2008年5月 Archives

モバイルでのインターネットについては、僕が話した人のほとんどは大いにこれを歓迎している。日本政府は2006年、携帯電話でインターネットをする人のほうがコンピュータでインターネットをする人よりも多いと、誇らしげに発表した。オンラインサービスはこぞって「モバイル戦略」を語り、ベンチャー・キャピタルは最新のモバイル系新興企業に群がっている。

モバイルや、モバイル用の新しい優れたアプリケーションやデバイス自体、何の問題があるとも思わない。けれどここで忘れてならないことは、実際に機能しているモバイルネットワークのほとんどは、規制されたもしくは非公開の技術を多く用いる少数の携帯電話会社が運営しているインフラがその基盤になっているという事実だ。

新興企業主導の革新に勢いがあるのは、インターネットが本質的にオープンな場だからだ。誰も許可なしで参加できて、皆が全ての階層において誰とも競争できる場所なのだ。(一部の半独占例を除けば)この公開かつ自由な競争というDNAがあるからこそ、Googleのような新興企業が現れて下克上をなし遂げたりできるんだ。もしインターネットがなければ、電話会社らは間違いなく、自分たちで「オンラインディレクトリ」を設計して運用することが最も効率的だと気づいていたはずだ。

市場内で規模を拡大し、独占的な位置づけにまで成長したとしてGoogleを批判することは可能だが、Googleの収益の相当部分は新興企業に、あるいはMozillaのような非営利組織にも資金として還元されている。Googleは多くの会社を買収したり、主にオープン型のプラットホームを作っている販売会社から備品を購入したりしている。

一方、携帯電話会社の収益の多くは、肥大化した部内の研究開発や、電話会社用の部品を生産する少数の販売会社に対する部品の購入費用として費やされている。

日本では2006年に、コンテンツ(着信音、着うた、ゲーム)系の22億ドル、商業の47億ドルに対し、モバイル広告の市場は僅か3億3千万ドルであった。
(http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/whitepaper/eng/WP2007/2007-index.html)
誰もがモバイル広告を試し、モバイルで広告は増えているものの、モバイルデバイスに費やされた資金の大部分は、少数の提供元からの、さほど革新的でもない少数の製品への支払いや回収に使われている。

僕は別に電話会社を非難しているわけではない。電話会社はほとんどの国で、入札によって大変な契約額で帯域を獲得し、その重荷を背負った状態で事業を運営している。また、ほとんどの国で厳しい規制を受けている。通常、政府によって認可された少数の企業であることが規制を受けやすく、それゆえにコストが拡大し、競争が減弱するという結果を招いている。

例えば、日本政府の中には「若者を有害コンテンツから守る」ためにコンテンツのフィルタリングを実施しようという動きがある。インターネットのほうでは、ネット上のコンテンツを規制するようなこの種のフィルタリングシステムと戦おうとしている。その一方でモバイルのインターネットについては、政府は素早く携帯電話会社に未成年者用のコンテンツフィルター適用を強要し、すでに日本ではこれが適用されている。モバイルのインターネットは、悪い奴らや目障りな新興企業、阻害要因に抗して、政府が規制や操作により「安全」にするのが遥かに容易なんだ。

人々は『モバイルがオープンになりつつある』一例として、ハッキングされたiPhoneの例を挙げたがる。僕はそれ自体は賞賛するし、自作のアプリケーションをiPhoneで走らせることができるようになったことは素晴らしいと思う。けれども携帯電話会社の選択においてはどうだろう。
『おめでとう、AT&Tの代わりにVodaphoneかSprintを選べるようになったぞ。』
これではまだ、『携帯電話会社の部分ではクローズド』という根本的問題が解決されているとはいえない。

短期的には、e-mobileのような仮想移動体サービス事業者が価格低下に貢献するだろうけど、それらにしても競争にオープンとはいえない基盤の上に作られたものであるため、価格の低下には限界がある。長期的に必要なのはオープンな帯域構造と、3G以外の選択肢だ。

日本ではMixiなどのサービスが、ウェブ経由の使用が減少傾向にある一方でモバイル経由での使用が増加傾向にありウェブよりもモバイルからサービスを利用するユーザーが増えつつある、と発表している。僕が思うには、モバイルは(企業側にとって)ウェブほどには儲けがないんじゃないだろうか。モバイルへの移行を急ぎすぎてしまうと、インターネットで慣れ親しんでいるDNAとは異なる基盤を土俵にすることになってしまう。さらに重要なこととして、その場合、儲かったお金は、それを新興企業にではなく巨大な販売会社系の食物連鎖の中に環流させてしまう人々の懐に入ってしまうことになる。

ひとつの考えだけど、モバイル分野で先見の明があるVodaphoneやNokiaのような会社が、モバイル上のオープンな革新に投資するための基金を設立したらいいかもしれない。モバイル生態系が健全である場合には少なくともその生態系に参加している大手企業にとっては、インターネットが電話会社の市場を全体として拡大させたように、長期的に見てより有利である、という主張は十分になしうるものだ。まさに石油大国が代替エネルギーに投資しているのを連想してしまう。

このような動き(民間企業による基金設立)が実現するならそれは素晴らしいことだし、喜んでお手伝いしたいところだ。 ;-)

本日、我らがクリエイティブ・コモンズは著作権レジストリ(登録システム)実現の可能性を探っていくことを発表した。

レジストリが実現すれば、現在悩ませられている様々な問題点が解決できる可能性がある。例えば、作品を商業利用したい場合に誰に連絡をとればいいかがわからない、という"孤児作品"の問題が解決されるかもしれない。レジストリにより、クリエイティブ・コモンズの根幹を成す一要素である帰属の確認が容易になる。レジストリはまた、ユーザーによるコンテンツ投稿を可能にしているサイトが、権利を整理・明確化する一助となるかもしれない。

レジストリシステムを具体的にどのような構造にすべきかはまだはっきりとしておらず、かなりの検討と工夫が必要だ。モデルの一つとして、別途完全に新しいものを作り出すのではなく、著作権局が使っているような既存のレジストリを元にするというのがある。また別の案としては、複数のレジストリによる連盟体制とし、何らかの方法で相互に情報交換をするプロバイダのネットワークに管理させる手もある。僕らには機械読み取り可能なライセンスや、メタデータ、さらには互換性のあるライセンスの世界的ネットワーク構築に関する経験があるため、このようなレジストリシステムの設計や、もしかすると運用についても、僕らなら付加価値を付けることができるのではないかと考えている。

賢明なる読者の皆さんは、僕らがプレスリリースの中で、エイティブ・コモンズが収益性のあるサービスを提供する可能性を探っていくことに言及していることに気づかれるだろうと思う。この点に難色を示す方々もいると想像できるので、このあたりのことについて少し説明しておくのがよいだろうと思う。このことは我々が取り組んできたいくつかの問題に関わる話しだ。

去年クリエイティブ・コモンズについてPierre Omidyarと長話をした際に、彼の提案の一つに次のようなものがあった。非営利組織が一般大衆に対し敏感であるには、単に寄付金や財団などから出資を受けているよりも、課金を伴う何らかのサービスを提供していたほうが効果的だということだった。彼の説明によると、eBayが課金を開始した際には、コミュニティ側はフィードバックで彼らの希望をそれまでよりもはるかに声高に主張するようになり、彼もその要求に対し責任感を感じ、敏感に反応するようになったということだった。無料でサービスを提供できるのは素晴らしいことだが、課金サービスも含めることでサービスの品質と即応性について両者とも基準がより高まるということだ。僕はこの「課金型付加価値サービス提供による市場感応度向上」という概念についてこれまでかなり考えてきていて、僕らが今後も探求していくべき要素だと思っている。

僕らは現在、財団・企業・個人の方々からクリエイティブ・コモンズの使命にと寛大な寄付をもらっている。今後5年間のための重要な支援をとりつけることができており、それが僕らの強固な足場となる。しかし僕はこの支援体制を、付加価値のサービス提供により得た収益をもってさらに強化することを検討すべきだと考えている。

とはいえ、クリエイティブ・コモンズが貪欲な営利企業ではないからこそ手を貸してくれているユーザーおよび出資者たちのコミュニティによる、広範な支援に助けられているのも事実だ。無料かつ公開されたライセンシングツールの提供というクリエイティブ・コモンズの根幹的な使命に引き続き焦点を置きつつも、収益性のある追加サービスを提供することがクリエイティブ・コモンズの提供する無料かつ公開の共用インフラを維持する一助となるような可能性を探っていくことが僕には非常に重要に思える。その際に、バランスがとれた透明性の高い中立的組織という我々のポジションを弱めるような、もしくはそのようにとらわれかねない行動を避けることは基本だと考える。

プレスリリースの内容を繰り返すと、クリエイティブ・コモンズはこれからも無料でライセンスを提供し続ける。加えて、著作権レジストリもしくはレジストリのネットワーク構築という案を検討するなかで、何よりも技術的におよび運用上も堅固なシステムをデザインするプロセスに参加できるよう、最大限に努力していくつもりだ。クリエイティブ・コモンズはただ収益を得ようとシステム内に自らを含めようとするわけではない。考え方としては、仮に、システムの一部を運用するということであったり、ユーザーや企業が有料で利用したがるようなサービスをシステムに提供することであったりなど、クリエイティブ・コモンズがその役割を担うことが相応しいと我々が考えるものが出てきた場合には、僕らはそれについて課金モデルが合理的かどうか検討するだろうということだ。

Boing Boing TVに動画付きの記事があがっている

田舎に引っ越して以来、Flickrやブログでウチの竹の子について写真や日記を投稿してきた。今年第一回目の竹の子投稿をした後、Xeniが僕に連絡してきてくれて、動画を作るように勧められた。そこでMizukaに手伝ってもらい、竹の子を採って料理する様子を短い動画にしてXeniに送った。

Xeniのチームが動画を編集したくれたうえで、BGMとしてこの竹の子の動画に合うCreative Commonsライセンス下の音楽があれば素敵だと打診してきた。そこで過去に作ったものを掘り返してみたりオンラインで探し回ってみたりしたものの、竹の子料理の動画に合いそうなものはみつからなかった。

Keigo(コーネリアスの小山田圭吾)に相談すると、「竹の子? 坂本龍一さんが適任なんじゃない?」と返ってきた。そこでRyuichi氏本人に竹の子料理動画に使ってよさそうな音が余ってないか尋ねてみた。動画を見てもらったところ、Ryuichi氏が面白がってちゃんとした曲をつけてくれることになったのだ。

作曲をしてくれたRyuichi氏に大感謝。またこの件を動かしてくれて、編集をしてくれたXeniとBoing Boing TVの皆さん、そしてファイルをキャプチャして送ってくれたFumiにも感謝。すごく楽しかったよこれは。

坂本龍一氏との出会いについては以前ブログに書いた。

Skype
日本のインターネットの父、Jun Murai(村井純)氏と会議中

今日、日本のインターネットを生み出したWIDEプロジェクトが二十周年を迎えた。
Skypeのおかげで僕は同時に2カ所に存在することになり、英国にいながら日本国内のパネルディスカッションに参加できた(Mac用のいいH.323クライアントはないのだろうか)。たしかVint Cerfもテレビ参加していたと思う。僕はホテルにいるわけなんだけど、ホテルのwifi経由である割には、思ったよりも遥かにちゃんと機能してくれている。もっとも、Googleの魔法で接続がバリバリに強化されているのだろうけれど。(今僕は、英国でGoogleのZeitgeist会議に参加しているところだ。)

あちこち飛び回るのをやめて、こういったイベントにテレビ会議の形で参加するのも手かもしれない。もっとも、旅をしなければいけないのはそのままで真夜中にパネルディスカッションに参加する回数が増えるだけ、といったオチもありえる。

テレビ会議が別に新しいものじゃないのはわかっているけど、僕が記憶していたよりも簡単で敷居が低いと感じた。

ここ数年の間に、僕自身、ブログへの投稿が少しずつ滞るようになり、中断寸前にまでなった。そこで原因の分析を試みた。

興味のある事柄全てについて書き終えてしまったのか? ただ単にブログに飽きたのか? 自分のブログのサイトのツールとデザインに飽きたのか? はたまたWorld of Warcraftのほうで遊びすぎなのか? はっきりとはわからないが、おそらくこれらの要素の組み合わせだったのだろうと思う。

また、ソーシャルネットワークのソフトウェアツールやそのための会議、またそれらを話題にすることさえも、嫌気がさしてきていたようなところもあった。

去年のいつ頃だったか、Anilと話していて、彼がMovable Type version 4について心底胸躍らせていることを知った。彼はその新しい機能の一つ一つについて、またSix Apartのスタッフらがその件でどれほど盛り上がっているかについて説明してくれた。そもそも僕が知る限りAnilが何かに熱中すること自体久しぶりのことだし、何だか僕もつられてしまった。サイトのリニューアルについてはBorisとの間でかなり前からやろうという話は出ていたので、このMT4を機会にやることにした。

MT4は確かにまだいくつか詰めの甘い箇所があるけれど、大幅に改善されてきてはおり、僕は大いに満足している。(もっとも、詰めの甘い箇所への対処は僕の担当ではないのだけれどね。)

というわけで、新生ウェブサイトがこれだ。まだあれこれいじっている最中なので、新しい枠組みをひとまず公開したといったところだろうか。トップページは、ブログというよりも、感じとしてはダッシュボード的にしてある。最新の投稿だけはちゃんと表示されるようにしてあるんだけどね。ソーシャルネットワーク系の要素をちょっと逆に使う感じで、僕自身のサイトを目的地に、各ソーシャルネットワークを枝的な位置づけにできないか試している。

次に我々が取り組むのは、MT4と連動して使えるコミュニティパックだ。意図通り機能してくれれば、友人のプロフィールを僕のほうから作成できるようになり、その友人のソーシャルネットワークに僕のリンクを追加してもらうということができるはずだ。これにより、僕が以前使っていたfaceroll(顔写真の一覧)よりももう少しダイナミックになるはずだ。僕のサイトが新たなソーシャルネットワークになるとは今思っていないけれど、僕と繋がっている人々同士の繋がりを、僕のサイト上で好みの方式で表示できればと願っている。これが軌道に乗ったら、何をすべきか、またすべきじゃないかについて、皆さんからフィードバックをもらおうと思う。

Twitter が持つ俳句的な制約は本当に素敵なんだけど、僕としてはまたブログが書きたくなりはじめている。 ;-)

素晴らしいデザインをしてくれたBoris、バックエンドを手伝ってくれたKuriとJim、我々をMT4に誘導してくれたAnilとSix Apartチーム、素敵な新しいロゴを作ってくれたSusan Kareにそれぞれ感謝したい。やったね!

PS:ちなみに、画面右上にいるJonkichi君の小さなアイコンをクリックすると、秘密でナイショのRupture埋め込み画面が表示される。