ケネス・J ・アロウの『組織の限界』に関するコメント
1974年(Fels Center of Government)
この本の中でアロウはまず、価格システムが、競争を介し全ての物事を公正にする
仕組みとしては十分ではないことを主張している。企業や政府といった組織は、誰
もが最大の利益が得られるような決定をし、資源配分をするといい、なぜ組織がよ
り効率的なのかを説いている。権威は組織が権力を行使するために、なくてはなら
ないものであり、過ちを最小限にくいとめるために必要なのは責任である。権威と
責任の均衡が重要だ。
彼が言うには、「単純に論ずることはできない。収入の妥当な分配を可能にする単
純な理論があるはずだというような主張をくりかえす素人ばかりで、本当に経済を
語れる経済学者は皆無だ。それでは、価格システムはそれ自体弁護できるような収
入の分配のしくみがないことが主たる欠陥だ、ということになる」これは私と妹の
ミミのCEO の報酬についての議論と似ている。価格のメカニズムだけでは不十分
で、軽量しがたい価値は数多く存在する。アロウは、続いて信頼に言及する。「い
ま、信頼には、非常に重要で有用な価値がひとつだけある。それは信頼が社会制度
の重要な潤滑油だということだ。信用は、他人の言葉がある程度信用できれば問題
の多くが回避されるという意味で、社会の効率を極めて高くする。不幸にして、こ
れは簡単に購入することができない品物だ」組織の権威とそれに対する信用があれ
ば、信頼が築かれ、システムの効率は高まる。
この信頼の概念は、日銀の人たちが彼らの貨幣の保証になっているという常識に似
ている。組織は信頼を管理でき、権利と責任の均衡が組織の能率をあげる重要な要
素ならば、権威と責任の均衡が社会の信頼度を示し、ひいては貨幣への信頼度を保
証するものになるとも言える。
アロウは組織の中で人が情報交換し、意思決定をすることを可能にする「コード」
にもふれている。組織は情報処理の効率を最大限にし、より多くの「経路」を作る
ことでよりよい決定が下せる。組織の内部にいる人々は、「コード」を使って情報
を交換し、内外に通じる経路を保っている。アロウはこれらの経路が発達し、維持
され、意思決定に利用される情報の収集に使われる方法も解説している。また、
「この情報の定義は質に関わるものだ」とし、かつ、「A が真実かどうかを知るこ
との価値は、B の真実の価値をしる価値よりもはるかに大きいこともありうる」と
も述べている。
従って、活力のある組織には、権威と、責任と、質のよい情報を最大限活用したよ
い決定を促す手段が必要である。組織は、どのように価値の高い情報を集め、組織
内での交換を促せばいいのか。アロウは、資本投資と経路の偏向にもふれている。
つまり、個人も組織も、ある特定の経路に固執しがちだということだ。急速な変化
が必要な環境では、これらの経路を立て直し、情報の質を見直し、かつ権威を保つ
ような何らかの手段を講じる必要がある。

Translated by Yuki Watanabe

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