじゃないっていうのはもう完全に直感的に思っていて。いろんな使い方ができるだろうというのは僕ははじめから思ってたんですよ。でそのへんのアイデアのバリエーションっていうのがまだできてないし、それから出てきてるものも、いわゆる若いアーティストに伝わってないんじゃないですかね。だから伊藤さんのDiscordに参加してるときに、ダイナミックNFTっていう単語を使ってんだけども、NFTそのものは変化していくとか。うんそれからNFTとNFTをくっつけると別のものになってしまうとか。普通に頭で考えてできると思うんですよ。できるっていうのを超えた謎の技術だから、それによって何が変わるかっていうのをものすごいイマジネーション必要ですよね。その想像力を働かせてる間が超面白いわけですよ。それやったらいいのにみんなと思うんだよね

伊藤穰一: だから初期のテレビなんかでもエンジニアじゃないとカメラを使えなかった時代があったから結構、NHKの人ってなんかもうピシッみたいな感じで。でだんだん使いやすくなってくると。MTVみたいにバッグに入れた何か若い人が道を走り回りながら撮ってるみたいな感じに進化していくのでちょうど今ってやっぱエンジニアじゃないと思ったことを形にできないからすごく微妙なところで。で、たぶん藤幡さんも最初の頃、慶応大学でインターネットのエンジニアに囲まれてたからあれがなかったらできなかった作品も最初結構ありましたよね。

藤幡正樹: あると思います。環境はもう普通じゃなかったですからね。まずキャンパス。まず全学生がいいメール持っててホームページを作れる環境があって。だから僕のところに僕のゼミに入った学生たちと一緒にいろいろなものを作ってたんだけど彼らもやっぱり頻繁に村井さんのゼミにうん顔を出したりとかWIDEに行って聞いてくるとかそういうのがもう全然融通無限にできる学校だったから。うんそういうアドバンテージはもちろん持ってたと思いますね。

伊藤穰一: でもそこにアーティストがいたからまたそういう技術者の表現が世界にまた違う形で伝わったので何か今度はキャンパスじゃなくてDiscordかもしれないけれどもやっぱり変なテイストと技術者とかが一緒にこんなにかワイワイやるコミュニティーを作ることによってまたそういう環境を再現できるんじゃないかなっていう感じがしますよ。期待ですね。

藤幡正樹: うんだから90年代にメディアアートの世界ではアーティスト·イン·レジデンスっていうのはすごく流行っていて。アルスエレクトロニカもやってたと思うしロッテルダムのV2とかそういうところがエンジニアがいてアーティストが3ヶ月滞在して何か作るとか。で、まあ今現在でメディアアート関係でそういうアーティストのレジデンシーってちょっとほとんど意味がなくなっちゃって。全部オープンソースで出てるからProcessingと何だっけOpenFrameWorksとかで昔僕らは考えてんのことが全部できるようになっちゃった。ででもできるようになっちゃったら作品が出てこなくなっちゃったですね。

伊藤穰一: なるほどねそれ面白いね。

藤幡正樹: イマジネーションがわからなくなっちゃったんだよね。

伊藤穰一: なるほどね。難しいものがプラグインになっちゃうとあんまり楽しくないっていう感じでね。

藤幡正樹: そうなんですよね。そういうところがあってそうすると、もうちょっともうちょっとメタなところに行かないと、こう面白い場所がなくなってると思うんだけど。そういう意味でもNFTはかなり刺激的ではよくわかんない。僕まだよくわかんない。

伊藤穰一: でもそういう意味で言うとちょっと難しい時期、今がもしかしたらNFTメディアアートとゴールデンエイジが一瞬が始まる可能性はあるよね

藤幡正樹: ありますね。うーんありますね。ものすごい可能性があると思っていて。うんうん。ただそれまでのメディアアートと大きな違いはやっぱり他者が介在してこないとNFTを面白くならない。コミュニティである必要はないけど。そこにお金ではないとしてもトークンのような形で交換されるものが存在するので遥かに遥かに現実世界に近い。うんそれでだいたい工学部系の人達っていうのは引きこもりがちでこうコミュニカティブじゃない人が多いのでその辺がちょっと突破できないとアーティスト側もさっき言ったように閉じこもりがちだし難しいんじゃないかなだから言うと逆に面白いチャンスがあるしさっき言ったようなアートの意味がね何かこっそり作ったものをこっそり買ってくれる人に届けるみたいな形で良いものができると思ってるんだけど。

伊藤穰一: 僕からすると、メディアアートって買えないじゃないですか。普通の人のはナム・ジュン・パイクとか藤幡作品とか。だから、今回初めてこれお金の問題じゃなくて何かもっと参加してるよね。藤幡さんの作品を僕持ってるっていうのって。これ結構違う意味で楽しいと思うんだよね。だけどそれも始って言ったもんじゃないかなと思いますよね。メディアアートっていう意味では。

藤幡正樹: 本当にそう思います。僕はそういう意味で新しいドアが開いた感がものすごくあるんでうんそうですね。

伊藤穰一: では、楽しみにしてます。次の作品をぜひ早く作ってくださいね。

藤幡正樹: もうちょっと理解しないといけないけどね。

伊藤穰一: じゃあ、一緒に勉強しましょう。