この記事のポイント
iPhoneのHDR (ハイダイナミックレンジビデオ) で撮影した動画は、Premiere Proで編集すると白飛びしてしまうことがあります(現行のiPhoneでは、デフォルトでHDRモードで撮影されます)。この白飛び問題は私を多いに悩ませました。どうやらiPhoneユーザーであるYouTuberも同じ問題を抱えているようです。これを回避する方法としてYoutubeに複数動画が上がっていましたが、正直あまり役に立たないものばかりでした。その多くがプラグインやLUTの販売を勧めるものだったからです。2023年2月に、Adobeはトーンマッピングの機能を追加してこの問題を解決し、これらの「修正」のほとんどがもはや役に立たなくなっています。
では、iPhoneで動画を撮影するYouTuberはどうすればよいのでしょうか?ここでは、詳しく、画像付きで説明していこうと思います。
新型iPhoneでは、より広い「色域」を持ち、白がより白く、色の範囲が広がり、通常のモニターやStandard Dynamic Range (SDR) のビデオよりも鮮やかなビデオを作成できる、High Dynamic Range (HDR) の動画をサポートしています。
問題は、すべてのカメラ、エディタ、ディスプレイがHDRをサポートしているわけではなく、編集ソフトなどのツールに至ってはようやく一部がHDRをサポートし始めたばかりであることです。
色空間(カラースペース)はデバイス間で一貫性を保つために標準化されています。ビデオの一般的な色空間標準はRec. 709で、これはAdobe Premiereがデフォルトで使用するものです。HDRをサポートする色空間としてRec. 2100というものが存在しています。これは、Rec. 709とは異なるより広い色空間となります。iPhoneでHDRを採用した状態で録画すると、Rec. 2100で録画されることになります。
問題は、Premiere ProのタイムラインがRec. 709に設定されていることです。この状態でRec. 2100で録画された動画を追加すると、色空間が大きすぎてRec. 709に「収まらない」ため、画像が白飛びして色飽和したように見えることでした。この場合、Rec. 2100をRec. 709に「マップ」して色空間を縮小してRec. 709に収まるようにするか、色空間をRec. 2100に設定してビデオ全体をRec. 2100で編集する必要がありました。
通常のディスプレイ設定(大半のコンピュータはデフォルトでsRGBに設定されています。これは、コンピュータのRec. 709に相当)でRec. 2100のシーケンスを編集しようとすると、Rec. 2100の画像がディスプレイ上で白飛びしてしまい変に見えることがあります。このため、多くの混乱が生じているようです。(実はこの場合、シーケンス上では正常に動いているのです)。Rec. 2100のビデオを適切に編集するためには、プレビューモードでRec. 2100の設定をマップまたは認識するようにPremiereでディスプレイを設定する必要があります。
また、書き出し時にも注意が必要です。シーケンスをRec. 2100に設定し、編集のプレビューをRec. 2100に設定しても、書き出し時にRec. 709に設定されていると、エクスポートされたファイルには同じ白飛びした画像が表示されることになります。適切なHDRビデオを作成するためには、HDRをオンにして撮影し、シーケンスがRec. 2100に設定されていることと、書き出し設定がRec. 2100に設定されていることを確認することがポイントとなります。Rec. 709(通常のビデオの色空間)で編集および書き出ししたい場合は、トーンマッピングをオンにし、シーケンスとエクスポートをRec. 709に設定します。
幸いなことに、トーンマッピングをオンに設定すると、シーケンスに追加するビデオは自動的に編集する色空間にマップされます。また、クリップから新しいシーケンスを選択すると、シーケンスは正しくクリップの色空間にデフォルト設定されます。
iPhoneのHDRビデオをYouTubeまたはVimeoに投稿する方法
Premiere Proの設定->一般に移動し、ディスプレイカラー管理と拡張ダイナミックレンジモニタリングがオンになっていることを確認します。これは、PremiereでRec. 2100 HDRビデオを適切に表示するために必要です。これらを設定しないと、編集しようとすると白飛びして見えることがあります。
HDRをオンにしてビデオを録画し、例えばQuickTimeでチェックすると、色空間がRec. 2100と表示されるはずです。(この画像では転送関数:ITU-R BT.2100 (HLG))これをPremiere Pro 23.2またはそれ以降にインポートします。
このクリップを右クリックし、「クリップに最適な新規シーケンス」を選択します。
プロジェクトパネルでシーケンスを右クリックし、「シーケンス設定」を選択します。
「作業カラースペース」がRec. 2100 HLGであることを確認します。(HLGはハイブリッドログガンマを意味します。)ビデオプレビューのコーデックはApple ProRes 422 HQであるべきです。これはHDRをサポートする圧縮標準(コーデック)です。これは、シーケンスがHDRメディアと同じ設定であることを示しています。ソース解像度によっては、サイズはHDまたは4Kになるかもしれません。
書き出しに移動し、フォーマットとしてQuickTimeを選択し、カラースペースがRec. 2100 HLGに設定されていることを確認します。(iPhone HDRビデオ用のAppleのデフォルトはRec. 2100 HLGですが、インターネットに投稿するためには、Rec. 2100 PQの方がおそらく良かも。 )
これを書き出ししてYouTubeやVimeoにアップロードすると、プラットフォーム側がHDRであると認識し、動画を表示することができるユーザーに対して高輝度範囲で表示されます。設定ギア上で「HDR」を表示します。VimeoとYouTubeではHDR部分を処理するのに数分かかることがあります。
YouTubeとVimeoにある私のサンプルビデオをご覧ください。例えば、HDR互換ディスプレイで表示している場合、ビデオの白がウェブページの白よりも明るくなっているかがわかるかと思います。(HDRの埋め込みは私にはうまくいかなかったようです。)
HDRを使わず通常のビデオを書き出す場合
シーケンス設定の作業カラースペースがRec. 709に設定されていること、そして自動トーンマッピングメディアがオンになっていることを確認してください。
次に、書き出しの設定でRec. 709を選択することを忘れずに確認するようにしてください。それではEnjoy!