2008年10月 Archives

クリエイティブ・コモンズでは2008年度の資金調達キャンペーンを正式に開始した。時節柄、資金集めは今とても大変で、多くの人は自分の経済状態が心配だろうと思うけど、そのような状況だからこそ、今まで以上に皆さんの支援が必要だ。

クリエイティブ・コモンズは今、定着という観点からとても大事な時期にさしかかっており、バラバラだったパズルの各ピースが集まってひとつの絵を作ろうとしているかのように僕は感じている。我々は科学、教育そして文化において、利害が衝突しない形での共有を可能にする相互運用性の、法的および技術的な側面で、大幅な進歩を果たしてきている。あらゆる分野で大きな影響を与えると思われ、その影響は万人におよぶだろうと僕は考えている。

今年のキャンペーンには趣向を凝らしたひねりがある。ご存じかもしれないが、我々は著作権レジストリというアイデアを模索しつつある。そのようなレジストリの鍵となる要素の一つがユーザー認証だ。我々は、誰かがクリエイティブ・コモンズに寄付をするときに、基本的な認証がされていることに気づいた。またクリエイティブ・コモンズが信頼されるひとつのブランドになっていることもわかったので、このキャンペーン中に寄付をしてくれた方々全員に、クリエイティブ・コモンズのOpenIDを配布するというアイデアを試すことにした。この企画が具体的にどのように発展していくのかはまだはっきりとはわからないけれど、皆さんがどのように感じるか、この方法で何ができそうかについてフィードバックをいただければ幸いだ。詳しくは本日後ほど、ブログに書くけれど、OpenIDに加えて、ライセンス関係でちょっとしたものも企画してある。寄付をすればOpenIDをお試しいただける。 ;-)

我々はこれ以外にもビデオプロジェクトを発足させ、皆さんがどのようにクリエイティブ・コモンズを利用し、どのような理由でクリエイティブ・コモンズを支持しているかを説明した90秒間の動画を募集することにした。これもとても面白いと思うので、是非参加していただき、また、いい話をしてくれそうな知人の方々の耳にも入れていただきたい。前の投稿でも書いたけどJesse Dylan氏がクリエイティブ・コモンズに関する素晴らしいショートビデオを作ってくれた。これが皆さんの刺激になればと思う。なお、この動画は、皆さんがストーリーを作る際、自由に転用、リミックスしていただけるということをお忘れなく。

年末までに50万ドルの資金を調達する必要がある。企業の方々で、マッチングギフト・プログラムを試したいとお考えなら、それもいいと思う。是非ともお力添えいただければありがたい。

詳細な情報は、クリエイティブ・コモンズ・ネットワークJesse Dylan氏のビデオに関するプレスリリースを見てほしい。

今年で4回目となる「NEW CONTEXT CONFERENCE」を11月5日と6日に恵比寿ガーデンホールで開催する。今回のテーマは「オープン・ネットワークが生む「ポストWeb2.0」 ―インターネットビジネスの舞台裏―」にした。企業や国といった枠にとらわれず、人材やソフトウエア、サービスがそれぞれのレイヤーで連携しあう「オープン・ネットワーク」に焦点を当て、インターネット・ビジネスの第一線で活躍する日・米・欧のスピーカーたちにその思いを語ってもらう。事前登録制で参加費は無料だ。

 プログラムはこちら。各セッションではテーマに合わせて各スピーカーに語ってもらった後に、僕の司会でパネルディスカッションをして議論を深める。

 それでは、会場で会おう。

300_300.gif

From Fumi Yamazaki: LinkedInJoi Labs慶應義塾大学國領研究室の合同プロジェクトとして行っている、 "Business Success in Open Networks" の第3弾映像を公開しました。

Episode1では伊藤穰一(Joi)氏/國領二郎氏により、「日本におけるオープンビジネス」の形と可能性やその背景にある考え方(サクセスとは何か/オープンビジネ ス、オープンネットワークとは何をもってオープンと呼ぶのか/米国は本当にオープンなのか等)について考察が行いました。
Episode2では、Joiと國領先生をホストに、新生銀行の八城政基様に日本のビジネスの閉鎖性やエクソン社での人材育成方法についてお話を伺いました。

Episode3 では、Joiと國領先生をホストに、マネックスの松本大さんにお話を伺いました。松本さん、貴重なお話をありがとうございました!

早速映像をご覧ください。




<今の日本について:問題はヒエラルキー>

(松本)今の日本企業の問題は、ヒエラルキーが上がらないと力を持てないこと。「上から下に」譲るのであって、「下克上」はない。下の人は上に行くまでは発言しない(発言力がない)が、上に行ったときには価値観がおかしくなっている。

<「パラダイス鎖国」な日本>

(國領)「パラダイス鎖国」という書籍があるが、このタイトルに象徴されるように日本は変にcozy(居心地がよい)でパラダイスなことが問題。

(松本)日本では、外からは発言が届かない。中にいると発言が許されない。だから、エッジ(へり)で努力している。「最大の旧体制は自分の中にある」と自分に言い聞かせている。

<エッジをきかせるために気をつけていることは?>

(松本)人も会社も必ず古くなっていっており、死に向かっているものだ。だから、常に新しい物を入れないといけない。

(Joi)大企業をやめてベンチャーに来ても、頭の中だけがベンチャー/エッジ/シリコンバレー/アヴァンギャルドな人がいる。人は簡単には変わらない。

<マネックス社のロードマップを作ってわかったこと>

(松本)マネックスの10年プランのロードマップを作った。

まずトップダウンでフレームワーク(価値観/10年後のビジョン)を作って全社員に説明し、それを模造紙に貼った。テクノロジー/サービス/人事等についてのマイルストーンが書かれている。そのマイルストーンの間を社員がポストイットでどんどん埋めていく。 マネックスの社員は160人だが、400枚ものポストイットが貼られた。そのうち、4割程度を残して作り直して、社員全員にフィードバックした。

トップダウンで出したフレームワークは、ストレッチな物だった。それに対して経営層は「無理がある/社員がついてこないのでは?」という反応だった。しかし、逆に若者達は「面白い!できる!やろうぜ」という反応だった。それが逆流して、上の人達もノッてきた。

上の人達も元々はフォワード型の人のはずが、立場等でブレーキ体質になって しまう。バランスを崩そうとするCEOに対して「それは駄目です!」と言 い続けた結果、ブレーキ体質になってしまう。ところが下からくると、ノってくることがわかった。


 <日本社会は世界で最もクローズド?>

(Joi)日本人は今後変わっていくだろうか?

こういう仮説がある。アメリカはオープンネットワークなので誰でも入れるし誰でも出て行けるため、「信頼に足る人物かどうか」の チェック機能が働く。いい人は残して悪い人は排除する、循環があるネットワーキング。例えば外資系企業だと、会社の名前よりも「個人の信用度」が重要視される。

日本はクローズドネットワークなので逃げることができず、罰することができるため、信頼は必要ない。社員を会社の中にロックインして逃げられないようにすれば、個人の信頼は必要なくなる。そういう仮説。

マネックスは日本型?アメリカ型?

(松本)マネックスの企業文化は日本型ではない。ただし、日本という国の閉鎖性は非常に強く、一人一人の個人の中にその閉鎖性は存在している。

日本は世界で最もクローズドなネットワーク、クローズドなコミュニティ。双方向の意味でホモジニアス。世界中で日本人はほぼ日本にしかおらず、日本の中にほぼ日本人しかいない。

ただし、国全体が少しずつ変わってきていると思う。

<「お上」依存が薄れ、変わりつつある日本>

(松本)日本はオーソリティに対する考え方が強いが、近年「お上」に対する信任が落ちてきている。例えば保険料を若者が払わず、「どうせ年金はつぶれる」と考えている。会社に対する考え方もかわってきている。かつては金融機関はつぶれないと考えられていたが、長銀、山一がつぶれた。オーソリティに対する依存度が薄れてきており、オープンネットワークにアシュアランスを探さざるをえなくなるだろう。

<人材は供給が需要を作る>

(國領)戦時中の巨大産業(中島飛行機等)が戦後解体され、基礎的技術力はもっているが自由になった人たちが、浜松等でネットワーキングをしてホンダ等を作ってきた。金融業界は山一、長銀等のOBがスオピンオフして面白いことをやっている。

(松本)人材は供給が需要を作る。シリコンバレーも東部の金融でボコボコになった、ファイナンスの知識がある人たちが起業していった。

(Joi)当時と今との違いは、当時はパラダイスと勘違いできない程焼け野原だったことと若い人が残っていたこと。今はパラダイスと思っている人がいる/高齢化の2点が問題。


 <5年後、日本は変わる>

 (松本)日本が変わらない理由は戦後の成功体験。官僚/政治家/プライベートセクターみんな、第二次世界大戦後、焼土と化したところから世界一位へ成長した体験を持っているため、ちょっと悪くなってもあれだけできたので大丈夫だと思っている。

そのような人は5年後にはいなくなっている。終戦時10歳の人は5年後には80歳になる。CEOのジェネレーションチェンジが起こり、政界/官僚も変わる。成功体験者がプレイヤー層にいなくなる。

先日若い社員と話していたら、「僕は産まれてから一度も日本がすごい国だと思ったことがありません。」という。そのように思っている、成功体験に縛られていない子達は、普通に競争するだろうし、オープンネットワークでないと勝てないなら普通に取り入れるだろう。

<ベンチャーではなく研究所に流れる日本の技術関連資金>

(Joi)技術者に流れるお金は、電話会社経由で研究所に流れるお金が多い。インターネットの世界では、例えばGoogleはAdSense等のインターネット広告によって、5000億以上のお金をベンチャーの原資にした。日本でモバイルEコマース等の1000億規模の資金は研究所に一旦入った物を吸収する形になり、イノベーションやベンチャーにつながらない。ネットがモバイルに行くとベンチャーに流れるお金が減るのではないかと懸念している。

<次の世代へ>

(松本)アメリカだと、上司は「お前がやれ」、国際会議も「お前が行け」という。日本だと、国際会議は同じ人が行く。「次の代に任せよう」、「任せて自分も恩恵を受けよう」という発想ではなく、全部自分で刈り取ろうとする。

日本は老人が楽しい社会にするべき。今は、上に長く残らないといい思いができず、下が迷惑を受ける社会。 子供や孫もパッケージにした考え方を提示すべき。「あなたがこうすると、子供/孫はこうなっちゃいますよ」と。

<人材は「人づて」で探す>

 (國領)人の流れはどうすればよくなると思うか?仮説としては個人レベルの信頼のネットワークがポイントなのではないかと考えている。

 (松本)人の探し方は、結局人づて。リスクを落とす最大の方法は推薦/レファレンス。「自分にとっての目利き」(この人の推薦なら信用する)はいる。自分が人を紹介してもらう時も誰に紹介してもらうかが重要だし、自分が会う人も誰に頼まれたかで会う人を決める。

<松本氏の夢の組織論>

 (松本)夢の組織は、「若くても偉くなる」というだけではなく、「年をとった人が同じ組織の中でポジションが下がる」組織。

経験/知識がある人がいるのに、年をとったら止まっているかやめるかしかないのはもったいない。35〜40歳過ぎたらポジションが下がってくる人が多くなると、心理的抵抗がなくなるのでは。

家族では、親が子供に「お前の代だから」と譲り、親父は手伝いをすることもある。これを企業でもできると、人材活用方法としてはローリスク、ローコスト、ハイリターンなのでは?アメリカ的能力主義とは異なる能力主義が作れるのではないか。


Sequoia Capitalは、彼らの投資先企業のCEOたちにこのプレゼン資料を送った。とてもよくできているので、僕も自分がかかわる会社のCEOたちにぜひ見てほしいと思っている。

この状況で重要なことは、ともかくパニックに陥らないことだと思う。現在の優良企業のなかには、こうした不況の中から生まれてきたものが少なくないことを思い出すべきだ。実際、僕が投資しているいくつかの優れた企業は、前回の不況の真っ只中で産声を上げた。投資家の視点に立てば今は、起業家たちがこの大変な時期をどう乗り切るかをじっくり観察できる機会ともいえる。もちろん投資家たちが、不況の中でどのように振舞うかを知ることもできる。

僕自身のこれまでの経験でいうと、ベストな個人的な関係のいくつかは不況の時期に生まれた。.

明らかに状況は困難になってきていて、多くの人々にとっては苦痛を伴うことは間違いない。しかし、僕はこれを「本来の姿」に戻る絶好の機会だと捉えている。

忘れないでほしい、パニックに陥らないことを。.




1990年代の初め、日本の建設投資は全体で国民総生産(GNP)の18.2%を占めていた。イギリスは12.4%、米国は8.5%であった。日本はGDPの約8%を公共事業に費やした(米国は2%)。2000年までには、日本はGDPの約9%を公共事業に費やすと推計されていた(米国はわずか1%)。その間10年で、公共事業にあてられるGDPの割合が、米国のそれの10倍近くにまで増加していたのだ。

建設業にまわされる巨額の補助金を加味すると、国家予算全体の支出のなんと40%もが公共事業に使われていることになる(米国は8%から10%、イギリスとフランスは4%から6%)。

1998年までには建設業界は690万人を雇用するに至り、これは日本の労働人口の10%を超え、米国や欧州での割合の倍以上の数値であった。日本では、公共事業契約から間接的に派生する職を含めれば、5つに1つの職が建設業界に依存すると専門家は推計する。

1994年には、コンクリートの国内生産量が米国の7790万トンに対し、日本国内では9160万トンであった。これは平方フィートあたりでいえば、日本は米国の30倍もの量のコンクリートを敷設していることを意味する。

20世紀末までに、(...)コンクリートで固められた海岸線の割合は60%を超えていた。

米国では有害であるとして規制されている物質が1000種類以上もあるのに対し、日本では1994年の時点で政府の規制下にある物質はわずか数十種類であった...。



日本は教育よりも道路に、医師の人件費よりも病院の建設に金をかけている。日本の建設と政治は非常に密接に絡み合っている。新たに就任した首相がセメント大手、麻生セメントのファミリーの出身で、元社長であるというのはおもしろい。個人的には麻生太郎首相に恨みもはたまた支持する気持ちもないけれど、こうもあからさまだとね。 ;-)


Goodbye letter from Lehman Brothers

「ちょっと待てよ。投資銀行って本当に今でも必要なのか。」

突然沸き上がったこの疑念は、情報と、安価な取引費用さえ確保できれば無用の長物と化す金融サービス/商品の一大ジャンルが崩壊する、そのいわば氷山の一角なのではないかと思える。

金融デリバティブやリスクを証券化することは他の人もそれを買えるようにするということで合理性はあるのだが、大きな企業が人件費に大枚をはたいてその事業に取り組むのは、本来の価値より高く売れる商品を作り出すためだ。規制はあるものの、リスク情報の案内は省略され、買い手/ユーザーに完全な情報や安価な取引費用を提供することよりも、商品を売ることに焦点が当てられている。一方で情報はむしろ隠され、管理費から取引費用まで、取引に関する利害の衝突はそこら中にある。

このような手作りの市場は、取引費用が高額で、これら一連の事項をまとめて管理していた時代には合理性があったものの、今は、よくよく考えてみると、理にかなっているとは言えなくなってきている。

このことは学術系の出版社にも言える。出版社は教授たちの論文を学術誌に掲載する際に金をとり、読み手側である教育機関や図書館からも購読費用をとる。教授たちが望んでいるのは、論文が可能な限り広く読まれることだ。インターネット以前の時代であれば、上記のような出版の形には合理性があり、高額な費用(物理系学術誌1誌だけで1万ドルを超える購読費)を支払う価値もあった。図書館に物理的に印刷物を届けることが、自分の論文を各教育機関に確実に配布する唯一の方法だったからだ。しかしインターネットが普及した今、もはやその流れは合理的とは言えなくなっている。現状では著作権つきの文献を閲覧するには購読が必要なため、学術的な著作物の大部分が発展途上国や学会外の読者層にとっては暗闇の中となってしまっている。

かつては非常に重要であった産業やサービスには、今日の我々の、低価格で、デジタルでつながった世界という現実に面と向かうことができていないものが多くあるように思える。

金融サービスの分野においても、消えて無くなるものはまだまだたくさんあると僕は予想している。僕自身最安の為替レートを求めて取引銀行を次から次へと替えていく中で、なぜ外国為替のようなものが、利害の衝突を減らし、情報を増やして行われないのか、まるで想像がつかない。どの銀行も法外なレート/スプレッド/取引費用を請求してくるけれど、僕にはそれを回避する意志と能力がふんだんにある。正直なところ、銀行が行う業務の大半は銀行抜きで行えるように再構築することが可能だと確信している。

僕が思い描けるのは、Web2.0の金融サービス版のような利用者の金を保管するPayPal的なサービスや、多くの国際的なプロバイダがありとあらゆる金融取引を提供している図だ。これは競争を促進させて質の向上、価格の低下へと繋がり、各々独立した形で、あなたが適切な判断を下す手伝いをしてくれるアナリストや情報提供サービスからなる業界が形成されるだろう。ちょうど消費者系インターネットサービスの多くがオープンスタンダードや規格などのまわりに集まっているようにこれらを全て統合できれば、コストをごっそり削減し、また、助言をしてくれる連中が一方ではあなたの取引から利益を得る-という歪んだ利害関係も排除できるのではないだろうか。

もちろん規制やサギ対策は必要になるだろう。でも技術を理解していない、給料をもらいすぎている重役連中を役人組織に監督させておくよりも、もっと効果的な方法がきっとあるはずだ。

銀行に勤務している友人たちには先に謝っておきたい。銀行がなくなるとは思わないけれど、競争から身を守るために伝統的な概念や政府による規制に頼るのではなく、技術の変化に積極的に適応し、自らの存在意義、また人々がどのように銀行を必要としているのかをもう一度自問自答すべきだと僕は思う。我々がごく最近目の当たりにしたように、物事は瞬く間に変化しうるのだから。

僕は銀行家でも経済学者でもないので見当違いかもしれないけれど、素人なりの考えをまとめてみた。