2007年10月 Archives

香港にあるSanrio Digital社の取締役になった。この会社は,サンリオの「ハローキティ」に関連するさまざまなオンライン事業を展開している,サンリオとTyphoon Games社が合弁で設立した。Typhoon Games社を経営しているのは,親友のYat Siu氏だ。彼らのブログサイトにもプレスリリースが載っている。

これからは,joi (at) hellokitty.comでも僕と連絡が取れるよ。 ;-)

追加情報: Sanriotownに,Sanrio Digitalが提供するさまざまなサービスが紹介されている。ハローキティのメールアドレスもそこで無償登録できるようになっている。

まだ開発途上ではあるけれど,とてもよくできているといえるだろう。僕はPhotoPhlowをとても楽しんでいる。まだ試作版だった頃のFlickrを思い起こさせてくれる。

#joiito PhotoPhlow channelを設定して,僕がいるときに参加して欲しい。いまのところ,彼らのサイトで登録さえすればインビテーションを送ってくれるようだ。

インビテーションしてくれたiMorpheusに乾杯。

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地図上に表示されているのは
現在働ける登録者の位置

先週、「おてつだいネットワークス」を運営しているロケーションバリュー社の砂川大氏と会った。「おてつだいネットワークス」というのはかなりクールで、「日本にうってつけ」のサービスなんだ。

高齢者人口が増えていることと、若者の多くのがフルタイムの仕事に拘束されて時間に追われたくないと考える傾向にあることで、企業の人材確保がますます困難になってきている。仕事がないからじゃなくて、店舗で働く人材を確保できないという理由で本当に倒産する企業もあるほど、人材確保が難しくなっているらしい。

前もって計画せずにその場で何をするかを決める傾向がますます強まっている日本の若者の行動様式について,僕の妹が論文を書いたことがある。子供たちは、携帯電話で常に連絡を取り合いながら、お互いに会う約束をしたり何をするかを決めるんだ。そんな風に群れて行動する子供たちがいまや大人になり、彼らの多くは拘束されたくないと思っている。

こういった「子供たち」は成長しない。おてつだいネットワークスの最近の調査によれば、調査対象となったほとんどの人が、アルバイトの条件として給料よりも自由とか柔軟性を重視しているらしい。

おてつだいネットワークスの説明に移ろう。
おてつだいネットワークスでは、もし自分が働きたいと思っているならば、自分のスキルや希望する仕事を書いておてつだいネットワークスに会員登録し、それから、携帯電話のGPS位置情報を読み取ってもらった後に電話を切ればいい。
逆にもし誰か働いてくれる人を探す場合、例えば、レジを3時間受け持ってくれる人や、皿洗いを3時間やってくれる人などを探す場合は、おてつだいネットワークスに依頼を出すだけでいい。すると数分のうちに、働いてくれる候補者のリストが送られてくる。このリストには、それぞれどんなスキルを持っているのか、その人の仕事に対してどんな評価が下されているのか、また、自分のいる場所からその人のいる場所までの正確な距離がリストアップされている。たいてい、依頼を出してから数分で、5~6人もしくはそれ以上の候補者リストが送られてくる。

おてつだいネットワークスの仕事では、依頼者に対する評価もできるので、例えば、君が友達と一緒にいるときに、角のコンビニから仕事の依頼があったとすると、君の友達がその依頼主個人をどう評価したかが分かるんだ。また、依頼主に要求を出すこともできて、例えば、時給1500円じゃなくて時給2000円なら仕事するよ、と言うこともできるんだ。

このシステムがどんどん使われるようになれば、労働力の需要と供給の間に存在する重大なギャップが埋められるようになると思う。またこれは、ロケーションベースで、ピアツーピアの評判をベースとした、現代のモバイルな行動様式に目を向けた製品で、高齢化社会にもぴったりの試みだと思う。

おてつだいネットワークスのウェブサイトはotetsu.jpだ。ほとんどの機能は電話でのみ利用可能となっている。

Philippと利他主義に関して話し合った。彼がiCommons.orgのサイトに投稿した,一連の記事でのやりとりに続くものだ。最後はとりとめがなくなって,彼に話す時間を十分あげられなかったけれど,とても楽しかった。サイトにある他の記事もチェックして,利他主義に関する僕の理論についてどう思うか教えてくれるとうれしい。;-)


philipp (South Africa) on iCommons.org
The role of altruism in the digital commons

Listen to Joi Ito and Philipp Schmidt discuss altruism, the economic man, the difference between happiness and pleasure, carriers of compassion, and that being a happy sharer yourself, is the best way to get others to share as well.

The conversation starts off with an overview of Marcel Mauss' The Gift, and the Dalai Lama's The Art of Happiness, which address the issue of sharing from very different directions. The Gift provides a historical framework for sharing that is non-financial, and sets out a clear process of sharing that runs counter to our economies' urge to commoditise. The Dalai Lama develops a theory of happiness that is grounded on compassion, and the ability of human people to learn happiness. Why is it that we learn Maths and Sciences in school, but don't seem interested in learning and teaching how to be happy?

Joi then sets out a profoundly optimistic model for collaborative citizenry that will help us identify, and ultimately address, global challenges like climate change. He makes a convincing argument that happiness comes from things like community and a well functioning family, where more is not necessarily better, and that the best way to bring others into this movement is to let them participate in our functional communities of sharing, and to be happy.

Note: The book mentioned by Joi is Scott Page's The Difference: How the Power of Diversity Creates Better Groups, Firms, Schools, and Societies.

Kara Swisherは、僕が知る中で、最も頭が切れて、最も愉快で、そして時には最も辛辣なジャーナリストの一人だ。彼女は、Walt Mossbergと一緒に「Wall Street Journal All Things Digital conference」の司会をしている。

その彼女はいろいろあって、Jerry Yangとのインタビューの約束を取り付けるのに苦労している。そんなとき、彼女は「Jerry Yangと一緒にランチ」という賞が、最も多くのブログ読者に寄付を促したブロガーに対してDonorsChoose.org Bloggers Challengeから与えられることを知ったようだ。この企画に参加したい人や寄付をしたい人は、DonorsChooseサイトにあるAllThingsDのページを見て欲しい。

というのはですね......、僕はただKaraのファンであるだけでなく、彼女にクールな人達を紹介してもらったり、家に泊まらせてもらったり...等々の借りもあるんだ。「これを宣伝してもらわないとね・・・大きな目標のためにね。面白そうでしょ」という彼女の僕への言葉はたぶん、ブログに載せてねという意味だろうと思う ;-)

幸運を祈るよ、Kara。かわいそうなJerry!

だけど、その目的は素晴らしい。本当に。僕は今すぐ寄付する。

今回のこと、一部始終を知りたければ、正直なところ内容を理解するのは少し難しそうな気もするけど、Karaのブログ記事を読んでね。

Märt Saarepera
システムのアーキテクチャを説明するMart

エストニアの首都タリンへの旅から戻ってきた。暗号化されたタイムスタンプを使って電子文書やログの認証を行うシステムGuardTimeに投資するための事務手続きが目的だった。

このシステムのアイデアは、Mart Saareperaとエストニアの彼の仲間によって、Martが日本にいるときに考えられた。はじめ学生だったMartは、卒業して研究員をやっていたんだけど、その後、僕の会社Neotenyに籍を置き、起業家になった。僕らがまだビジネスをインキュベートしていたときの話しだ。そのときは、僕らのチームはMartのそのビジネスは時期尚早と考え、彼らへの投資を見送ったんだ。そこでMartは、友達や家族からの支援や、僕個人のわずかな支援を受けて、彼自身でビジネスを立ち上げた。

それから数年がたって、市場がようやくMartのアイデアや彼の製品に追いついた。また彼のアイデアも、どちらかといえば理論的なアイデアだったものが、実際に形にしてリリースできるところまで発展していた。

それでMartは、今回、Skypeを立ち上げた技術者によって設立・運営されている投資会社、Ambient Sound Investments(ASI)などの投資家達から資金を集めたんだ

エストニアの証券取引法の規定により、僕がエストニアで口座を開くには僕自身がエストニアに行く必要がある。エストニアの銀行システムは、インターネットが生まれた後にゼロから作られたものなので,本当に進んでいるよ。エストニアのオンラインバンキングではハードウエアのパスワードジェネレータが使われていて、僕が今まで見てきたのよりもっとたくさんのサービスをインターネットで提供しているんだ。それに、日本の銀行のように負の遺産がないから、エストニアの銀行はとても収益が高くて無駄がない。

タリンはとてもいい都市だ。タリンはエストニアの首都で、人口は約40万人。ちょっと小さくて、中核となるITグローバルブランドがNokiaじゃなくてSkypeであることを除けば、いろんな点でヘルシンキを思い起こさせる。

僕が滞在した古い街は、昔からの建物が保存された美しい所だ。また、かつてソ連の領土だった場所に共通してるんだけど、旧ロシア政府の建物があっちこっちに散在している。そんな古い街並みに、僕が愛してやまない北欧のクールな超ミニマリズム様式で建造されたとても洒落たレストランや商店、ホテルが組み込まれている。僕は、Three Sistersというホテルに泊まったんだけど、僕が最近泊まった小さなホテルの中で一番良かったよ。

タリンでもうひとつクールなのは、無線LANがどこでも使い放題であること。ホテル、駅、オフィス、空港のすべてに、無料の無線LANアクセスポイントがあった。インターネットは、フランクフルト空港やシェラトンフランクフルトホテルより高速だった。それどころか、東京の僕のオフィスを除けばだけど、最近行ったどの場所より速かったよ。

それがエストニアの文化なのかMartのコミュニティー特有のものなのかはわからないけど、GuardTimeやSkypeで会った人たちは皆幸せで賢そうに見えた。そこには、強い文化の匂いと、いい仕事が行われている空気があった。僕は最近、「純粋」な感じの味わいを渇望している。

今回の旅で撮った写真をFlickrにアップしておいた。

Lawrence Lessigがデンマークのテレビ番組で,最近取り組み始めた政治腐敗の防止活動について語った。僕らの身の回りで起こっている深刻な問題の根源に,なぜ政治腐敗があるのかについて説明している。

Folding Fixie

Bike Fridayから、fixieの折り畳み自転車が届いた。フレームはPocket Rocket Proをベースにしているんだけど、普通のギアじゃなくてシンプルな固定ギア(fixie)になっている。fixieにはいろんな種類がある。ブレーキがついているものもあるし、後輪を外すための切り替えギアがついているうえに後輪をフリップできるように反対側もギアがついている(ギアが2つある)ものもある。

折り畳み自転車の構造上、後輪をフレームにマウントするドロップアウトの部分が普通のfixieとちょっと違うけど、基本的には普通のfixieと同じだ。僕は、ツワモノになろうと思ってブレーキ無し(その場合は足でブレーキをかける)のを買おうと思ったんだけど、Bike FridayのセールスマンのStephenが、せめて前ブレーキだけはつけてくれと言ってきた・・・必要なければいつでも外せるから、だって。

ちょっとその辺を乗り回しただけで、これを買って良かったと思った。僕はまだ、急な下り坂で足を使ってコントロールするのは無理みたいだ。

最近、fixieがますます人気になってきている。ちょっとカルトなイメージがあるようだけど、これまでよりは「普通の」人が乗るようになってきていると思うし、有名ブランドでさえfixieを売り出し始めている。僕がこいつを買ったのは、ペダルをこぐことで、速いテンポでいろんなウェイトをつけてトレーニングしたことになると思ったから。それに部品が少ない分壊れにくく、長持ちするっていうのもある。Wikipediaに、固定ギアの自転車に関するとってもいい解説があるよ。

この自転車、折り畳めるわけだから、これを持って電車に乗ったり、車に積んだりできるんだ。それに簡単に分解できるから、飛行機の機内持ち込み用スーツケースに収納することもできる。

Bike Fridayで自転車を買ったのはこれで2度目だ。ここの品は手作りで質が高い。それにこれまでのところサービスやサポートもいい。旅行で持ち運べるハイクオリティーな自転車が欲しい人みんなにBike Fridayの自転車をおすすめするよ。

僕にfixieを勧めてくれたSeanと、僕にBike Fridayを勧めてくれたMarkoffに感謝したい。

追加:折り畳むとこんな感じになる
Folded Bike Friday Pocket Rocket Pro Fixie

Shibuya Center gai
渋谷センター街

僕は、高校時代を日本で過ごした。その当時は渋谷に住んでいて、調布にあるアメリカンスクールに通っていたんだ。

僕は渋谷で育った。その当時は80年代初め、渋谷は東京のホットスポットだった。Van JacketやDomon、Junといったブランドや、「渋谷カジュアル」、いわゆる「渋カジ」は、多くの人の注目を集めていた。渋谷にはバーやクラブ、レストランや洋服店がいっぱいあって、ただストリートをぶらぶらするだけの場所がたくさんあった。

10代の頃、僕は自販機で酒を買ったり、ネズミを追いかけたり、ゲームセンターやクラブに行ったりして、長いこと「ストリート」で過ごした。当時、未成年かどうかはまったくどうでもよくて、ディスコには中学生くらいの子供がたくさんいた。アメリカンスクールの9年生のとき、僕は初めてナイトクラブへ行った。その頃はサントリー・ホワイトのボトルを自販機で買えたんだ。

夏の間、僕はファッションビルに出入りしていた。たまにお店の手伝いをして、仕事が終わると、いつもファッションデザイナーや店員や美容師と一緒に店を出た。そのとき、まさに日本のバブルの最中で、何もかもが終わりのない宴会のように見え、消費ブランドや過剰消費にあふれている感じだった。

その後、最初の大学を中退した僕はまた渋谷に戻ってきて、渋谷センター街の外れでアフターアワーのクラブを経営していた。僕はそこで、ハイパーデリック・ビデオや僕の「仲間」に出会ったんだ。そのときに出会った多くの仲間とは今でも一緒に仕事をしている。また、当時タワーレコードを経営していたKeithともそこで出会った。Keithの店には僕のクラブのチラシをよく貼らせてもらった。たぶん、彼にとって僕は、威勢のいいガキんちょみたいなものだったんじゃないかな。

僕の家族が最初に渋谷に引っ越してきたとき、僕たちは母の雇い主が家賃を出してくれた高級な家に住んでいた。でもその後、ラブホテルを改造したみすぼらしい二間のアパートに引っ越さなくちゃならなくなった。僕がコーネリアスの小山田圭吾と一番多く過ごしたのはそのときだった。彼は母親と一緒に、僕と同じアパートに住んでいた。

朝の7時に渋谷を歩いていると、徹夜して馬鹿騒ぎしていた東京時代の10代の頃の記憶がよみがえる。何枚か写真を撮って、Flickrにアップロードしておいた

Joi with Timothy Leary terminus
Timothy Learyの遺灰で作った端末と僕

かつてTimothyが言ったように、「それに値する者は誰もがTimothy Learyに触れることができる(everyone out there gets the Timothy Leary they deserve)」.WAV ファイル

僕は今日、etoyのエージェントであるetoy.Monoromとetoy.Silvanに、Mission Eternityプロジェクトについてインタビューした。そこで僕は、このプロジェクトのテストパイロットの一人だったTimothy Learyとチャネリングをした。このプロジェクトの一環としてTimothyの遺灰で作った端末というのがあって、この端末は、石棺のインスタレーションに接続されている。この端末は、エンジェルと呼ばれるボランティアのネットワーク活動を、オンラインで追跡したり管理したりするんだ。エンジェルというのは、Timothyのアイデンティティーを表現するデータの維持を行う人たちのことだ。多くの点で、このプロジェクトはまだ成長段階なんだけど、僕は僕なりにこのプロジェクトに貢献している。

僕は以前、僕らのうちの何人かはTimからチャネリングしてほしいと呼びかけられた経験があることをetoyに話したことがある。Timが忙しいときか、彼が何かほかの事をしなければならないときには、僕が彼の代わりに彼への質問に答えたり考えを伝えたりしてくれないかとTimに頼まれたことがあるんだ。そのとき僕は、彼と一緒に「新人類(New Breed)」という本を書いていて、よくその本の話をアイデアを話していたものだよ。馬鹿げた質問に答えなくちゃならないときは、たいていの場合、「自分で考えろ!」って答えたよ。僕は以前、こういった類のインタビューを、ちょくちょく隣の部屋に来るTimとチャットルームでやっていた。だから僕には、Timが何を言うのかを想像することはそんなに難しいことじゃないんだ。彼が逝ってしまって10年経つけど、僕は、Timがいたら今の情勢をどう考えるだろうかと深く考えないではいられないし、彼の役割を果たすように努力しなきゃならないと思っている。

インタビューはとても面白かった。

このインタビューの準備をしているとき、僕に関するWikipediaの記事に寄せられたあるコメントについて考えてみた。そのコメントには、「ItoはTimothy Learyのゴッド・サン(God Son)」だとか「ItoはTimothy Learyのいわゆるゴッド・サンの一人だと言われている」だとか書いてあった。最終的には、善意のある誰かが修正コメントを書いてくれていた。かと思うと、Timothyに関する記事から僕の名前が消されていたりもした。僕は、僕とTimothyの関係を、重要だとも面白いものだとも思わず、もしかすると不快に思っている人たちがいることに気が付いた。僕はこのことに食ってかかろうとは全然思わない。けど、僕がブログで書いた記事から重要な名前が抜け落ちてしまっているように思えて、ちょっと悲しい。

このことについてもう少し考えたとき、僕はTimの引用を思い出した。僕はTimが、人々の心を強く動かし、彼らを特別な気持ちにさせたことを覚えている。僕は、彼によって直接的に、あるいは彼の作品を通じて心を動かされた「すべての」人たちは、それぞれ自分のTimを持っているのだと思う。僕には彼らのTimを奪う権利はない。だけど、Timの存在というものを、僕たちが心のうちに持っているすべてのTimの集合体と考え、何らかの形で皆が集まって、僕たちの記憶を通して彼をよみがえらせることが理解できたら素晴らしいと思う。僕は、これこそetoyがMisson Eternityを通して実現したいことであり、また僕をハッピーにしていることなんだと思う。

今僕が驚いているのは、ますますたくさんの情報がオンラインで手に入れられるようになり、僕たちが自分の記憶について互いに話し合えるようになっていることなんだ。Timは、その影がうすれるどころか、僕たちの活動を通して、ますます生き生きしてきている。もし彼が今、ひとつの存在になって戻ってきたら、たぶん彼は今以上に大きな存在になると思う。僕は、断片的なことや過去の細かなことで口論するのはやめて、みんなで一緒に行動してTimの精神をよみがえらせることができたらいいなと考えている。

追加:Timothyが僕のことを彼の「godson」と呼んでいるビデオをChrisが見つけてくれた。ありがとう,Chris!