オードリー・タン氏は、デジタル、民主主義、そして社会全体のあり方を示す最も重要な人物の一人だと思います。今回のインタビューでは、私が最近、関心を寄せている多数のテーマについて、詳しくお話を伺うことができ、本当に嬉しく思いました。本日は、2部構成となるインタビューの前半部分をお届けします。
- Joi
オードリー・タン氏は、知れば知るほど本当にすごい!!
今回の配信、いかがでしたでしょうか。毎回同様、ポッドキャスト配信の裏側をシナダがレポートいたします。
今回は、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンに登場いただきました。
オードリー・タンというと、IQ180だの、世界初のトランスジェンダー大臣だの、中学中退だのなんだかセンセーショナルな部分ばかりが注目されていますよね。もちろん、これまで5年間で成し遂げた数々のプロジェクトは素晴らしいのですが、彼女が大臣に至った過程については、正直私自身そこまで詳しくなく...。
今回、ご出演いただくにあたって色々とリサーチしていると、Joiさんが番組内でも言っていた、「台湾のオードリー・タンは、学生運動がテイクオーバーに成功し、唯一と言っていいぐらい成功しているリーダーシップ」ということが本当によく分かるようになりました。
2014年前後は、思い返せば世界各地で市民によるデモや学生運動などが起きていました。しかし、なんだかテレビや新聞を賑わせただけで結局その後何かが変わった実感がなかったのですが、オードリー・タンという人物は、台湾で起きた「ひまわり学生運動」の末に市民が勝ち取った行政の姿だったのか!!と恥ずかしながら、今になってようやく点と点が繋がった感覚を感じたのでした。
ここ10年ほどの間に、台湾では市民と政府の間で様々なやりとりがあり、その中で市民が行政に深く切り込んでいったことで、新しいデジタル担当大臣というポストが生まれ、そして彼女がデジタルDXを加速させているという「市民が行政を変えた」事例であったことが本当によくわかりました。
そんな中で、様々なプロジェクトを成功させているオードリー・タン。本当に、かっこいい!!と思ってしまうインタビューでした。
オードリー・タンさんは来週も登場します。お楽しみに。
さて、それでは今週もやってまいりました。このコーナー!
変革への道の基礎知識
今週は英語なのもあって、たくさん用語が登場しました。放送を聞く前に予習するもよし、聞いた後に確認するもよし。ぜひご活用くださいませ。
Socialtext
Ross Mayfieldが2002年にカリフォルニア州パロアルトで創業した会社。企業用ウィキツールの開発・提供を行なっていました。Joiさんは、この会社に出資しており、オードリー・タンは同社の創業メンバーの一人として活躍していました。直接二人が関わることはなかったそうですが、いろいろとつながりはあるってことですね。狭い世界!
ひまわり学生運動
2014年3月18日に中華民国の学生と市民らが、中国との貿易に関する立法について、過程の透明性を求めた学生運動の総称。学生たちは、立法院を23日間に渡って占拠し改正を訴えました。オードリーももちろん立法院の中にいて、ブロードバンドのラインをせっせと設置していたそうです。
Arab Spring
日本語では「アラブの春」と言いますね。チュニジアで発生した民主化運動に端を発し、2011年初頭から中東・北アフリカ地域の各国で本格化した一連の民主化運動。そういえばあの時期、次々に民主化運動が各地で発生していましたよね。
Umbrella Movement
日本語では、雨傘運動と呼ばれる、香港で2014年に起きた民主化要求デモ。2017年の香港行政長官選挙をめぐって、数万人の学生や市民らが繁華街を占拠しました。デモ参加者が、雨傘を使って警察の使用する催涙弾に対抗したことからこの名称がつけられたそう。
"humour over rumour"
オードリー氏が主導するフェイクインフォメーション情報室が取った手法の一つ。デマやフェイクニュースが飛び交う中、これらの情報を笑い飛ばすようなミーム(後述)を制作し、これをバズらせることで政府の公式見解や正しい情報を浸透させようという取り組みです。「ユーモアは噂に勝つ!」という信念のもと、さまざまなデマを是正しました。笑い飛ばすっていう手法を政府が取るって、ちょっとびっくりですよね。
ミーム
ネット上で流行する画像や動画や言い回しのこと。もともとは生物学者のRichard Dawkinsが著書「利己的な遺伝子」で提唱した言葉で、遺伝子の対概念を指していたそう。ただし、最近ミームといえば「twitter」やメールなどで繰り返し繰り返し利用されている誰もが知っている画像や動画を指すことがほとんどですよね。日本で有名なところだと「チャリで来た」画像ですかね。
vTaiwan
vTaiwanはシビックテックのコミュニティであるg0v(後述)が構築・運営する合意形成プラットフォームのこと。ひまわり学生運動が終結した後に設置され、現在でも様々な議論に使われています。システムとしては、アメリカで開発されたPol.is(後述)を使用しているそう。
Pol.is
米国のウォール街を占拠する活動家たちによって開発されたソフトウェアで、提言者はプラットフォーム上で直接意見を述べることができ、参加者はその提言に対して「賛同」「反対」などを投票することができるものになります。
シビックテック
市民自身が、テクノロジーを活用して、行政サービスの課題を解決すること。前回登場いただいた、Code for Japanも国内で活躍するシビックテック集団です。
Minister
大臣の意味のほか、牧師や聖職者の意味もあります。
Rough Consensus Running Code
これは、インターネットの標準化の理念を示す言葉で、日本語では、「ラフコンセンサスと動くコード」と訳されています。集団の中で、ゆるやかな合意形成をとりつつも、実際に動くコードを作ることを目指すというもの。「いろんな人がいるといろんな意見がある。それでも、大体の合意をとりつつ、やらなきゃいけないことはやりますよ!」という考え方、嫌いじゃないです。
g0v.(ガブゼロ)
情報の透明性やオープン性を価値観としている台湾でのシビックテックのコミュニティのこと。漢字での表記は「零時政府」らしいです。なんて、かっこいい!2014年に台湾で起きたひまわり学生運動で中心的な役割を果たしました。現在デジタル大臣を務めるオードリー・タン氏はg0v古株のメンバーの一人なんだそう。
GIGAスクール構想
全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み。私シナダが見学した小学校では、小テストとか授業中の問題とかを生徒が使うipadでやりとりしていました。
デジタルコンピテンシー
デジタルの知識だけでなく、デジタルを使った問題解決能力を指します。第3回目の配信に出演いただいた村井先生はこれを「デジタル道」と訳して浸透させようとしています。
Safecast
東日本大震災発生時に、Joiさんが友達と立ち上げたプロジェクト。世界中の放射線データを集め、マッピングしている。
創発民主制
Socialtext社(前述)のRoss Mayfieldが考案した言葉で英語ではEmergent Democracyと言います。中央政府による計画ではなく、多くの個人が参加することによる政治的な構造や行動の発生に関わる概念で、Joiさんは2003年にこれに対する論文を執筆しています。
メタバース
超越を意味する「メタ」と、空間や宇宙などを意味するユニバースを掛け合わせた造語で、ネット上で構築される仮想の3次元空間を指します。
Neal Stephenson
(=ニール・スティーヴンスン) アメリカのSF作家。1992年に発表された著作「スノウ・クラッシュ」の中でメタバースという言葉が登場するそうです。
OpenSea
最大手のNFTマーケットプレイスのこと。ただ、最近ではウォレットに入っているNFTをネット上で表示させることができるため、持っているNFTを自慢するプラットフォームとしても機能しているようです。ちなみに私シナダのOpenSeaは、こちら。(自慢です)
Augmented Reality
(=拡張現実)スマホやタブレットなどの機器を使って、CGを現実世界に映し出すことができる技術。いわゆるARと呼ばれているものです。
というわけで、今週の基礎知識は以上です!
番組からプレゼントをお贈りします
そして、番組でもお伝えしましたが、今週からお便りを採用させていただいた方々にはプレゼントをお贈りしています。何が届いたかを確認するには、Openseaを使うのが便利です。OpenSeaを使うには、まずETHアドレスをリンクさせる必要があります。
OpenSeaでのウォレットリンク方法
OpenSeaにアクセスいただき、一番右のお財布マークをクリック。 お使いのウォレットを選択し、同期させることで、現在お持ちのNFTを確認することができます。
「Hidden」と記載された欄をクリックいただくと、送られてきたNFTが表示されます。
わからないことやJoiさんに聞いてみたいことがある方、ぜひ番組までメールをお寄せください。メールはこちらで募集しています。
文:シナダミホ