私のヒーローである利休の子孫にあたる伊住禮次郎さんは、現代アートと茶の世界をつなぐ非常に重要な役割を担っています。伊住さんは私の流派である裏千家の方で、裏千家の歴史やその役割について理解を深めるうえでとても助けになってくれています。最近では、千葉工大の変革センターの客員研究員として参加してくれました。 まだ伊住さんのことを知り始めたばかりですが、今回のポッドキャストでは深くつながり、探求する素晴らしい対話の機会となりました。
皆さんにも、この対話を私と同じように楽しんでいただけたら嬉しいです!

- Joi

番組は各種ポッドキャストプラットフォームからお聞きいただけます

これまでのどなたとも違うお茶トーク

ここからはシナダが担当です。

またまたお茶の世界にディープダイブとなりました。 いやー、もう茶道関連めちゃめちゃやってますが、やる度に新しい発見があります。なんて深い深い世界なんだ...!

伊住さんがお父様から引き継いだという茶美会。なんとも素敵な取り組みですよね。もっともっと広がって欲しい取り組みだなと思います!

今回のエピソードをもっと理解するための9つのキーワード

茶道資料館

茶道の美しい世界を体験できる特別な場所。ここでは展示や普及活動を行う「茶道資料館」と、歴代の家元さんたちが集めてきた貴重な茶の湯関連の資料を大切に保存・公開している「今日庵文庫」が設置されているんです。さらに、お茶の文化をもっと広めるために「茶道文化検定」も実施中。お茶に興味のある方は、ぜひ足を運んでみては。

裏千家学園茶道専門学校

国内で唯一、家元に直属している茶道専門の学校。1962年に裏千家茶道研修所としてスタートし、1971年に「裏千家学園」と名前を変更。1976年には専修学校になりました。1983年には新しい校舎が完成し、京都府から学校法人の認可を受けて、正式に「学校法人 裏千家学園 裏千家学園茶道専門学校」に。

1985年には本科(茶道科)の付帯教育として研究科を、2001年からは1年コースも開始。時代のニーズに合わせながら、素晴らしい茶道の先生を育てる教育機関として今日まで続いています。お茶の道を真剣に学びたい人には最高の環境かも。

鵬雲斎大宗匠

裏千家15代の大宗匠である千玄室さんのこと。実はすごいパイオニアだったんです。1951年、まだ日本人がパスポートを持てない時代に、GHQから特別許可をもらってハワイに渡り、その後ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴにも拠点を展開。「戦争では負けたけど、文化では負けていない」という強い思いを胸に、海外でお茶の素晴らしさを広める基盤を構築。今日の茶道が国際的に評価されているのも、この方の功績によるもの。

マッカーサー財団

通販型保険ビジネスで成功したジョン・ドナルド・マッカーサー氏が立ち上げた財団。主に気候変動問題への取り組みや、刑務所人口を減らす活動、核の脅威に対する問題などを支援しているとか。Joiさんもボードメンバーとして活躍されていたそう。世界規模の課題に取り組む重要な組織なんだとか。

シアスターゲイツ

シカゴのサウス・サイド地区を拠点に活動している現代アーティストで、国際的にも超有名な人物。彫刻や陶芸を中心に、建築、音楽、パフォーマンス、ファッション、デザインなど、ジャンルの枠を超えた多彩な活動を展開中。

彫刻と都市計画を学んだ後、2004年に愛知県常滑市で陶芸を学ぶために初めて日本を訪問。それ以来20年以上も日本文化から影響を受けているとか。日本やアジア太平洋地域での様々な出会いや発見、そしてアフリカ系アメリカ人としてミシシッピとシカゴで育った経験が、彼の作品づくりの土台になっているらしい。多文化的な背景を持つアーティスト、本当に興味深い。

シアスターゲイツとのお茶会

去年の8月6日、森美術館で開催されていた「Theaster Gates展:アフロ民藝」の特設会場で、すごいイベントが実現。招待制のクローズドイベントで、シアスター・ゲイツさん本人を囲んでのお茶会だったとか。

このイベントは、茶の湯文化の伝統継承に取り組む伊住禮次朗さんが主催する「茶美会(さびえ)」とシアスター・ゲイツさんのコラボ企画。「Beauty and Generosity between us, not division(私たちの間にあるのは分断ではなく、美と寛容である)」というステキなコンセプトが掲げられていたらしい。

展覧会場の外に特別に設けられた茶室では、亭主3名、お客さん9名の合計12名が集まり、お互いのためにお茶を立て合ったそう。文化の垣根を超えた交流、素敵なもの。

茶美会

お茶の哲学を深く掘り下げる特別な取り組み。もともとは伊住禮次朗さんのお父さん、伊住政和さんが始めたものだとか。実は伊住政和さんは、現在の裏千家16代家元・千宗室さんの弟で、残念ながら44歳という若さで癌で逝去。

兄の千玄室さん(先ほど触れた鵬雲斎大宗匠)は家元として茶道の伝統を守りながら新しい時代への対応を考える立場だったのに対し、弟の宗晃さんは次男という気楽な立場から、伝統文化の内と外をつなぐような役割が自分のミッションだと感じていたらしいです。

1988年頃、「クラフトシアター茶美会」として革新的な活動をスタート。工芸作家が新作を持ってきて、お客さんの前で披露しながら自ら亭主となってお客さんと交流するという斬新なスタイル。お食事やお酒を出して、最後にお茶を点てるという茶会の基本は守りつつも、新しい風を取り入れる姿勢。

この活動はどんどん広がり、現代のデザイナーやクリエイターも巻き込む芸術運動に発展。例えば、韓国の現代作家・崔在銀さんのガラスのお茶室で、三宅一生さんデザインの衣装を着てお茶を点てるなんて斬新な企画も実現したんだとか。伊住政和さんは伝統と現代をつなぐ「縁側」的な役割を担い、お茶の多面的な魅力を現代風にどう表現できるかを探求し続けたそう。

2003年に亡くなった伊住政和さんの影響は、息子の禮次朗さんに深く受け継がれているとのこと。禮次朗さん自身は、活動が行われていた当時はまだ小さくて詳しくは分からなかったけど、後年アーカイブブックでその記録を見て強く感銘を受けたらしい。お父さんの「伝統と共にある革新」の精神を理解し、今では自らも「茶美会」を引き継いで、現代的な新しい活動を展開中。お茶を通じた文化交流、世代を超えて継承されていくもの。

Sadler

フルネームはArthur Lindsay Sadler。シドニー大学の東洋学教授を26年間務め、オーストラリア王立陸軍士官学校の日本語教授でもあった方だそう。著書「Cha-no-yu: The Japanese Tea Ceremony」では茶の湯の起源と、その儀式化における豊かで複雑な構成要素を解説しているとか。

Joiさんが最後に話していた利休と教え子の話。

サドラーの著書「Cha-no-yu: The Japanese Tea Ceremony」に記載されていた一説なんだとか。

"On another occasion the same critic (Tachibana Sogen) observed that the judgment of Enshu might perhaps be superior to that of Rikyu, since everyone agreed that the things that Enshu praised were good, whereas opinions differed about the things that Rikyu favored. "That may seem a compliment to me," replied Enshu, "but in fact it is only an ignorant view. Rikyu decided that certain vessels were interesting and beautiful and satisfying on his own initiative and authority, and used them for Cha-no-yu and gave names to them, and his judgment was not only accepted in his day but is still praised as a criterion. This is because of Rikyu's great merit as a Tea Master, and not because of the age or value of the vessels. Articles that are so transformed by virtue of the Master's praise are famous and precious indeed. But as for me, I don't possess the capacity of giving a real value to anything on the authority of my own taste. When noblemen bring things to me and ask for an opinion I don't care to offend them and so am inclined to say what they like to hear. But this kind of consideration of people's feelings is not in accordance with the best traditions of Tea. There is a difference of Heaven and Earth between Rikyu's lofty principles and mine." 

ある風雅な席で、茶の湯界きっての理論家として知られる橘宗玄殿が興味深い見解を示したという。「遠州公の美を見抜く眼力は、あるいは利休居士のそれをも凌駕するのではないか。なぜならば、遠州公が『良し』とされた器物は万人の賞賛を得るが、利休居士の趣味となりては、時に意見の分かれるところとなるからである」と。 これに対し遠州公は微笑みを浮かべつつ、こう応じたとされる。 「一見、拙者への褒め言葉に聞こえますが、これぞ茶の道を知らぬ者の浅はかな見立てにございます。利休居士は、ただ己の慧眼と胆力をもって、『この器は趣があり、美しく、味わい深い』と断じ、茶席に取り入れ、その名を高からしめたのです。その審美眼は当代においても認められ、今日に至るまで規範として仰がれておる。これは単に器の古さや値ではなく、茶道の巨匠としての利休居士の偉大な功徳の証しでございましょう。 このように、一つの品が茶人の一言によって価値を一変するほどであれば、それこそ真の名品、宝物と申すべきでしょう。しかし拙者に関して申せば、ただ私の好みという権威のみで物の真価を定めるような力など持ち合わせてはおりません。貴き方々が器物を携えて拙者の意見を求められるとき、その心を傷つけまいと考え、ついつい耳に心地よいことを申してしまう。しかしながら、このような人の気持ちに配慮する振る舞いは、茶の湯の本質からは遠く離れたものでございます。利休居士の清廉な理念と拙者の態度との間には、雲泥の差があるのでございます。」

pp 87-88 Sadler, A. L., & Martin, L. C. (2019). The Japanese Tea Ceremony: Cha-no-Yu and the Zen Art of Mindfulness (Illustrated edition). Tuttle Publishing.

茶の本

岡倉天心が1906年にアメリカで出版した本。もともとは英語で書かれており、The Book of Teaと呼ばれていました。茶道を通じて日本人の精神文化や生活観を解説しています。

今週のおさらいクイズの申請先

「おさらいクイズ」の申請先は以下の通りとなります。

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