Minerva Priory library
The library at the Minerva Priory, Rome, Italy.

訳:Hiroo Yamagata

最近、技術研究者、経済学者、ヨーロッパの哲学者や進学者たちとの会合に参加した。参加者は他に、アンドリュー・マカフィー、エリック・ブリニョルフソン、リード・ホフマン、サム・アルトマン、エリック・サロビル神父だ。ぼくにとってこの会合が特におもしろかったのは、会話に神学的(この場合キリスト教的)な視点があったことだった。話題の中に出てきたのが、人工知能と仕事の未来だった。

機械が人間にとってかわり、多くの人々を失業させるのではという問題は、何度も繰り返されてはいるけれど、未だに重要であり続けている。サム・アルトマンらは、生産性の激増は経済的な過剰を作り出して、失業者にはユニバーサルな「ベーシックインカム」を支払えるようになると論じた。ブリニョルフソンとマカフィーは「負の所得税」を提唱している――低所得労働者に課税ではなく補助金をあげて、仕事という実践が生み出す他の重要な影響を阻害することなく、金銭的な再分配を助けようというものだ。

負の所得税を支持する人々は、仕事の重要性が単にそこから得られる所得だけでなく、それが社会的にも心理的にも与えてくれる安定感なのだということを認識している。仕事は社会的な地位を得る方法だし、また目的意識も与えてくれる。職場は社交の機会でもあるし、多くの人々が生産的で幸せでいるための構造も提供してくれる。

するとAI などの技術がいつの日か生産性の過剰をもたらして、金銭的には働く必要がなくなったとしても、人は相変わらず社会的地位を獲得し、仕事から得ている意味ある目的を得るための方法を見つけなくてはならない。この社会では、働いているのに給与のない人もいる。その最大のグループは、在宅の男女で、家や子供の世話をするのが仕事だという人々だ。その労働は現在はGDPに計上されないし、そういう人々はあるべき社会的地位や価値も得られないことが多い。なんとか文化を変えて、お金を稼がない人にも尊厳と社会的地位を与えるような仕組みや制度を作り出せるだろうか?ある意味では学術界や宗教機関や非営利サービス組織がそうした構造をある程度は持っている。つまり、お金を主体とせずに動く社会的地位や尊厳が得られる。この価値構造をもっと広く拡張する方法はないものだろうか?

そうしてクリエイティブなコミュニティはどうだろう?どうしてアマチュア作家やダンサーや歌い手が、金銭的な収益以外の形で成功を定義できるような組織原理を構築できないんだろうか?それでマスメディアによる流通と消費で支えられない少数のプロ以外にも、社会の中でクリエイティブな役割を開放できるんじゃないだろうか?「食うに困るアーティスト」という表現を、過去の風変わりな比喩表現にできないか?仕事の概念を、これまで一般に理解され受け入れられてきた生産性概念と切り離せないだろうか? 活動性とユーダイモニアの観点からすると「内面の仕事」というのがもっと有意義なものと捕らえられないものだろうか?

ペリクレス時代のアテナイは、人々が活躍して生産的になるために働く必要がなかった道徳的社会の好例に思える*。自尊心と共有された社会的価値観が、金銭的な成功やいまのような仕事と関連していないような新しい時代を想像できるだろうか?エリック神父は「活動性というのはどういうことだろう?」と尋ねる。現代のユーダイモニアとは何だろう?わからない。でもそれがなんであれ、根本的な文化の変化を必要とするのはわかる。その変化はむずかしいけれど、不可能ではない。その第一歩としてふさわしいのは、技術や金融イノベーションと並行して、文化についての作業を始めることだ。それにより未来は何もすることがない無関心なガキどもの世界よりは、ペリクレス時代のアテナイと似たものになる。もしそれがペリクレス時代のアテナイを動かす道徳的価値と美徳だったとするなら、いまあるような形の仕事がなくなった世界に間に合うようにそれを開発するにはどうしたらいいだろうか?


* ペリクレス時代のアテナイには奴隷がたくさんいた。将来の機械時代には、機械の権利について心配する必要があるだろうか?ロボット奴隷の新しい階級を作り出すことになるだろうか?

Credits
  • Reid Hoffman - Ideas
  • Erik Brynjolfsson - Ideas
  • Andrew McAfee - Ideas
  • Tenzin Priyadarshi - Ideas
  • Father Eric Salobir - Ideas
  • Ellen Hoffman - Editing
  • Natalie Saltiel - Editing
  • Hiroo Yamagata - Translation

2 Comments

「ただ、奴隷という職業がAIによって復活するとき、人間社会はもう一つ高度になると思うんです。奴隷が存在していたローマ時代にあれだけ哲学や娯楽が発達したことを考えると、またああいった状態に戻れるのではないかと思うんですよね」。

●人工知能(AI)は人類をローマ時代へ引き戻す? http://society-zero.com/chienotane/archives/3884/#8

16世紀、エリザベス女王が編み物の機械を作るプロジェクトへのファンディングを拒否したと知りました。編み物によって生計を立てている貧しい人々の生活を崩壊させたくないという理由だったとのこと、下々を心配する、この点は今のリーダー達とそう変わらなかったのかもしれません。

私は社会的地位も金銭的報酬もない主婦業と、稼げないアーティストを意図的に長年してきました。家庭内で経済101、得意分野を担当すると決めたのですが、30年前はそれが可能で、また、それができたのは夫の稼ぎというベーシックインカムが確定されていたからです。
現在はまだ、いかに多くの人間を経済・政治的にコントロールできるかによって尊厳ポイントの多寡が計られますが、ベーシックインカムが導入されると、財布を握る族長に付き従う必要はなく、個人は真に多様な生き方が可能になると思います。芸術家もスポンサー探しや、トレンドに屈する必要はなく、創造性を発揮できます。また、不安を煽って経済を回す必要もなく、安定した社会になるのではないでしょうか。もっとも、それはそれで問題を含んでいて、全てがhunky- doryと行かないことはわかっていますが。


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