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オーストリアのリンツで開催された今年のArs Electronica Festivalはとても楽しいものだった。とりわけ、自分の担当したパネルで素晴らしい講和者たちに会えたのが良かった。僕はメディアインタビューがあって残念なことに何人かの講和者の話しを聴けなかったのだけれど、そのうちの一人がGinger Krieg Dosierだった。彼女はUAEにあるAmerican University of Sharjahで建築学の准教授を務めている。この大学はドバイの僕の家からほんの数分の位置にあるので、リンツで名刺を交換して、地元でまた会おうと約束した。

先週、エコ的にも生物学的にもクールなMORE CafeでGingerに会って、彼女が取り組んでいる仕事について説明してもらった。

Metropolis MagazineにGingerとその革新的な業績に関するいい記事が載っている。彼女は同誌の2010年度Next Generation賞を受賞している。

Gingerは、バクテリア、砂、塩化カルシウム(海水に含まれるもの)、および尿素(尿に含まれる物質)を組み合わせて、レンガを作り出す方法を開発している。ここで使われるバクテリアは、比較的どこにでもいる安全な種類のものだ。この手法は、砂をバクテリア溶液に浸し、バクテリアに尿素溶液を与え、乾燥させるという過程を経る。一回の行程で砂岩のようなものができ、さらに処理することでレンガを大理石ほどの硬さにまで硬化させることができる。

どういうことかというと、バクテリアが驚異的な強度をもつ結晶化した結合物質を作り出し、全体の構造を保持してくれるという仕組みだ。この物質は機能的にはセメントにとてもよく似ている。

石炭を燃料とする窯で粘土のレンガを1個作ると、約1.3ポンド(約0.6kg)の二酸化炭素が出される。Metropolis誌によると毎年1兆2300億個のレンガが作成されているらしい。

UAEは砂と尿素と海水が簡単に調達できる理想的な立地のようだ。アフリカにはこれらの材料が大量に手に入る場所が、他にも数カ所ありそうに思える。Gingerはレンガのほとんどが女性の手によって作られているという点にも言及していた。また、僕はこの方法を使えばレンガ作成のコストも軽減できるんじゃないかと想像している。

ここで鍵となるのは、Gingerがこの方法を、最も大きな効果が期待できる新興国に非常に低コストもしくは無料で提供可能な製法として、市場レベルで実用化できるかどうかだと僕は思う。その一方で、UAEなどの国にとってかなりの商業価値になるだろうとも想像できる。