自閉症のセルフアドボカシーをはじめ、障害のある人の権利をどう支えていけるのか。 そんなテーマについて、エミールとじっくり語りました。
- Joi
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今回のPodcastの理解度をより深めるための12のキーワード
自己擁護運動(Self-Advocacy Movement)
障害者自身が権利を主張し、社会参加を求める運動。1970年代にアメリカで始まったとされ、それまで「保護の対象」として扱われてきた障害者が、自らの声で政策決定に参加することを求めた歴史的な転換点となりました。日本ではピープルファースト運動として知られ、「知的障害者」ではなく「知的障害のある人」という表現を推進するなど、言語の変革も含まれています。現在では、自閉症当事者によるAutistic Self Advocacy Network (ASAN)などの団体が世界的に活動しています。
Nothing About Us Without Us(私たち抜きで私たちについて語るな)
障害者権利運動の基本理念を表すスローガン。もともとは16世紀の東欧の政治スローガンでしたが、1990年代から障害者権利運動で使われるようになりました。2006年の国連障害者権利条約の制定過程で、当事者団体が積極的に参加したことで世界的に広まりました。この理念は、政策・プログラム・決定が障害者に影響を与える場合、必ず当事者の直接的な参加が必要であることを強調しています。Emile博士は「これは単なる言葉じゃない、生き方だ」と語っています。
Leave No One Behind(誰も置き去りにしない)
2015年に採択された国連の持続可能な開発目標(SDGs)の中核理念。すべての人々が開発の恩恵を受けられるよう、最も脆弱で取り残されがちな人々を優先的に支援することを求めています。障害者、女性、子ども、高齢者、先住民、難民など、社会的に排除されやすい人々への配慮を強調しており、Emile博士は「この言葉は私と私の家族の礎」と述べています。
ニューロダイバーシティ / 神経多様性(Neurodiversity)
脳の働きの多様性を認め、自閉症やADHD、ディスレクシアなどを「障害」ではなく「神経学的な違い」として捉える概念。1990年代にオーストラリアの社会学者ジュディ・シンガーが提唱しました。この考え方では、神経学的な違いは人間の多様性の一部であり、「治すべき病気」ではなく「尊重されるべき違い」として理解されます。ハーバード大学医学部も、ニューロダイバーシティを「人間の脳と認知の自然な変異」として認めています。
医学モデル vs 社会モデル
障害を理解する2つの異なるアプローチ。医学モデルは障害を「個人の身体や精神の問題」と捉え、「診断・治療・リハビリ」によって「正常」に近づけることを目指します。一方、社会モデルは障害を「社会の障壁によって作られるもの」と捉え、社会の側が変わることで障害をなくすことを目指します。Emile博士は「診断や治療中心の考え方は時代遅れ」と指摘し、「可能性に目を向ける」社会モデルへの転換を訴えています。国連障害者権利条約も社会モデルを基盤としています。
国連障害者権利条約(UN Convention on the Rights of Persons with Disabilities)
2006年12月13日に国連総会で採択され、2008年5月3日に発効した国際条約。障害者の人権と基本的自由を保障し、固有の尊厳の尊重を促進することを目的としています。日本は2014年に批准しました。Emile博士は「自分の権利を理解し、国連条約を理解していれば、公の場で自分自身を主張できるようになる」と述べています。この条約の策定過程では、「Nothing About Us Without Us」の理念に基づき、障害者団体が積極的に参加したことで知られています。
非言語話者 / Non-verbal communicators
言葉を使わずにコミュニケーションする人々。自閉症者の約25〜30%は非言語話者とされています。アメリカ言語聴覚協会(ASHA)によれば、非言語話者は絵カード、タブレット端末、サイン言語、視線追跡装置など、AAC(拡大・代替コミュニケーション)を使ってコミュニケーションを取ります。Emile博士は「非言語の人々に対する偏見は強烈で、これらの人々はしばしば排除されている」と指摘し、会議などの場でも非言語話者がコミュニケーションに含まれる必要があると強調しています。
マスキング(Masking)
自分の特性を隠して社会に適応しようとする行動。自閉症者が社会的に受け入れられるために、自然な行動を抑制し、定型発達者の行動を模倣することを指します。学術研究によれば、マスキングは短期的には社会適応に役立つものの、長期的には精神的疲労、不安、うつ、自己喪失感を引き起こします。特に女性の自閉症者はマスキングを行う傾向が強く、診断が遅れる原因にもなっています。Emile博士は「マスキングや沈黙を強いる社会からの脱却」を目指すべきだと訴えています。
ひまわり支援ストラップ /Sunflower Lanyard
2016年にイギリスのガトウィック空港で始まった、見えない障がいを示すための国際的な取り組み。ひまわり柄のストラップやカードを身につけることで、自閉症、不安障害、慢性疲労症候群など、外見からはわかりにくい障がいがあることを周囲に知らせることができます。現在では世界200以上の空港、航空会社、鉄道、スーパーマーケット、美術館などで導入されています。日本では羽田空港で導入されており、Emile博士も「これまでで最も成功したアドボケートツール」と評価しています。
見えない障がい(Hidden Disabilities)
外見からはわかりにくい障がいの総称。自閉症、ADHD、不安障害、慢性疲労症候群、線維筋痛症、クローン病、糖尿病、てんかんなど多岐にわたります。見た目では分からないため、「怠けている」「わがまま」などと誤解されやすく、必要な配慮を受けにくいという課題があります。
Temple Grandin(テンプル・グランディン)
1947年生まれのアメリカの動物学者で、自閉症当事者として世界的に有名。コロラド州立大学教授で、家畜の扱い方と施設設計の専門家。自閉症の視点から動物の感覚世界を理解し、より人道的な家畜処理システムを開発しました。TED Talkでの講演「世界はあらゆる種類の心を必要としている」は数百万回再生され、2010年には彼女の半生がHBOで映画化されました。Emile博士はフロリダの国際会議でGrandin教授と対談したと述べています。
合理的配慮(Reasonable Accommodation)
障がい者が他の者との平等を基礎として人権と基本的自由を享受できるよう、必要かつ適当な調整や変更を行うこと。国連障害者権利条約で定義されています。重要なのは、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」という条件があることです。例えば、自閉症者への合理的配慮としては、静かな環境の提供、視覚的な情報提供、柔軟な勤務時間などがあります。日本でも2016年の障害者差別解消法により、行政機関等には合理的配慮の提供が義務づけられています(民間事業者は2024年から義務化)。
今週のおさらいクイズの申請先
「おさらいクイズ」の申請先は以下の通りとなります。
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