2007年9月 Archives

Federated Mediaが、Wikiaと組んでHPのキャンペーンをやっている。
WikiaでPCについて語ってもらい、新しい「HP Blackbird」をプロモーションしようというものだ。Blackbirdは、ゲーマーなどハイエンドユーザー向けに設計された水冷式のハイエンドPCで、ユーザーによるカスタマイズが簡単に行えるようになっている。HPは、Blackbird Wikiaのサイトで、PCのニーズやBlackbirdについて語ってもらおうと考えているみたいだ。僕もプロモーション用ビデオに出演したので、ここにアップしておく。まあ、この動画が実際に役に立つかどうかは別として、いいアイデアだとは思う。僕はWikiaに投資しているにも関わらず、このビデオ出演に対する報酬はもらっていないので、僕の出演によってHPは明らかに得している。

そういえばHPは、Wikiaサイトでのこのプロモーションに参加した人たちに抽選で、Blackbirdをプレゼントしているよ。

テキサス州でのVirginとCreative Commonsに対する訴訟について、Larryがこんな記事を書いた。


Lessig
On the Texas suit against Virgin and Creative Commons

Slashdot has an entry about a lawsuit filed this week by parents of a Texas minor whose photograph was used by Virgin Australia in an advertising campaign. The photograph was taken by an adult. He posted it to Flickr under a CC-Attribution license. The parents of the minor are complaining that Virgin violated their daughter's right to privacy (by using a photograph of her for commercial purposes without her or her parents permission). The photographer is also a plaintiff. He is complaining that Creative Commons failed "to adequately educate and warn him ... of the meaning of commercial use and the ramifications and effects of entering into a license allowing such use." (Count V of the complaint).

全文については こちらから読んでほしい。


この訴訟は、著作権などの権利関係の複雑さを象徴すると共に、僕らも含めた一般の人々が著作権の本当の意味を理解する必要があることを示す非常に良い例といえる。Slashdotに関するLarryの記述内容はおおむね事実で正しい。しかし、Creative Commonsは簡単に言ってしまえば著作権に関する活動であって、プライバシーを始めとした著作権と関係のない問題についての活動ではない。ある著作物がCreative Commonsに基づいてライセンスされているからといって,その著作物を使って何でもできるということにはならない。世界中の様々な司法権の下、様々な法律が存在するけど、ある写真を使って何ができるかは、自分がいる国や地域が定める所有権やモラル権、プライバシーその他に関する法律によって制限される。自分が関わっている件にどんな権利が適用されるかを理解するのは、作品を再利用したり再構成したりする自分自身の責任だ。特に、商業利用の場合は様々な制限を受けることになるだろうけど、写真家が撮影した写真については、CCライセンスは写真家が一般に持っている権利にしか関係しない。

僕が、iCommonsのPhoto-Commonsノードに所属する小さな写真家のグループと一緒にやってきた活動のひとつに、Creative Commonsライセンスと一体化したモデルリリース(肖像権使用許諾書)などに関する議論があって、これはまさに今回のような問題に対処するためのものなんだ。特に重要なのは、写真のモデルやその人たちを撮影する写真家、そして撮影された写真を使う人たちが、自分たちはどんな権利を所有したいのか、そしてどんな権利を許可したいのかといったことについて、決定し、意思疎通をはかるための明確な手段が持てるようにする道筋をつけることなんだ。Creative Commonsはこのプロセスのひとつの重要な部分を担っているんだけど、こういったことを全てうまくやるためには、CCだけじゃなくて、それ以上の活動が間違いなく必要なんだ。

数日前の話し。New York Timesが僕にコンタクトしてきて、安倍総理に関する寄稿をしないかと言ってきた。僕はちょっと考えたけど、賢明な友人が、その依頼を引き受けるように勧めてくれた。そこで僕は「In Japan, Stagnation Wins Again 」(日本経済またもや停滞)という原稿を書いた。その記事は、9月18日付けのNew York Timesに掲載された。

寄稿の機会を考えてくれたNew York TimesのToby、僕に記事を書く決心をさせてくれたJun、日本の社会背景をきちんと反映しているか確認してくれたToshi、そして、最終チェックをしてくれたGenとMimiに感謝。

それから、CC(Creative Commons)に関して朗報。New York Timesとの新しい契約では、記事の共同所有権が与えられることになり、記事が掲載されてから30日経った後には、CCのライセンスのもとで、僕とNew York Timesが記事を共同で所有できることになったんだ。

UPDATE: 僕が寄稿で取り上げた「そんなの関係ねえ」というコントが、英語の字幕つきでYouTubeに投稿されていた。画質はちょっと悪い。面白いことに、「そんなの関係ねえ」に対する字幕が「So Fuckin' What?」となっていた。核心は突いている訳だと思うけど、「そんなの関係ねえ」のどの部分が「fuckin'」を意味するのかは分からない ;-P

UPDATE 2: 小さな子供が「そんなの関係ねえ」ってやっている動画へのリンクこっちはスペイン(だと思う)の男性がやっているもの。それからこれは、スポーツのマスコットキャラクターがテレビでやっていたもの。


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The New York Times
Times to End Charges on Web Site

The New York Times will stop charging for access to parts of its Web site, effective at midnight Tuesday night, reflecting a growing view in the industry that subscription fees cannot outweigh the potential ad revenue from increased traffic on a free site.

/バンザイ

Tom Coates
Tom Coates

Fiona and danah
Fiona and danah

1年の間で最も好きなイベントの1つ「 the Microsoft Social Computing Symposium」に来ている。会場の様子はストリーミング中継されている。VLCプレーヤーでMMSとして再生できる。

IRCのバックチャネル「irc.freenode.net/#scs2007」も用意した。

いつも通り 「#joiito」も使っている。

会場で撮った写真はFlickrに上げておくよ

Jun Murai
開幕の挨拶をする村井純氏

日本時間の正午にいよいよ始まった, Mozillaが主催し世界規模で行われる24時間イベント Mozilla 24に注目して欲しい。

親しい友人の間で、主に携帯電話を使って撮った写真を共有することに特化した便利なサービス「Radar」に、新しい共有機能が追加された。少人数のグループでプライベートな記録を共有することを目的にしたこれまでのサービスに加えて、みんなに見られても構わない写真の共有もRadarでできるようになったんだ。それを簡単に行うためのウィジェットなども用意している。

僕はこのRadarに投資した。なぜかというと、小規模なグループ内で互いに写真を共有することと、このブログのように「公開」することは別ものと考えていて、しかも前者の市場はまだまだ需要が満たされていないと思っているからなんだ。とはいえ僕は、撮った写真をグループ内で見せ合うだけでなく,不特定多数で共有したいと思う瞬間はあると本当に思っている。だから今回の流れはRadarにとってはいいことだと思っている。

おそらく今回の機能拡張によって、僕はますますRadarを使いたくなると思う。というのは、僕は普通の人より・・・ゴホゴホ(咳)・・・少しだけ「オープン」な性格だから。詳しくはRadarのブログを見てほしい。

菜食によるダイエットを始めてから8ヶ月経った。始めた時に比べればとても健康になったと感じるけど、当時より、アルコール類やパン、パスタ、米、塩をキッチンのワゴンからこっそり持ち出すことが多くなった。瞑想や運動をあまりしなくなったこともあって、いったん減った体重のうち25%が元に戻ってしまった。ダイエットを始めた頃の幸福感もなくなった。そんなわけで、今日から6週間の「Eat to Live(生きるための食事)」デトックス計画をやり直そうと思う。

基本的には今までやってきた菜食ダイエットと同じだけど、食塩や精製した穀類,アルコール類、オイル類を摂らないというものだ。それでは,あっち側で会おう ;-)

Gerfried Stocker
Gerfried Stocker

気温が7℃で雨続きだったことを除けば、今年のArs Electronicaはとても楽しかった。今週は、5つの会議と10件のメディアインタビューがあって大変だったけど、SandraとElizabeth、それにFumiのおかげですべてうまくいき、どうにか切り抜けることができた。残念ながら、全部のインスタレーションを見て回る時間も、話をしたかったいろんなアーティストとそうする時間もなかったけれど、十分すぎるほど面白い話ができたので、今回はとても良かった。

今年は、MOGAというユニット(稲蔭教授の研究室、FumiがメインのJoi's lab、中野裕之氏のPeacedelicチームのコラボユニット)と一緒にArs Electronicaへ行った。 MOGAは、Linzに『Jump』というインスタレーションを立ち上げていた。 また、稲蔭研の勝本雄一朗氏が雨刀(あまがたな)を紹介していた。 Ars Electronicaのコンテクストでは、今まで一緒にやってきた学生達と会えて楽しかった。

ほとんどの会議の内容がオンラインのどこかで公開されることになるんだろうと思うけど、それがどこかなのかよく知らない。;-) 以前、あるビデオインタビューをArtivi.comで見たことがあるけどね。

Ars Electronicaの今年のテーマはプライバシーだ。

僕が最初に参加したセッションは、Austrian Associationとその審査員、それにArs Electronicaコミュニティーのメンバーによるセッションだった。 そこで僕は、まずジェネレーションギャップについてざっくりと話をし、それから、インターネットの新規ユーザ間で、その技術のもたらす影響や技術の使われ方がいかに違うか、また、新しいメディアを若い世代がどのように利用するかを年配の世代が理解することがいかに難しく、しかしまたいかに重要かについて話した。僕は、何人かの審査員との対談で、彼らがとても前向きであることに非常に感銘を受けた。僕はまた、将来の地球規模での民主化にはGlobal Voiceが重要であることも話した。僕は、政治家たちよりも連邦判事たちのほうが、民主主義やプライバシーの犠牲といったことについて、もっと長期的な視点で考えられるんじゃないかと思っている。 アメリカの10th Circuit Courtによる最近の判決が示すように、すぐれた判事がいることは素晴らしいことだ。

Summer Watson
Summer Watson

次に参加したセッションは、将来のトレンドに関する、企業の役員達とのディスカッションだ。興味深いプレゼンがたくさん行われた良いセッションだった。僕が一番面白いと思ったのは、イギリスのソプラノオペラ歌手、Summer Watsonによるプレゼンだった。彼女は、北極点へのlast degree(北緯89度から90度まで)をスキーで滑り、環境問題への行動を呼びかける目的で、北極点でアリアを歌うと宣言した。

僕はこの後、彼女と一緒にコーヒーを飲み、Creative CommonsやオンラインIDについてたくさん話をした。そして、僕は Summer WatsonのWikipedia記事を書こうと思い立った。

僕はまた、WoW(World of Warcraft)のセッションも行った。これについては詳しく説明するまでもないよね。

Volker Grassmuck
Volker Grassmuck

それから、Leonard Dobuschとセッションを行い、Free NetworkやFree Knowledgeの重要性について話をした。 重ねて言うけど、僕は、このブログを読んでいる皆さんが、僕のポジションがどういうものであったか想像できると確信している。LeonardはLinz市長の息子でもあるんだけど、彼は、公共アクセスのサポートに関して市政が果たすべき役割について面白い考えを持っている。彼は最近、ある本を共同編集で出版したんだけど、その本では、公共アクセスに関する様々な議論が行われているんだ。彼はVolker Grassmuckの論文を引用したのだけど、Volkerはその論文の中で、コンテンツを提供する公共スペースをWeb上に設けることが重要であると主張しているんだ。

最後に僕は、パネリストとして授賞式とFair Musicの発足会に参加した。 Fair Musicの背景となったアイデアは、音楽にもFair Trade markに相当する何かを作ろうというものだったんだ。Fair Trade markが、Fair Tradeの要求基準を満たしている製品を特定しようとするものであるのに対し、Fair Music markは、アーティストや消費者を公正に扱っている企業やプロジェクトに与えられたものなんだ。ここで言う「公正」とは、報酬を公正に配分してもらっているアーティストのことや、音楽ビジネスの「Northern dominance」への偏向に抵抗して多様性を促進するプロジェクトなど、いろいろなことを意味している。

Fair Musicに関して、僕は、新しいビジネスモデルの必要性や、Creative Commonsの果たす役割を中心に話をしてきた。

Ars Electronicaで僕が撮影した写真をFlickrにアップしておく。

Dopplrは、シードラウンドを終了すると発表した。このラウンドには僕も参加している。

Dopplrは旅行者向けのソーシャルネットワークだ。Dopplrを使うと、ほかのアプリケーションを使っている知り合いと旅行のスケジュールを合わせられる。僕の知る限り、「僕らは次にいつ同じ街にいるのか」という一点に絞って、そのことにこれほど的確に答えてくれるアプリケーションは他にない。Dopplrのいいところは、その答えがとても的確だということだ。僕のように、世界各地を旅行中にいつも友達に会う人には完璧なアプリケーションといえる。よくない点を言えば、自分自身が旅行をしなかったり、旅行する友達がいなかったりする人にとってはそれほど便利ではないということ。

もうひとつ、Dopplrの素晴らしい点は、その設立と出資、開発が、僕の親友たちによってなされていることだ。

どのカメラを持っていくかまだ決めていないけれども、Ars Electronicaフェスティバルに参加するため、あと数時間でオーストリアのLinzに向けて出発する。フェスティバルのウェブサイトで僕を紹介しているページを見たら、僕がArs Electronica Festivalに参加するようになってから今年で10年目だそうだ。Linzへはたいてい年に2回行くが、そのうち1回はコンテストの審査のためで、もう1回がこのフェスティバルのためだ。ヨーロッパの中でLinzの訪問回数が一番多いのはそのせいだと思う。

僕は、Ars Electronicaとそこに参加する全ての人たちがとても好きだ。去年はフェスティバルに行けなかったが、また参加できるようになってとても嬉しい。Ars Electronicaでは、講演をいくつか行い、また様々なパネルディスカッションに参加する予定だ(そのうちのいくつかは、講演者のページからリンクされている)。それ以外の時間は、カメラを片手に施設や講演を見て回っていることだろう。

では、フェスティバル会場で会いましょう!

 日ごろは「Joi Ito's Web」をお読み下さいまして,ありがとうございます。日本の皆様にJoiのメッセージを伝えることを目的に続けてきました日本語サイトを,今月から大幅に強化します。世界各地を飛び回るJoiが次々に英語でアップするブログを,余すことなく日本語に翻訳し翌日までに掲載することを目指します。なお翻訳した文章は,Joiが取締役を務めるデジタルガレージが監修します。今後もよりいっそうのご愛読をよろしくお願い致します。

<お知らせ>

デジタルガレージは,2007年9月25日~26日に東京・恵比寿で開かれる次世代のWebビジネスのあり方を探るカンファレンス「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2007」を協賛しています。Wikipedia創設者のJimmy Wales氏や,BitTorrent社の共同創業者で社長のAshwin Navin氏といったインターネット業界で話題を集めるキーパーソンが講演するほか,コンテンツ分野からは坂本龍一氏がビデオ出演しWebとクリエイターの未来について語るなど,盛りだくさんの内容を予定しています。下のバナーをクリックし,お早めにご登録ください。半数近くの講演の司会進行は,Joiが行います。こちらもお見逃しなく。

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