2008年7月 Archives

最近、Facebookの日本でのサービスインに関するJapan Timesの記事で、僕の発言が引用された。

The Japan Times
2008年6月25日(水)

Facebook日本版はモデルT的アプローチを採用
LISA KATAYAMA

[...]

ベンチャーキャピタリストでクリエイティブ・コモンズのCEOであるJoi Ito氏は、謙虚さを忘れず、新興企業の心構えを保つことの重要性を指摘する。「たとえ米国ではブランド力があっても、日本では全く認知されていないと思ったほうがいい」と氏は語った。「加えて、Googleみたいに何年も何年もかけて浸透していくつもりでもなければ、持合株のある現地パートナーが必要になる」

現地パートナーなしで日本でサービスインするのは"本当に"難しい。理由は多々ある。海外のブランドは地元でのプロモーションをしない限り、日本国内ではほとんど価値をもたない。

全額出資の子会社に人材を雇い入れるのは非常に難しい。多くの海外企業は市場から撤退する。日本の企業は米国の企業よりも早く株式を公開する傾向にある。米国企業が株式公開を行う場合であっても、子会社のチームメンバーには特典がなかったり少なかったりすることが多い。現地パートナーならば、地元のチームにインセンティブを与え、現地での新規株式公開を目指すことが多い。これは誰でも知っていることだ。Googleでさえ四苦八苦して、ようやく定着しつつある。

日本でのビジネスはステレオタイプどおり、かなり閉鎖的だ。日本での市場開拓は現地パートナーなしでは非常に難しい。

eBayは単独でやろうとしてネットオークションでYahoo Japanと楽天に負け、撤退を余儀なくされて日本からいなくなってしまった。FriendsterおよびFacebookは「ローカライズ版」をサービスインしたものの、根づく気配がない。一方、Orkutに前後して登場したmixiは、いまやユーザー数1000万人を誇り、株式公開している。

Infoseek、Technorati、Twitter、Six Apart/TypePad/Vox/Movable Typeなど、我々がサービスインに手を貸したブランドはどれも日本国内ではそこそこ頑張っているように僕には思える。

現在、ジョイントベンチャーではないウェブ関連企業で日本国内で成功を収めているのは、僕に言わせればGoogleとAmazonの2社しかなく、どちらもそこまで辿り着くのに何年もの時間と多額の投資を要してきている。

下のグラフは、「facebook」というキーワードを含む日本語ブログの記事数の推移を示したものだ。

facebook.jpg
ローカライズ後、ブログでのFacebookへの言及数にスパイクが発生したが、その後は再び平坦な状態に戻ってしまっている。


僕は日本国内でのジョイントベンチャーの設立を仕事にしているので、自画自賛になってしまっているのは承知の上だけど、この文脈で上の表が興味深く思えわけだ。

今年で第4回を迎える「iCommons Summit 」が2008年7月29日から8月1日にかけて札幌で開かれる。このサミットは元々、各国のクリエイティブ・コモンズの代表が集まることを目的に始まった。でもここ数年は、あらゆる活動に関してシェアしたり共同作業したりするオープンなモデルについて、社会、教育、ビジネス、技術、芸術、法律といった観点から興味を持つ人たちが集まる世界的なカンファレンスになっているんだ。この種のカンファレンスとしては、最も学際的かつ国際的だと思う。

この分野で重要な人たちが数多く参加する。今年は、札幌市に全面的な協力を得られたことで、とても興味深い文化的な内容のプログラムが加わるはずだし、地元の人たちが大勢参加してくれると思う。

ともかく、ぼくは来週みんなに会えるのを楽しみにしている。開幕まであと1週間だけど、まだ参加登録は間に合うよ。グローバルな視点を持っているひとは、札幌が遠いなんて言わないよね。

View from my tent

FOO CampのFOOは「Friend of O'Reilly」(オ・ライリー氏の友人)の略だ。ちなみにBillじゃなくてTimの方ね。彼は毎年、少人数のグループをセバストポールに招き入れ、一緒の時を過ごして話しをする。ただTimは友人が多く、全員を呼ぶわけにもいかないから、そのことでときに傷つく人が出ることが問題だったりもする。でもこのような集まりには、それ以上大きくしすぎてしまうと生産性が落ちてしまうというサイズがあって、今くらいがちょうどいいと僕は思っている。

というわけで、難しい人選をこなし、何から何まで手配して、驚くほど楽しく、有意義な集まりを開催してくれたTim、そしてO'Reillyチームの皆さんに感謝したい。

前回FOOに参加したのは2005年だった。近くのホテルに泊まり、とてもいい時間を過ごしたんだけど、キャンプでのテント生活を選んだ今年の方が格段に楽しかった。時差ボケを気にせずに24時間続いている対話に好きな時に参加できる、というだけでも非常に楽しめた。

各セッションも素晴らしかったけど、古い友人と交わす近況報告や、新しい友達作りが何よりも楽しかった。加えて、直接顔を合わせでもしないと聞けないような超極秘の話しが聞けたのも、収穫だった。 ;-)

画像をFlickrのセットとして投稿した。ノートパソコンの補正がおかしくなっている可能性があるんだけど、黄色いテント内で作業したのでさらにややこしいことになっているかもしれない。色がおかしい箇所は修正しようと思っている。彩度が強すぎる場合は申し訳ない。

Rising Voicesとは、Global Voicesで行われている素敵な新しいプロジェクトの一つ。

Global Voicesが進める支援活動的な構想で、見過ごされがちなコミュニティを支援する地元団体に対してリソースと資金を提供することで、新しいコミュニティからの新しい発言を促し、新しいことばで世界的な対話に参加できるように働きかけていくプロジェクトです。


[...]

Rising Voicesは2007年5月、Knight News Challenge Awardの支援を得て立ち上げられ、
1)地域への支援活動に対する資金援助
2)一連の参加型メディアチュートリアルの開発
3)継続的な支援トレーニングを奨励・支援する熱意ある市民メディア活動家ネットワークの育成
を通じて、過少代表コミュニティの声をオンラインで公開するためのエンパワーリングを目指しています。

Rising Voicesチームは昨年、David SasakiとRezwanのリーダーシップの下、コミュニティやプロジェクトのオンラインへの誘致に格段の貢献をしている。

上の動画は昨年のプロジェクトのいくつかを紹介したdotSUBビデオだ。ぜひご覧いただき、登録してもらったうえで、もし皆さんの母国語版の翻訳が完成していない場合はできれば作業の手助けをしていただきたい。

Rising Voicesチーム全員に祝福を送りたい。

Solana Larsen and David Sasaki
David Sasaki


Rezwan
Photo by Neha Viswanathan - Creative Commons Attribution-Noncommercial 2.0 Generic License

LOL

ブダペストでのGlobal Voicesのサミットが終わった。あいにく僕はサミットの一般公開の前半部分には出席できなかったけど、後半の書き手、編集者、スタッフのための会議には参加した。あれだけ多くの国、地域の人が顔をつき合わせ、問題を話し合っているのは目を見張る光景だった。これに匹敵するのは国連くらいのものだろう。いろいろな人に出会えて本当に良かったし、最後のセッションなど、みんなの話を聞いて涙ぐんでしまうほどだった。

2004年の最初のGlobal Voicesの会議から、僕は、最近では理事の一員としてだけれども、末端部分には関わってきた。ウェブサイトの大いなる発展は僕自身は見てきていたわけだけど、今回の会議に参加したことで、この国際多言語ブログの活動の運用に関わるコミュニティの規模と質、そして熱意に、僕は思いきり心を打たれ、この動きの一部でいることがこれまで以上に誇りに思えている。

Global Voicesは、僕が「無関心問題」と呼んでいるものを解決するためのきわめて重要な要素だ。ほとんどの先進国では、海外のニュースを報道することに対して組織的なバイアスがある。多くの編集者は、そのことについて詰問されると、人々は世界の他の地域に関する記事はとにかく読みたがらないのだと返してくる。これは、多くの人がそれらの地域に関心を持っていないからだ。そして無関心なのは、彼らが他の国の人々を知っているわけでもなく、その声が聞こえてくるわけでもないからだ。僕は、人々の声を世界中に届けることで、お互いに繋がりを持たせ、関心を抱いてもらうようにできるだろうと考えている。

また僕は、おそらく声のほうが、選挙や銃などよりも重要だろうと考えている。過激思想に対抗する最良の方法は公衆の面前で相手を論破することであって、検閲や占拠や破壊行為ではないと信じている。世界的な対話に参加するための声を万人に持たせることが鍵となるのではないかと思っている。許可を必要とせず、報復を恐れることもなく意思疎通を図ることができ、繋がりを持てるということが、21世紀の開かれた社会の柱の一つなのだ。僕が知っている中では、Global Voicesはその最も素晴らしい一例と言えるだろう。

追記:Flickrに会議の様子を撮った僕の写真みんなの写真を投稿した。


Cross posted from Joi's Lab Blog. Post by Fumi Yamazaki.

Business Success in Open Networks- Episode #1


LinkedInJoi Labs慶應義塾大学国領研究室の合同プロジェクトとして、 "Business Success in Open Networks" という映像プロジェクトを開始しました。

LinkedInとは、米国で急成長しているビジネスSNS(ビジネス利用に特化したのソーシャル・ネットワーキング・サービス)。

2008年6月には登録ユーザー数が2300万人を突破し、ニールセンが毎月発表しているSNS利用状況統計によれば、4月時点で、前年と比較してユニークビジター数は361%も増えているといいます。6月17日には、既存投資家のSequoia Capital、Greylock Partners、Bessemer Venturesが参加した、Bain Capital VenturesによるSeries D資金調達で5300万ドルを集め、10億ドル以上の価値評価がついたことで話題を呼びました。

本プロジェクトでも活躍して頂いている折田さんが Nikkei IT Plus にて
素晴らしいLinkedInについての記事を書いてくださっているので、是非下記をご参照ください。

ビジネス利用に特化し急成長・ビジネスSNSのLinkedIn
人脈の質を保つ仕組み・ビジネスSNSのLinkedIn
日本で実名制は受け入れられるか・ビジネスSNSのLinkedIn

昨年制作した BlogTV でも LinkedIn をフィーチャーした番組を作ったので下記も是非ご覧下さい。

取材した2007年3月の時点で LinkedIn は既に黒字化しており、
社員もやる気と自信に満ちあふれており、非常に活気のある職場だったのが印象的でした。



さて、 LinkedIn は会員が実名で登録し、職務経歴を公開し、 オープンな形でのビジネスやネットワークの可能性を追求し成功してきているわけですが 日本独自のビジネス文化と照らし合わせた時に、その可能性はどのようなものなのか。

それを探る為に 伊藤穰一(Joi)氏/国領次郎氏のナビゲーションにより様々な角度から検証を行うのがこのビデオシリーズです。

Episode1では、Joiと国領先生により、「日本におけるオープンビジネス」の形と可能性やその背景にある考え方(サクセスとは何か/オープンビジネス、オープンネットワークとは何をもってオープンと呼ぶのか/米国は本当にオープンなのか等)について考察が行われました。



Episode2以降では、Joiと国領先生が聞き手に回り、毎回素晴らしいゲストの方にご登場頂き、議論を深めて行く予定です。

それでは、Episode #1の映像をご覧下さい。

 

 なお、実際の撮影は1時間におよびました。

カットした部分にも示唆に富む話題が多数ありましたので、下記フルバージョンも公開致します。

<Episode1-その1>

  

<Episode1-その2>

  

<Episode1-その3>

 

<Episode1-その4>

   

なお、ご参考まで6/30に中国でのLinkedInについてのリスクと可能性についての記事が書かれたところでした。

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LinkedIn, Joi Labs and Kokuryo Lab of Keio University has started a joint project to create a video series entitled  "Business Success in Open Networks" .

The video series will be in Japanese, so I have translated some of the essense of the video as follows.

===Business Success in Open Networks===

Episode #1   by Jiro Kokuryo and  Joichi Ito

Q: What is the purpose of this video series?

According to Reid Hoffman, the founder of LinkedIn, there is a new type of business style "Open Business Network" in Silicon Valley area. LinkedIn is an essential tool for this "Open Business Network".

The purpose of this video series is to find out whether this is possible in Japan.

Q: What do you mean by "success"?

Success can refer to personal success and business success.

Many of the successful companies recently tend to be venture internet companies and they grew with the help of labor liquidity, deregulation, innovation etc.

Open style is suitable for speedy and innovative companies, which requires professionals and the type of resource they need changes rapidly and need specialized skills.

In Japanese startups, it is hard to get those type of people because the skilled people they are locked in to the big companies and are frustrated.

We have a hypothesis that LinkedIn might be able to solve this problem.

Q: Is US model really open?

Japanese business context is more of using the brand of "big companies" compared to the US companies which has more brand of "individuals".

In Japan, reputation is made by the fact that this person is has a title (for example head of certain devision) of famous companies.
In the US, reputation belongs to individuals and what business experience he or she had.

In the US, education background (such as which university you went to) counts more than Japan and in that sense there is a question whether US really "open".
In Japan, companies counts more- especially in big companies.
For example, people puts "san" to company names or title, such as "LinkedIn-san" or "Manager-san" ("san" is like Mr. or Mrs. in English, and it is usually used to refer to names not companies nor titles. Hoffman-san make sense, but LinkedIn-san or CEO-san is odd- but are commonly used)

For individuals, liquidity of labor might be good, because even if the company is not successful, individuals can use their skills to go to next company rather than sticking to current company.

Q: Coping with risk?

In Silicon Valley, if you perform well in a certain job, then even if the company fails your friends would know you and you would be able to get into successful companies.

In shrinking economy, you need to go to growing companies which are typically global, IT, and speedy company
 which has liquidity of labor - which is similar to Silicon Valley companies.

Q:  What is "open"? Is making everything open really good?

example) Wikipedia
example) IBM- open standard, utilization of open software

Companies and individuals should have core competence. Things other than the core competence, they should open up.

Focus on the competition point, and open up the non-competitive area.
  ex) disclosing the "business process" of companies

Opening up when other company needs to keep it close
  ex) IBM using Linux (vs MS)

If you have value, you will have business model afterwards.
Companies that does not have value (but only had rights) will die.

Open business can be a strategy for the stronger ones to get stronger.  If you have core strength, the environment works better for you when it's open.

For maximizing short term profit, it is better to make things closed and control.
For maximizing long term profit, it is better to make things open and create ecosystem around you.

Q: What does "business success" mean? profit? influence? sustainability?

Influence and happiness is different.

Typical companies has life cycles (Google, MS, etc has, or had peak).
Toyota is ever-growing.
There are some companies that don't need or don't want to grow (small and happy family business etc).

Typical measurement are growth, mass-production, efficiency, public company, quarterly earnings.
However, people who don't fit those typical companies goes to Wikipedia/Linux etc and their happiness and influence is fulfilled.

Not only revenue, but strong message, value and happiness gathers good people to your company and opening up will help people's understanding of the company and attracted by you.

Communication tool- internet, social network, business network enables people to make various individual human networks.

Yvette Alberdingkthijm
Yvette Alberdingkthijm

WITNESSが新理事長を任命
ピーター・ガブリエルの人権問題NGOがデジタルメディア系の会社重役を理事長に任命

米国ニューヨーク州、ニューヨーク(2008年6月25日)-ミュージシャン兼活動家のピーター・ガブリエルによって共同設立された国際人権問題団体「WITNESS」の理事会が本日、Yvette J. Alberdingk Thijm氏の理事長任命を発表しました。

Alberdingk Thijm氏は、メディア及び新技術の分野において二十年近い経験を有し、最近ではSkypeとKazaaの創設者である、Niklas Zennstrom、Janus Friisの両氏による国際動画プラットホームJoostでコンテンツ戦略及び買収担当取締役副社長を務めています。Alberdingk Thijm氏はJoostの入社前はMTV Networks International(MTVNI)社で商務担当取締役副社長を務め、デジタル・メディア関連の試みや、オーディオビジュアルの共同制作、新規開拓、戦略的提携、共同事業など、同社の全世界(米国以外)におけるブランドビジネス及びチャネル全部門の商務を管理していました。

Yvetteは最近出会った中では最も素敵な人物の一人だろう。WITNESSの理事会で理事仲間として知り合い、世界の放送業界についていろいろと学ばせてもらってきた。

Gillian Caldwell
Gillian Caldwell

僕をWITNESSに引き込んだスーパー理事長、Gillian Caldwellが1Skyの経営に移り、WITNESSはその後釜を探し続けていた。(大きな後釜のため非常に難しい要求だ。)

Jenni Wolfson
Jenni Wolfson

その間、Jenni Wolfson率いるスタッフが、見事な働きぶりによって運営を円滑に進め、さらに改善してくれていて、我々は大いに感謝し、感銘を受けている。

Yvetteを理事会から引き抜いたのは、担当委員会による賢明な判断だと僕は思うし、Yvette自身が任命に応じてくれたことは非常に嬉しいことだ。(理事会の面々が役員になる、というのは最近のトレンドみたいだ。えー、オホン。)

クリエイティブ・コモンズ・プレス・リリース
クリエイティブ・コモンズが世界規模のケース・スタディ・プロジェクトを開始

ジョン・フィリップス、2008年6月23日

2008年6月24日、オーストラリア・ブリズベンおよび米国・サンフランシスコ

本日、クリエイティブ・コモンズ(CC)は、クリエイティブ・コモンズ・オーストラリアと共同で、「ケース・スタディ・プロジェクト」のリリースを発表しました。ケース・スタディ・プロジェクトは、注目に値するCC関連の世界中の実例を多くの人に見てもらい、また投稿してもらうための、コミュニティレベルでの大規模な試みです。クリエイティブ・コモンズは、著作権保持者が創造的作品に関する権利を明示するための無料の支援ツールを提供しています。このプロジェクトでは、作家のCory Doctorow氏、ウェブ上の動画共有サービスのBlip.tv、公開映画プロジェクト「A Swarm of Angels」など、著名な利用者がCCライセンスを使用して成功を収めている様子を紹介していきます。

これは非常に重要な試みであり、皆さんがこのリソースに貢献し、使ってくれることを願っている。CCを十分に普及させるには、企業からの支持を得てツールやインフラに組み込んでいく必要がある。CCが社会や文化のみならず、ビジネス上でも合理的であることを証明しなければならない。これらのケース・スタディは、「共有」がいろいろな面で「よいこと」であるのに加え、ビジネス面でも利点があるということを人々にわかってもらうのに非常な重要な役割を果たすだろう。

共有はプロにとっても合理的なことだと、クリエイターの方々を説得するのにも役立つはずだ。