
オープンソースやフリーソフトウエアを推進する自由ソフトウェア運動は80年代から存在していて、僕は90年代ごろからユーザーとしてそして支援者としてこの運動に参加してきた。オープンソース・ソフトウエアは、インターネットの黎明期やその後のイノベーション爆発期に極めて重要な役割を果たしている。
オープンソース・ソフトウエアはこれまで、長い長い道のりを辿ってきた。かつての宿敵だったマイクロソフト社は、今やオープンソースを支援する側に回っている。同社は、オープンソースの代表的プラットフォームであるGithubを買収するまでになった。
そうは言っても、オープンソースの道のりはやっぱり長い。今週は、そんなオープンソースの今後のあり方について、オープンソースの提唱者であり、Code for Japanの創設者でもある関さんにお話を伺った。
いわゆる公益のためのテックと呼ばれるパブリック・インタレスト・テクノロジーやCode for Japanのようなプロジェクトは、日本におけるオープンソースやデジタルDXを成功させるための鍵になると信じている。関さんのような多くの目的を推進するために素晴らしい仕事をしている人たちに新しく出会えることをとても嬉しく思っている。
- Joi
ポッドキャスト制作秘話:Joiさんとオープンソース
今回は、一般社団法人コード・フォー・ジャパンの代表理事を務める関治之さんに登場いただきました。いつもはリモートで行う収録ですが、今回はJoiさんが創業したデジタルガレージという会社の一室で行いました。この収録について、シナダがレポートいたします。
お二人、メールやzoomなどでは面識はあったようなんですが、実際にリアルで会うのは初めてだった様子。ですが、二人とも会った瞬間から意気投合しているのが見ていてよく分かりました。
二人の共通点はなんと言っても「オープンソースを推進している」こと。
関さんはこれまで、オープンソースの技術を応用して、数多くの社会的課題を解決してきました。関さんがこれまで手がけてきた東日本大震災の被災・支援情報を集約するshinsai.infoや、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトなどももちろんオープンソースによる賜物です。
一方、Joiさんもこれまで、オープンソースを推進すべく、さまざまな活動を行ってきました。たとえば、非営利団体クリエイティブ・コモンズや、ウェブブラウザーのFirefoxを開発するMozilla、そしてオープンソースの発展を目指すオープン・ソース・イニシアティブ(OSI)などで理事を務めています。
Joi Ito's Webを「Open Source」で検索すると沢山の記事がヒットします。中にはオープンソースの水、実際に触れることができる物理的なオープンソース (ビデオはこちら)などの謎記事まで登場しています。
そして本日は、オープンソースをテーマにした投稿記事の中でもJoiさんのお気に入りがある!とのことでしたので、こちらをを紹介したいと思います。
ます一つ目は、「インターネット、イノベーションそして学習について」という記事です。こちらは読んでて、ゾクゾクしてしまいました。Joiさんが初めてインターネットを体験したときに感じた高揚感と、その後PSINetというプロバイダーを運営していたときの体験談が語られています。そして、この経験からオープンソースや分散型をこよなく愛する理由や、オープンソースの利便性・活用方法などが記されています。
もうひとつは、「透明性への耐性を備えた組織を設計する」という記事。こちらは、組織のオープンソース化について唱えたもの。多くの人が共有するオープンソースという世界での透明性や道徳性などが記載されています。
どちらも、読んでいて、「そういうことなのか!」とうなずくことばかり。オープンソースという考え方自体が現代においてとても重要な位置を占める、その理由がわかったような気がしました。
さて、続いては、今週の難解な用語をお届けするこちらのコーナーです!
変革の道への基礎知識
私は、このコーナーを執筆することで、カタカナでしか知らなかった単語の英語の発音を知ることができています!なんか英語が上手くなった気がするのは気のせいでしょうか。Joi Ito's Podcastは英語学習者も要チェックですよ!では今週の基礎知識用語は下記の通りとなります。

Code for America
2009年に設立されたシビックハッカーの団体。行政が抱える課題に対して、オープンソースの技術を駆使して解決することを目的としています。同団体の創設者はJennifer Pahlka(後述)。
Safecast
東日本大震災発生後にJoiさんが手がけたプロジェクトで、放射線量の測定値をインターネット上の地図にまとめていました。現在では日本のみならず世界中からデータが集められているそうです。
東京都の新型コロナ感染症の対策サイト
コード・フォー・ジャパンが手がけたサイト。このサイト、私もよく利用するんですが、とっても使いやすくて分かりやすいですよね。
g0v(ガブゼロ)
情報の透明性やオープン性を価値観としている台湾でのシビックテックのコミュニティのこと。漢字での表記は「零時政府」らしいです。なんて、かっこいい!2014年に台湾で起きたひまわり学生運動で中心的な役割を果たしました。現在デジタル大臣を務めるオードリー・タン氏はg0v古株のメンバーの一人なんだそう。
GitHubのレポジトリ
Githubとはソフトウェア開発プロジェクトのためのソースコードを管理できるオープンソースのサービスのこと。レポジトリとは、ファイルやディレクトリの状態を保存する場所を指します。
コントリビューション
オープンソースの世界では、みんなが無償でソースコードを提供しあいます。ということは、自分自身がどれだけコントリビュート=貢献したのかということも世界で生きる上で大切になってくるわけですね。昼間は会社員として働き、週末の空いた時間にコントリビューションする...なんて方も多いようです。
Travis Oliphant
=トラヴィス・オリファント。アメリカのデータサイエンティストであり実業家。非営利団体NumFOCUSの共同設立者であり、同団体の諮問委員会のメンバーでもある。さらに、NumPy(後述)の主要開発者であり、プログラミング言語PythonのSciPyパッケージの創始者。
NumPy
プログラミング言語Pythonのためのライブラリで、多次元配列や行列など高レベルの数学関数を効率的に扱うことができる。PythonとNumpyを活用することで、ディープラーニングなどが実現するようになったとか。また、Numpyは前述のトラビス・オリファントが開発したオープンソースのソフトウエアとなっています。
Jennifer Pahlka
日本語表記はジェニファー・パルカ。Code for Americaの創始者。2013〜2014年には米ホワイトハウスの最高技術副責任者(Deputy CTO)を務めました。
PLATEAU
国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト。スマートシティをはじめとするまちづくりのDX基盤としての役割を果たしていくためオープンソースで開発されているそう。
Ethereum
ビットコインに次いで時価総額2位の仮想通貨。日本語表記はイーサリアム。Joiさんの発音がカッコよくて、よく真似してしまいます。thでちゃんと舌を歯と歯の間に挟み、その後はアールで舌を巻くのがポイント!
W3C
ワールドワイドウェブコンソーシアムの略称で、World Wide Webで使用される各種技術の標準化を推進する為に設立された国際的な非営利団体。Web技術に関わりの深い企業や団体が数百程度加盟しています。
プルリクエスト
Github(前述)が提供した機能で、開発者のリポジトリでの変更を他の開発者に通知するもの。ソースコードの変更箇所をわかりやすく表示したり、機能追加の内容などを別の開発者に通知したりできるもの。共同開発者に対するコミュニケーション機能であり、コードの精度向上にもつながっているそう。
......というわけで、今週はここまで! わからないことやJoiさんに聞いてみたいことがある方、ぜひ番組までメールをお寄せください。メールはこちらで募集しています。
文:品田
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文:品田