エミールとの対談シリーズの最終話では、神経多様性をテーマに、私たちにできる支援の形について語り合いました。後半では、東京で開校したNeurodiversity School(NSIT)の最新情報もお届けしています。
- Joi
番組は各種ポッドキャストプラットフォームからお聞きいただけます
今回のPodcastの理解度をより深めるための14のキーワード
ICDL(Interdisciplinary Council on Development and Learning)
発達と学習に関する学際的協議会。自閉症やその他の発達障害を持つ子どもたちのためのDIR/Floortime®アプローチを開発・普及させている国際的な非営利組織です。1990年代に児童精神科医のStanley Greenspan博士とSerena Wieder博士によって設立されました。従来の行動療法(ABA)とは異なり、子どもの感情的なつながりと個々の発達段階を重視するアプローチを提唱しています。世界中でセラピスト養成プログラムを提供しており、日本でも近年コースが増えつつあるそうです。
フロアタイム(DIR/Floortime®)
Developmental, Individual-differences, Relationship-based model(発達・個人差・関係性に基づくモデル)の略。ICDLが開発した自閉症やその他の発達障害を持つ子どもたちへの支援アプローチ。文字通り「床に座って子どもと遊ぶ」ことから始まり、子どもの興味に寄り添いながら、感情的なつながりを築き、発達を促進する手法。行動の修正ではなく、関係性の構築を最優先にする点が特徴。子ども一人ひとりの感覚処理の特性や発達段階の違いを尊重し、親や支援者が子どもの世界に入り込んでコミュニケーションを図る。親への訓練も重要な要素で、家庭でも継続的に実践できることを目指しています。
Emile Gouws(エミール・ガウス)
南アフリカを拠点に活動する自閉症当事者で、現在はICDLの理事長を務めているお方。自身の経験を活かして、ニューロダイバーシティの啓発活動や、フロアタイムアプローチの普及に尽力している。ホリスティック心理学の観点からサポート体制を捉え、「治すのではなく受け入れる」という哲学を一貫して主張。世界各地で講演やワークショップを行い、自閉症当事者の視点から真のインクルージョンとは何かを発信し続けています。
ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)
神経多様性。自閉症、ADHD、学習障害、ディスレクシアなどの神経発達の違いを「障害」や「欠陥」ではなく、人間の自然な多様性の一部として捉える概念。1990年代後半にオーストラリアの社会学者Judy Singerが提唱したもの。この考え方では、ニューロダイバージェント(神経学的に多様な)な人々は「治療」の対象ではなく、適切なサポートと環境があれば、独自の強みを発揮できる存在とされる。近年、教育現場や職場での合理的配慮の議論において重要な概念となっています。
神経可塑性(Neuroplasticity)
脳が経験や学習によって構造的・機能的に変化する能力のこと。従来は「脳は成人後は変化しない」と考えられていましたが、現代の神経科学では生涯を通じて脳が変化し続けることが証明されているそう。フロアタイムアプローチでは、子どもの興味に基づいた関わりを通じて神経可塑性を活用し、新しい能力や神経経路の発達を促すことができると考えられています。
NSIT(Neurodiversity School In Tokyo)
Joiさんが2024年に自閉症の娘のために日本で設立したインクルーシブ教育の学校。ダウン症、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHDなど多様な子どもたちを受け入れ、フロアタイムとレッジョ・エミリア・アプローチを融合させた教育を実践している。現在は10組の家族が参加する小規模な実験的取り組みだが、日本における新しいインクルーシブ教育のモデルケースとして注目されている。
レッジョ・エミリア・アプローチ(Reggio Emilia Approach)
イタリア北部の都市レッジョ・エミリアで生まれた幼児教育法。第二次世界大戦後、教育者Loris Malaguzziを中心に発展した。子どもを有能で好奇心旺盛な学習者として捉え、子どもの興味や疑問を起点としたプロジェクト型学習を重視する。「子どもには100の言葉がある」という哲学のもと、アート、音楽、ドラマなど多様な表現方法を通じて学びを深める。教師は知識を教える存在ではなく、子どもの探究をファシリテートする役割を担うそう。
松本理寿輝さん
NSITの共同創設者。まちの保育園の経営者で、レッジョ・エミリア・アプローチを日本の教育現場に導入してきたことでも知られています。Joiさんと出会って、フロアタイムとレッジョ・エミリアを融合させ、ニューロダイバーシティに対応したインクルーシブ教育の学校を昨年設立。
コレット・ライアン(Colette Ryan)
ICDLの上級トレーナーで、フロアタイムの専門家。世界各地でフロアタイムの集中講座やワークショップを開催しており、Joiさん家族も彼女の講座を受講しています。日本でのフロアタイム普及にも尽力しており、日本語でのコース提供にも関わっています。
ASD(Autism Spectrum Disorder / 自閉症スペクトラム障害)
社会的コミュニケーションや対人関係の困難、限定的で反復的な行動や興味などを特徴とする神経発達障害。「スペクトラム」という言葉は虹のようにグラデーションを持つ状態をさすもので、ASDの症状の現れ方や程度は個人によって大きく異なります。DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、従来のアスペルガー症候群、広汎性発達障害などを統合してASDという診断名に一本化された。
ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder / 注意欠如・多動症)
不注意、多動性、衝動性を主な特徴とする神経発達障害。集中力の維持が難しい、じっとしていられない、思いついたことをすぐに行動に移してしまうなどの特性があります。子どもの約5%に見られるとされ、適切なサポートがあれば学業や社会生活で十分に能力を発揮できる。近年は大人のADHDも注目されており、生涯を通じたサポートの重要性が認識されている。
ダウン症(Down Syndrome)
21番染色体が通常より1本多いことで起こる遺伝子疾患。特徴的な顔立ち、知的発達の遅れ、心疾患などを伴うことが多い。John Langdon Down医師によって1866年に初めて報告された。約700人に1人の割合で生まれるとされ、適切な医療とサポートがあれば、多くの人が社会で活躍している。
インクルーシブ教育(Inclusive Education)
障害の有無、国籍、言語、性別などに関わらず、すべての子どもが同じ場で共に学ぶ教育のこと。国連の障害者権利条約でも保障されている権利で、特別支援学校や特別支援学級で分離するのではなく、通常の学校・学級で合理的配慮を提供しながら共に学ぶことを目指す。日本でも2014年に障害者権利条約を批准し、インクルーシブ教育の推進が課題となっている。
合理的配慮(Reasonable Accommodation)
障害のある人が他の人と平等に権利を行使できるよう、過度な負担にならない範囲で必要な調整や変更を行うこと。教育現場では、座席の位置の配慮、試験時間の延長、視覚的な補助教材の提供、感覚過敏への対応など、個々のニーズに応じた支援を指す。「特別扱い」ではなく、公平な機会を保障するための必要な措置と位置づけられます。
今週のおさらいクイズの申請先
「おさらいクイズ」の申請先は以下の通りとなります。
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